2016年4月に地下海水を利用した海藻の陸上養殖モデルを確立し、全国各地で「海藻ファーム」を展開するシーベジタブル(高知県安芸市)は22年11月、海藻の新たな活用法を提案する食品ブランド「Re-seaweed(リ・シーウィード)」を発表した。第1弾商品として、アオノリを用いた発酵食品「青のり醤油」の予約販売を自社ECサイトで今春をめどにスタートする予定だ。

シーベジタブルが立ち上げた「Re-seaweed(リ・シーウィード)」ブランド
シーベジタブルが立ち上げた「Re-seaweed(リ・シーウィード)」ブランド
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 「青のり醤油」(販売予定価格は200ミリリットルで税込み2250円)は、生アオノリと米こうじ、塩、水を使って発酵させ、絞ったものだ。シーベジタブル共同代表の友廣裕一氏は「大豆フリーでグルテンフリーなので一般のしょうゆとは違うが、しょうゆに近い調味料だ」と語る。

生アオノリと米こうじ、塩、水を発酵させて作った「青のり醤油」
生アオノリと米こうじ、塩、水を発酵させて作った「青のり醤油」
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 青のり醤油の開発に携わったのが、2021年11月にシーベジタブルがオープンした「SEA VEGETABLE Test Kitchen」で海藻料理や調味料の開発を担当する石坂秀威氏だ。石坂氏は「世界のベストレストラン50」で世界第1位に4回選ばれたデンマーク・コペンハーゲンの有名レストラン「noma(ノーマ)」の姉妹店的な存在として18年に東京・飯田橋でオープンした「INUA(イヌア)」のスーシェフとして料理開発を担当していた経歴を持つ。

 「INUAでは発酵器を使って調味料も自分たちで全部作っていた。料理を提供するフロアとは別に料理を開発するキッチンもあり、そこではシェフが今まで食材になっていなかったようなものを煮たり焼いたり発酵させたりして、料理を提供するフロアのシェフに共有していた。そこの料理開発を担当していたのが石坂。一緒にやっていくうえで、これ以上のパートナーはいないと思う」(友廣氏)

SEA VEGETABLE Test Kitchenで海藻料理や調味料の開発を手がける石坂秀威氏
SEA VEGETABLE Test Kitchenで海藻料理や調味料の開発を手がける石坂秀威氏
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 石坂氏は、青のり醤油の魅力について「しょうゆよりコクが少なくて軽めの味わいなので、合わせる素材の味が生かされる。青のり醤油自体もほんのり甘いので、例えば甘エビの甘みをより感じやすくなる。まずは今までしょうゆを使ってきた料理で、代わりに青のり醤油を使ってみるところから提案したい」と語る。試食したところ、磯のような鮮烈な香りは好みが分かれそうには感じたものの、さっぱりした風味でおいしく味わえた。

 
牛たたきにもアオノリの風味を持つ軽めの味わいがぴったりと合った
牛たたきにもアオノリの風味を持つ軽めの味わいがぴったりと合った
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 また、友廣氏は「青のり醤油には軽やかな磯の香りがあって、しょうゆほどのコクはないものの、いろいろな料理に使ってもらえると思う。今後は、第2弾として『青のり味噌』、第3弾として『青のり柚子胡椒』の販売を予定している」と話す。

 青のり味噌は、青大豆とアオノリ、米こうじ、塩が原料となる。「生アオノリから作っただしで大豆の火入れをして、火入れ完成時にこしたアオノリをまた絞って刻んで味噌のもとになるものに練り込む。そこに米こうじと乾燥アオノリを合わせて作っている」(石坂氏)。こちらは味噌のコクとアオノリの香りが合わさり、青のり醤油より幅広く受け入れられる味わいではないかと感じられた。

 また、青のり柚子胡椒は青のり醤油のかすを合わせたユズコショウを熟成したものだ。「青のり醤油を作る段階でうまみが凝縮されているが、それを寝かせると爽やかな普通のユズコショウよりも深みがある味わいになる」と石坂氏は話す。

青大豆とアオノリ、米こうじ、塩で作った青のり味噌
青大豆とアオノリ、米こうじ、塩で作った青のり味噌
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青のり柚子胡椒(写真下側)を熊本地鶏「天草大王」に合わせた料理
青のり柚子胡椒(写真下側)を熊本地鶏「天草大王」に合わせた料理
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きっかけは、日本沿岸の海藻や海藻食文化への危機感

 シーベジタブルがRe-seaweedブランドを立ち上げた背景には、ワカメや昆布、ノリなどを食べる海藻食文化と、しょうゆや味噌をはじめとする発酵食文化をつなげ、さらに海藻食文化を深く広く普及させていく狙いがあるという。

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