世界的に動画配信サービスの競争が激化する中、市場シェア争いが最も激しい国といわれているのがインドである。国民の半数を25歳以下が占め、年間2000本の映画が製作されるという国柄に加えて、同国の動画配信サービス市場が近年、独自のマーケティング手法によって進化を遂げ、力強い成長を示していることがその理由だ。そんな環境の中、米アマゾン・ドット・コムのPrime Video(プライム・ビデオ)は、インドでの市場シェアトップに上り詰め、アマゾンが社運をかけた大型ドラマシリーズ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」の成功にも寄与した。インドでプライム・ビデオ事業を統括するゴラフ・ガンジー氏がインドでの成長戦略を明かした。
インドの動画配信市場は、各社がシェア争いを続ける中、目覚ましい成長をみせている。メディアパートナーズ・アジア(MPA)の最新調査ではインドの動画配信市場の2022年の総収益は約4141億円(30億ドル)。日本が1兆3000億円を見込まれているのと比べるとまだ小さいが、5年後の27年には現在の2倍以上に伸び、日本円で1兆円近くの規模に拡大することが予想されている。
現在、インドのSVOD(定額制動画配信)市場は、ディズニーがStarと組んだHotstarとプライム・ビデオ、Netflixの3プラットフォーム合計で市場シェアの半分以上を占める。独占配信作品を多数そろえたHotstarとNetflixが優位に立っていたように見えたが、ここにきてプライム・ビデオが攻勢をかけ、三つどもえの争いとなってきた。
この躍進の立役者であり、アマゾンインドのプライム・ビデオ部門バイス・プレジデントを務めるゴラフ・ガンジー氏は「インド市場に参入した16年からこの5年、順調な展開を見せている」と、自信をのぞかせる。
22年はアマゾンが推定製作費640億円をかけた目玉シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」をインドでも成功させ、その自信をより確かなものにした。同作の公開に合わせ、アマゾンインドは、全世界配信直前に本国・米国で行われた同作のワールド・プレミア・スクリーニングを上回る数の役者陣をインド・ムンバイに呼び寄せ、大規模なアジア・プレミア・スクリーニングを開催している。このことは、ガンジー氏がアマゾンのプライム・ビデオ事業全体におけるキーパーソンとも言える人物であることを物語ってもいる。
この記事は会員限定(無料)です。