任天堂によるイベント「Nintendo Live 2022」。3年ぶりの開催とあって、多くの子供連れが集まった。既存タイトルのみの出展だが、目を配れば今後の任天堂を占うヒントも見えてくる。そこで感じたのは好調のNintendo Switchがすでに“終活”に入ったということだった。

任天堂が1年に1度開催するイベント「Nintendo Live」。2022年は3年ぶりに来場者を入れての開催となった
任天堂が1年に1度開催するイベント「Nintendo Live」。2022年は3年ぶりに来場者を入れての開催となった

 任天堂は2022年10月8~9日、東京ビッグサイトで「Nintendo Live 2022」を開催した。これは同社が1年に1度開催する、任天堂のゲーム音楽ライブ、ステージイベント、ゲーム大会などからなるイベントだ。19年以来、新型コロナウイルス禍の影響で中止していたが、22年は3年ぶりの開催となった。

 会場内は、子供たちの笑顔でいっぱいだった。新型コロナ対策として抽選による完全招待制となったものの、多くの来場者が参加。幼い“キッズ”たちの中には、これが人生初の「みんなでゲームを遊ぶイベント」だった子も多く、誰もが目を輝かせてゲームに夢中になっていた。

来場者の大半はファミリー層。2022年9月の東京ゲームショウ2022は13歳未満が入場できなかったため、筆者が子供たちがゲームを楽しむ姿をゲーム関連イベントで見られたのは3年ぶり
来場者の大半はファミリー層。2022年9月の東京ゲームショウ2022は13歳未満が入場できなかったため、筆者が子供たちがゲームを楽しむ姿をゲーム関連イベントで見られたのは3年ぶり

 腕自慢の子供たちは、予選から戦う『マリオカート8 デラックス』『大乱闘スマッシュブラザーズ』『スプラトゥーン3』『Nintendo Switch Sports』などのゲーム大会に参加。親子部門、小学生部門なども用意されていた。

 来場者が自由にゲームを楽しめる体験コーナーも充実していた。親子で汗だくになりながらプレーできる『Nintendo Switch Sports』のコーナーもあれば、小さな子供がスタッフのサポートの下で「ゼルダの伝説」や「マリオ」「スプラトゥーン」「どうぶつの森」といった任天堂の人気タイトルを体験できるエリアなどもあり、あらゆる年齢、実力の子供たちがゲームに触れられるように配慮されていた。

小さな子供たちにとって、「みんなでゲームを遊ぶ」のは初体験だったかも。夢中でゲームに没頭していた
小さな子供たちにとって、「みんなでゲームを遊ぶ」のは初体験だったかも。夢中でゲームに没頭していた
さまざまなゲームの大会も開催された。写真は『スプラトゥーン3』の大会の様子
さまざまなゲームの大会も開催された。写真は『スプラトゥーン3』の大会の様子

「ゼルダ」新作の情報を発見

 東京ビッグサイトで2日間にわたって開催されるような大型イベントであるにもかかわらず、あまりメディアで取り上げられないのは、Nintendo Live 2002が発売済みのタイトルを中心に、ユーザーを楽しませるための場に特化しているからだ。任天堂にとって、Nintendo Live 2002は新作の情報発信の場ではない。

 だからといって、よく見てみれば新たな発見もある。例えば、今回は『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のフォトスポットがそうだ。

 フォトスポットには、主人公・リンクの等身大フィギュアが初披露されていたのだが、そのフィギュアのポーズが独特だった。右手は不思議な文様に包まれ、まるで呪われているかのように意味ありげに明滅していた。これは、これまで公開された紹介動画などでは見たことがない。

 これまでの「ゼルダの伝説」シリーズの情報公開時ビジュアルイメージは、剣を持つ、弓を構えるといったアクションシーンを切り取ったものが中心だったが、今回は明らかに傾向が違う。おそらく、これはゲームの内容を推測する大きなヒントのはずだ。このように熱心なファンにだけ分かる形で、こっそりと新情報がちりばめられているのも、Nintendo Liveの面白いところである。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のフォトスポット。剣や弓を持ってるのではなく、右手を突き出した独特のポーズ。その右手は妖しく明滅していた
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のフォトスポット。剣や弓を持ってるのではなく、右手を突き出した独特のポーズ。その右手は妖しく明滅していた

ソフトの充実ぶりはSwitch“終活”の証拠?

 Nintendo Live 2022の会場をじっくりと見た感想は、ずばり「Nintendo Switchは、ついに“終活”をスタートさせたのだな」というものだった。

 Nintendo Switchの22年9月末時点の累計販売数は1億1433万台。任天堂の据え置きゲーム機として最も売れた「Wii」の1億163万台を超え、任天堂のハードウエアで最大の累計販売数を誇る「ニンテンドーDS」の1億5402万台も見えてきた。発売5年目となる21年4月~22年3月は、新型コロナ禍による半導体不足の影響を受けて前年割れとなったものの、販売台数は2306万台に達し、いまなお人気に衰えは感じられない。

 とはいえ、ゲームビジネスはテクノロジーの進化に合わせて高性能化が進み、新機能の追加、拡充が求められるもの。このため6~7年おきに次世代機へとバトンタッチするのが通例となる。17年3月発売のNintendo Switchは、23年の3月に6周年を迎えることからも、次のゲーム機にバトンタッチするタイミングは遠くないと思われる。

 そんな視点で見ると、Nintendo Live 2022は、あまりにも出展ソフトが充実しすぎていたといえる。任天堂が持つすべての人気シリーズがNintendo Switch用ソフトとなり、出尽くしたという感があった。「これからこのシリーズの新作も出るんだろうな」というような、まだ見ぬ新作への期待感は、イベント会場になかったのである。

 それは、現行ハードがそろそろ役目を終えつつあることの、なによりの証左でもある。Nintendo Switchはすでに“終活”に入り始めたといっていいだろう。

小さい子ども向けの体験コーナー。新作ではなく定番タイトルをずらりと並べ、スタッフがつきっきりでサポートしていた
小さい子ども向けの体験コーナー。新作ではなく定番タイトルをずらりと並べ、スタッフがつきっきりでサポートしていた

2023年のNintendo Liveは要チェックのイベントとなる

 ゲーム機の世代交代はプレーヤーに飽きられ始めたり、プレーヤーが新しい刺激を求め始めたりするタイミングで行われるのが定石だが、いまだ好調を持続しているNintendo Switchには、そのパターンは当てはまりそうにない。

 今後の発売スケジュールには、まだ『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(23年5月12日発売)と『ピクミン4』(23年発売)が残っている。それぞれNintendo Switchで発売された前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『ピクミン3 デラックス』の続編であり、「ついにSwitchで遊べる!」という新規性はない。それでもどちらも1000万本級ヒットが確実視されるモンスタータイトルだ。

 これらで話題を集めたら、Nintendo Switchは高い人気を維持した状態のまま、次のハードに主役の座を明け渡すのではないだろうか。その後は、次世代機への期待感が、ゆっくりと世の中に広がっていくはずだ。そして、23年秋に開催されるであろう次回のNintendo Liveは、その期待から多くのメディアが注目するイベントになるかもしれない。

(写真/野安ゆきお)

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