LGエレクトロニクス・ジャパンは2022年12月1日、フレキシブルな有機ELパネルを採用し、画面を平面から曲率900R(半径900ミリの円を描く曲線)の曲面まで20段階で曲げられる42型テレビ「LG OLED Flex」(以下、OLED FLEX)を発表した。曲率を変えることで、画面に近い位置からでも、やや離れた位置からでも見やすくなる。23年1月18日発売で、想定売価は44万円前後(税込み)。
曲がる画面でフレキシブルに視聴
OLED Flexの特徴は、リモコン操作で画面を平面から曲率900R(半径900ミリの円を描く曲線)の曲面まで、5%刻みの20段階で調整できることだ。画面からの距離に応じて曲率を調整することで、画面中央と画面両端とで画面までの距離差が小さくなる。例えば画面中央から900ミリの位置で視聴するとき、曲率900Rにすると、視聴者から見て画面中央までと画面両端までの距離が等しくなる。これにより目のピント調整が減って疲れにくくなったり、コンテンツへの没入感が高まったりするなどの効果がある。
家族など複数人で見るときは、画面を平面にしてやや離れた位置から視聴する、1人でゲームや映画を楽しむときは、画面を曲面にして近づいて視聴するといった使い方を想定している。パソコン用ディスプレーのように画面の高さや前後に傾けるチルト角度の調整もでき、画面に対して自由な角度や距離から視聴しやすくなっている。曲率変更はリモコンで行う。特定の曲率を3つ設定しておき、ワンタッチで変更することもできる。
実際に曲率を操作して、ゲーム、映画、ライブなどのコンテンツを視聴してみた。曲率の変更は思った以上に素早くできる。リモコンのボタンを押すと1秒も待たずに動き始め、平面から900Rまで7~8秒で変化する。動作音はやや気になるが、テレビやゲームの音声にかき消される程度だ。電源をオフにすると画面は平面になり、電源を入れるとオフにする前の曲率に自動的に戻る。
まず画面を平面にした状態で視聴して、それから曲率を大きくして画面に近づいて視聴してみた。平面の状態では普通のテレビと大差なく感じたが、曲率を大きくして近づいて視聴すると、全く別のテレビのように迫力が増した。画面のどこを見ても映像までの距離が変わらず、音も立体的に聞こえてくるため、平面の状態より没入感は明らかに高くなる。映画やライブコンテンツ、ゲームなどを楽しむのに向いたテレビだ。
画面の裏側には、画面を曲げるためのアームが付いている。スタンドは固定されていて取り外せないため、VESA規格のマウントを使って壁掛けテレビにすることはできない。スタンドには、4K120Hz対応のHDMI入力×4などの拡張端子を備える。
ゲーム用機能が充実
PCや家庭用ゲーム機を接続して、ゲーム用ディスプレーとして使うための機能が充実していることも特徴だ。例えば、ゲームによっては瞬時の判断を行うために画面全体を見渡せる状態でプレーしたいことがある。42型では表示が大きすぎてそれが難しくなるため、ゲームの映像を27型や32型のサイズに縮小して表示することができる。
マルチビュー機能により2画面同時使用もできる。例えば、ゲームの画面と動画配信サイトのゲーム攻略動画を同時に表示して、攻略情報を見ながらプレーすることができる。マイクを内蔵しているので、ヘッドセットを使わずに、プレーしながらボイスチャットができる。スタンドの背面にはLEDライトがあり、ゲーム用ディスプレーのように音や映像に合わせて光らせたり、気分に合わせて特定の色で光らせたりできる。
趣味に出費を惜しまない人向き
OLED FLEXは曲率を変更できる機能により、リビングに置いて家族で視聴するテレビとしても、目の前に置いて家庭用ゲーム機やPC用のモニターとしても利用しやすい。ゲーム用のディスプレーとして豊富な機能を備えていることも魅力だ。42型はテレビとしてもゲーム用としても使いやすいようにバランスを取ったサイズで、発売後の反応を見て、他のサイズでの展開も検討していくという。
想定売価は44万円前後(税込み)で、42型有機ELテレビとしてはかなり高額な製品だ。例えば、22年5月に発売されたLGエレクトロニクス・ジャパンの42型有機ELテレビ「OLED42C2PJA」は実勢価格23万円前後で、その2倍近い価格になる。
LGエレクトロニクス・ジャパンによると、主なターゲットはゲームやライブ映像を高い没入感で楽しみたい人や、趣味への出費を惜しまない人たちだという。普通のテレビとしての機能に加えて、高い臨場感で映画やライブコンテンツを楽しんだり、豊富な機能でゲームを楽しんだりできることが魅力であり、そうした1台2役や1台3役的な使い方のアピールが売れ行きを左右しそうだ。
(写真提供/LGエレクトロニクス・ジャパン、写真/湯浅英夫)