空気清浄機などを手掛けるカルテック(大阪市)は2022年12月6日、世界初という光触媒を搭載した加湿器「Yuragi 潤水(ゆらぎ じゅんすい) プルミエール KL-H01(超音波式)」(以下、Yuragi)を発表した。内蔵カートリッジで水道水を弱酸性の軟水にし、光触媒による菌の抑制効果でその水を長時間清潔に保つのが特徴。加湿器としても、顔にミストを当てることで美容機器としても利用できる。22年12月20日発売で、想定売価は16万5000円前後(税込み)。
光触媒とは、光が当たると酸化チタンの化学反応で悪臭成分や細菌を分解するもののこと。カルテックは光触媒技術を使った空気清浄機や、食品を長持ちさせる除菌脱臭機などを製造・販売している。
加湿器は大きく分けて、超音波式、スチーム式、気化式の3種類がある。超音波式は水中の菌がそのまま放出されるので、こまめな手入れと洗浄が必要だ。スチーム式は加熱するため水を清潔に保ちやすいが、水道水の残留塩素などが水あかになりやすいため、定期的な手入れや洗浄が必要になる。気化式はフィルターに菌が付着するため、やはり定期的に手入れや洗浄が必要だ。
Yuragiの特徴のひとつは、こうした手入れや洗浄の手間を減らしたことだ。水道水を入れると専用カートリッジを通るときに残留塩素やミネラルなどが取り除かれるので、水あかが発生しにくくなる。カートリッジを通った水は、本体の水トレイ内部で光触媒により常に殺菌されているため、清潔な状態を長時間保てる。専用カートリッジはイオン交換樹脂を使ってカルテックが独自に開発したもの。交換式で製品に2個付属する。1シーズンに1回程度の交換が必要だという。
カルテックの染井潤一社長は、Yuragiの特徴について「水道水から塩素やミネラルを除去して品質の高い水を作り、それを長時間キープできる。光触媒の働きで、水は数カ月たっても傷むことがない。加湿器内部にぬめりなどの汚れが発生しにくいので、手入れも楽にできる」と語る。
ミストを噴霧するアタッチメントにも工夫をして、きめ細かな粒子が出るようにした。「アタッチメント内部の形状を工夫して、大きな粒子は落とし、細かい粒子だけが通って噴霧されるようにした。ミストが煙のようになり、なかなか落ちてこないため、これまでの超音波式加湿器のように周囲がぬれることがない」(染井社長)という。
弱酸性の軟水で世界を目指す
専用カートリッジを通った水は、人の肌と髪にいいという水素イオン濃度指数(pH)4.5~6.5の弱酸性の軟水になる。本体に取り付けるアタッチメントを交換してミストを顔に直接噴霧することにより、肌の水分量を保つ美容効果が期待できるという。カルテックではこの特徴を生かして、部屋を加湿する加湿器と個人の美容を行う美容機器を兼ねた“美容加湿器”としての販売を目指している。
染井社長は「開発当初は光触媒を使った加湿器と美容機器を別々に開発していたが、どちらも専用カートリッジを通す水の作り方は同じ。それならば加湿器としては高額なので、まず美容機器としての機能を前面に押し出して発売する方がいいのではないかと考えた」と語る。
国内ではカルテックのオンラインショップほか、高級エステや美容サロン、美容整形外科向けのベンダーを通して販売する。美容サロンの現場で使ってもらったり、従業員に交流サイト(SNS)などで拡散してもらったりすることで認知を高めていきたい考えだ。
海外でも展開する。「日本人などアジアの女性がしているスキンケアの大切さに欧米も注目するようになってきた」(染井社長)とのことで、2023年1月には米ラスベガスで開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)に出展し、まず米国市場、つぎに欧州市場を目指す。カルテックによると、欧米では水道水がアルカリ性だったり硬水だったりする地域が多く、弱酸性で軟水のミストを発生させる美容機器や加湿器の需要が期待できるという。中国などアジア地域でも美容の意識が高まっており、メード・イン・ジャパンの美容機器として、ワールドワイドで年間1万台の販売を目標としている。
製品を実際に試してみた。加湿器として使う場合は、スマートバーと呼ぶ透明な筒状の水タンクを取り付け、その先端からミストを噴霧する。美容機器として使う場合は、スマートバーの替わりに美容向けアタッチメントを取り付ける。スマートバーを取り付けると装置全体は65センチメートル以上になり、かなり存在感がある。加湿器としての適用面積は木造和室で5畳(約8平方メートル)で広い部屋向きではないが、23年には約4倍の能力を持つ製品の発売を検討している。
内部には、光触媒の反応に必要な発光ダイオード(LED)の青い光が見える。その中で超音波を発生する装置により水がゆらいでインテリアのようだ。特に、暗い部屋で使うと落ち着いた雰囲気が感じられる。「青い光がゆらぐことで、リラックスした空間を演出するようなデザインにした」(染井社長)という。内部に汚れがたまったりカビが発生したりしやすいこれまでの加湿器では、Yuragiのように内部を見せる作りにしづらいだろう。光がまぶしい場合は付属カバーをかけて隠すこともできる。

面白いのは、ミストが非常に細かいこと。一般的な加湿器では、ミストに手をかざすと手がすぐ湿ってきてやがて水滴ができる。Yuragiのミストはきめ細かく、触ってもさらりとしていて、なかなか水滴にならない。これなら、加湿器の周囲が水でぬれてしまうようなこともなさそうだ。アタッチメントを美容用のものに付け替えて顔にしばらく噴霧してみると、顔がほんのり湿り気を帯びて、噴霧を止めてもその状態がしばらく続く感覚が気持ちよい。
加湿器としては高額だが、個人用の美容機器としても使える1台2役の製品であることをアピールできれば、購入のハードルの高さは下げられそうだ。
(写真/湯浅英夫)