2022年11月14日から、東京都心部(東京23区、武蔵野市、三鷹市)のタクシー運賃が15年ぶりに改定された。このタイミングで、タクシー配車アプリ運営会社の対応が分かれた。2022年11月に1000万ダウンロードを達成したタクシー配車アプリ「GO」を運営するMobility Technologies(MoT、東京・港)だけが、それまで迎車料金に含まれていたアプリ手配料を「外付け」で100円と設定したのだ。その背景と狙いを探った。
2022年11月14日の運賃改定により、東京都心部のタクシーは、初乗り運賃(普通車上限料金)が420円(1052メートルまで)から500円(1096メートルまで)へ、加算運賃が80円(233メートルごと)から100円(255メートルごと)へ、迎車料金が上限420円から上限500円へ、それぞれ値上げを実施した。
同時にタクシー配車アプリの料金表示に変化が生じた。ユーザーが配車アプリを使って、今すぐ乗るためにタクシーを呼んだ場合、値上げ前までは、運賃の他に、各タクシー運営会社が定めた迎車料金を支払うだけでよかった。今回の値上げに伴い、タクシー配車アプリ運営会社の中でMoT1社だけが、迎車料金とは別にアプリ手配料を明示するように変えたのだ。
アプリ「GO」を運営するMoTだけが手配料100円を明示
実は値上げ前までは、どのタクシー配車アプリも、タクシー運営会社がそれぞれ定める迎車料金の中にアプリ手配料が含まれていた。
値上げ前の迎車料金は、例えば約7000台のタクシーを抱える、東京都心部のタクシー運営会社最大手の日本交通(東京・千代田)の場合、上限値の420円。約4400台のタクシーを抱える大手、国際自動車(東京・港)の場合も420円。約3530台のタクシーが所属する都内大手の1つ、東京無線グループの場合は320円といった具合だった。
タクシー運営会社は、アプリを使った配車が成立するたび、1件ごとにあらかじめ定めておいた定率または定額の手数料を、ユーザーから受け取る迎車料金の中から配車アプリ運営会社に支払っていたのだ。言い換えれば、ユーザーから見た場合、配車アプリの手配料がいくらかは見えない構造になっていた。
今回の値上げに際して、日本交通や東京無線グループなど配車アプリ「GO」を利用するタクシー運営会社の多くは、MoTからの要望を受け入れ、迎車料金を300円に抑え込み、それとは別にアプリ手配料100円をユーザーから徴収する方式に切り替えた。値上げ前の迎車料金が420円だったタクシー運営会社の場合、値上げ後の迎車料金+アプリ手配料は400円で済むので、ユーザーから見たら迎車料金に関しては20円の値下げになる。
これに対して、S.RIDE(エスライド、東京・港)が運営するタクシー配車アプリ「S.RIDE」を利用する国際自動車や大和自動車交通(東京・江東)など、GOを利用しないタクシー運営会社の多くは、これまでと同じくアプリ手配料込みで迎車料金を500円(大和自動車交通の武蔵野市、三鷹市以西の北多摩エリアについては300円)に設定した。以前の迎車料金が420円だったタクシー運営会社の場合、ユーザーから見たら迎車料金は80円の値上げになるわけだ。
ただし、GOを利用するタクシー運営会社と異なる形で、アプリ手配にかかる費用を“見える化”したタクシー運営会社もある。S.RIDEを利用し、タクシー約1400台を抱える大手の1つ、グリーンキャブ(東京・新宿)がそれだ。配車アプリを利用した際の迎車料金は500円、配車アプリ以外の申し込みによる迎車料金は300円と設定した。アプリ手配料という形で明示こそしないが、ユーザーから見た場合、アプリ手配料は200円に見える。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー