ハンバーガーチェーンのモスバーガーを展開するモスフードサービスは2022年11月29日、同社初のチーズバーガー専門店「mosh Grab'n Go(モッシュグラブアンドゴー、以下mosh)」をオープンした。一等地の狭小物件に対応可能な新業態で、3種類のチーズバーガーを中心にメニューを絞り、キャッシュレスのセルフレジを採用した。20~30代女性が主なターゲットで、都市部を中心に5年間で100店舗の出店を目指す。

入り口は中の様子が見えるガラス張りで、立ち寄りやすくしている
入り口は中の様子が見えるガラス張りで、立ち寄りやすくしている

 新業態立ち上げの背景には、新型コロナウイルスの感染拡大によるテークアウトニーズや衛生意識の高まり、働き手の減少などがある。モスバーガーは郊外や二等地出店に適した業態で、全国的に同一の価格にしているため、家賃の高い都心部などの一等地に出店しづらい状況だった。そこで同社が新業態の要素としたのが「スモール」「シンプル」「スペシャリティー」の3つだ。

 「スモール」は一等地でも家賃を抑えられる狭小物件のことだ。オープンした店舗は都心部の東京都港区南麻布で、最寄り駅は東京メトロ日比谷線の広尾駅。店舗は、レジとキッチンがある1階が約60平方メートル、イベントスペースとイートインスペースを兼ねた地下が約58平方メートルでかなり細長い造りになっている。1階にある、商品の出来上がりを待つための座席スペースも4席と少ない。

セルフレジで注文し、オープンキッチンのカウンターで商品を受けとる。調理している様子を間近に見て安心感が得られるように、オープンキッチンになっている。店内の装飾は少なく、シンプルだ
セルフレジで注文し、オープンキッチンのカウンターで商品を受けとる。調理している様子を間近に見て安心感が得られるように、オープンキッチンになっている。店内の装飾は少なく、シンプルだ

 「シンプル」は、少人数での店舗運営や内装をシンプルにすることなどで費用を抑えることだ。メニューは3種類のチーズバーガー、2種類のスムージー、2種類のサイドメニューがメインで、モスバーガーに比べてかなり絞られている。またキッチンの人員のみで、セルフレジの採用により接客を担当する人員はいない。こうした工夫により、4~5人で運営可能だという。内装は木目を生かしたナチュラルなもので、シンプルだが安っぽさはなく、落ち着いた雰囲気だ。

地下のイートインスペースは、イベントスペースとして貸し切り可能。プロジェクターが設置されている
地下のイートインスペースは、イベントスペースとして貸し切り可能。プロジェクターが設置されている

 「スペシャリティー」は、事業を特化してメニュー数を抑えることにより店舗オペレーションを複雑化しないことだ。前述のように、ハンバーガーは3種類のチーズバーガーのみ。いずれもバンズ、パティ、チーズだけでできていて野菜は入っていない。野菜を入れないことで調理後の経時変化が小さくなり、テークアウトにも向く。野菜が欲しい人には、トマトや小松菜、ケールなど10種類の野菜と果物からその場で作る「グリーンスムージー」(税込み550円、以下同)を提供する。

 サイドメニューもポテト(250円)とピクルス(200円)のみ。ポテトは揚げるのではなく、オーブンで焼いている。油を使わないヘルシーさが売りになるほか、経時変化が抑えられるためよりテークアウト向きになる。フライヤーを使わないことで、油の処理や清掃にかかる手間も減らせる。

 オーダーはセルフレジか、LINEミニアプリなどを使ったモバイルオーダーで行う。非接触オーダーにすることで衛生意識の高まりに対応している。22年12月中旬頃より、UberEatsなどを使った宅配にも対応する予定だ。店頭でセルフレジを試してみたところ、メニューを絞っているため選択画面がシンプルで選びやすいのも、メリットに感じた。

食べ応えあり 冷めてもおいしいチーズバーガー

 3種類あるチーズバーガーはいずれもバンズ、2枚のパティ、チーズを組み合わせたもので、「#Burger01 <2種のチーズ>」が600円、3種類のチーズを使った「#Burger02 <ふわとろチーズ>」 が800円、4種類のチーズを使った「#Burger03 <クワトロチーズ>」が900円だ。モスバーガーのチーズバーガーより価格は高いが、高級ハンバーガーと呼ばれる店より安い。3種類のハンバーガーには、パティを1枚にしたバージョンもある。

チーズが異なる3種類のチーズバーガーがメイン商品
チーズが異なる3種類のチーズバーガーがメイン商品
ハンバーガーとポテトのセットメニューもある。ホットコーヒーやウーロン茶などのドリンク、クラフトビールも提供する
ハンバーガーとポテトのセットメニューもある。ホットコーヒーやウーロン茶などのドリンク、クラフトビールも提供する

 #Burger02 <ふわとろチーズ>、グリーンスムージー、ポテト、ピクルスを食べてみた。ハンバーガーは大きすぎず小さすぎず、食べやすさと食べ応えのバランスがいいサイズだ。バンズにははちみつが入っていて、ほんのり甘く、食感はしっとりとしている。はちみつを入れることで保水性が上がり、テークアウト向きになるそうだ。

グリーンスムージー、ピクルス、#Burger02、ポテトを試食した
グリーンスムージー、ピクルス、#Burger02、ポテトを試食した

 #Burger02 <ふわとろチーズ>は薄めのパティを2枚重ね、その上に3種類のチーズで作った分厚いオリジナルチーズが載せてある。パティは柔らかく、かむほどに肉のうまみがしみ出てくる。2枚重ねにしたのは、1枚の厚いパティより食感がよくなるからだという。チーズは商品名の通り“ふわとろ”だ。やや冷めた状態で食べたが冷えて固くなった感じはなく、柔らかくておいしく食べられた。

 グリーンスムージーは野菜の苦みと甘さがあり、青臭すぎず飲みやすい。ポテトも冷めた状態で食べたが、ほくほくとした食感とほんのり塩を利かせた味でおいしかった。冷めたフライドポテトのような油っこさもない。ピクルスはあまり酸っぱくなく、ぱりぱりとした歯ごたえのある食感で食べやすかった。

野菜と果物で作るグリーンスムージーのほか、チーズケーキをモチーフにしたデザートのような「チーズケーキスムージー」(600円)もある
野菜と果物で作るグリーンスムージーのほか、チーズケーキをモチーフにしたデザートのような「チーズケーキスムージー」(600円)もある

 モスフードサービスでは、全国の都市部に5年間で100店舗の出店を目指すとしている。新型コロナ禍によるテークアウトニーズや衛生意識の高まり、働き手の減少などに対応するとともに、コストを抑えつつモスバーガーより高級感を打ち出していく。

 主なターゲットは20~30代の女性。チーズバーガー専門としたのは、女性にはハンバーガーの中でもチーズバーガーが人気だからだ。店舗がある南麻布は若者が目立つ街だが、moshの開店準備を進めているときに、地元の高齢者からの問い合わせが思いのほか多くあったという。20~30代女性に限らず、こうした層の話題を集めることも人気獲得につながりそうだ。

(写真提供/モスフードサービス、写真/湯浅英夫)

12
この記事をいいね!する