スキルシェアサービス「ココナラ」を運営するココナラは2022年11月16日、ITフリーランス向けに業務委託案件を紹介する「ココナラエージェント」を新規事業として立ち上げることを発表した。ココナラを筆頭にした既存サービスに追加する形で、スキルの売買においてカバーできる領域を拡大する。それによって、これまで利用のなかった中堅や大手企業とのタッチポイントを新たに得ようとしている。
後発でもIT人材紹介サービスに参入した3つの理由
「後発だという自覚はある」。ココナラの鈴木歩社長がそう切り出した上で、新規事業として発表したのが、「ココナラエージェント」だ。ITフリーランスに向けて業務委託案件を紹介するサービス。22年11月16日からフリーランスの事前登録を受け付けている。23年1月から事業を開始するとして、人材と案件のマッチングを始める。
利用者は、ココナラへの登録が前提のためココナラに追加する形で、自身のスキルや希望条件をココナラエージェントに登録する。それを踏まえて、ココナラの社員が務めるココナラエージェントの担当者が面談を行う。登録者に合った案件があれば提案し、実際に登録者からの応募があれば業務委託人材を求める企業側に登録者のレジュメを提示する。両者の意思確認ができた段階で、ココナラエージェントを含めた三者面談を行い、その場でスキルや条件など合意が取れればマッチングが成立する。
特徴的なのは、フリーランス人材をIT分野に絞っている点だ。登録を受け付けるフリーランスは、ITエンジニア、デザイナー、マーケターなどの6職種。「フリーランスの需要が高い職種」と鈴木社長は説明する。
レバテックやクラウドワークスなど、IT人材紹介サービスは多々ある。その中で、ココナラが新規事業として参入したのには3つの理由がある。まず1つ目が、IT人材の不足から業務委託市場での成長を見込める点だ。
経済産業省の調査では、IT需要が高いということを示す「高位シナリオ」で、日本企業のIT人材は79万人が不足するという試算が出ている。正社員としてIT人材を確保することは難しくなる中で、業務委託によってIT人材を活用していくのが一般的になっていく。「IT人材の需要が高まっているので、後発でも成長していけるのではないか」と鈴木社長は期待を寄せる。
2つ目が、既存サービスでは対応できていなかったスキル売買の領域をカバーするためだ。ココナラは現在、主力サービスとするココナラ、ビジネス利用に特化した「ココナラビジネス」、弁護士に相談できる「ココナラ法律相談」などを展開している。
同社はこれらのサービスにおける様々な領域やマッチング手法の広がり、周辺領域を「ココナラ経済圏」として掲げる。具体的には、ウェブサイトなどの制作、ビジネスに関するちょっとした相談、英会話といった学びなど依頼の「カテゴリー」と、単発型やプロジェクト型といった「マッチング」の方法の2軸から見たときにカバーできるスキルの領域を指す。
そのココナラ経済圏の拡大に、ココナラエージェントを役立てたい考えだ。先行するサービス、ココナラにも、エンジニアやデザイナーなど今回IT人材と定義した登録者はもちろんいる。その数は登録者40万人のうち10万人ほど。21年8月にはココナラビジネスを開始し、ビジネス領域への注力はすでにしている。
ただ、ココナラはサービス単発での依頼をするため、長期にわたって業務を委託することが難しかった。ビジネスに特化したココナラビジネスも、あくまでココナラと同じ仕組みのため、同様の課題があった。
そこで新たに立ち上げたのが、ココナラエージェントだ。そこではプロジェクト単位といった長期間にわたる業務委託を可能としている。さらに、匿名登録が可能でオンライン完結を前提としていたココナラに対して、ココナラエージェントは実名制で、リモート稼働やオフィスに常駐といった働き方も可能にした。実名制にしたことで社内規則に厳しい企業からの依頼も受けられるようにし、オンライン以外の働き方も可能にしたことで、企業としても柔軟に依頼することができるというわけだ。
「社内ルールが厳しかったり、個別の事情が多かったりする中堅企業や大手企業でも使いやすいというメリットがあるのではないか。これまでココナラを利用できていなかった企業との新たなタッチポイントを得るという点で、ココナラエージェントが果たす役割は大きい」(鈴木社長)
3つ目の理由として挙げるのが、ココナラで積み上げてきたスキルシェアでのリソースを生かせることによるメリットだ。先述のように、ココナラには40万人の登録者がいる。そのフリーランス人材を企業の業務委託案件と結びつけることで、「垂直立ち上げができる」(鈴木社長)。すでにココナラで活躍しているフリーランスが、企業の案件でも力を発揮できるよう期待をかける。
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