油脂メーカーのミヨシ油脂が展開する、プラントベースの食用油脂ブランド「botanova(ボタノバ)」。同社はマーガリンやラードなど、これまで手掛けてきた油脂の知見を生かして、「プラントベースはおいしくなさそう」というイメージを覆そうとしている。ボタノバを通じて、動物性油脂だけでない、食の選択肢を広げていきたい考えだ。

ミヨシ油脂
ミヨシ油脂が展開するプラントベースの食用油脂ブランド「botanova(ボタノバ)」

 ミヨシ油脂が開発したボタノバは、動物性原料を使わずに、植物性原料のみから作ったプラントベースフードだ。2020年9月から2種、21年12月から追加で1種の商品を発売。スーパーや外食産業などに卸す BtoB(企業向け)のみで展開している。一般消費者も味わえる場として22年9月28日から、東京・目黒にある飲食店「SHE meguro (シーメグロ)」にて、ビーガンコースメニューの提供を開始した。

 ミヨシ油脂は、22年で創業101周年を迎える老舗油脂メーカーだ。これまで主力事業の1つとして、マーガリンやラードなど食用油脂を展開してきた。同社が植物性油脂であるボタノバを開発したのには理由がある。ミヨシ油脂食品本部技術開発ID部ID課の魚住圭佑氏は次のように説明する。

 「宗教や健康、食糧問題などによって、『おいしい』を諦めている人や、同じ食卓を楽しめない人がいる。ボタノバを通じて食の選択肢を広げていくことで、そのような課題を解決していきたい」

 日本国内のプラントベースフードの市場は年々拡大しており、20年の市場規模は246億円となった(TPCマーケティングリサーチ調べ)。「大豆になじみのある食文化で受け入れられていること、低脂質かつ低カロリーであること、そして、たんぱく質摂取への関心の高まりもあり、日本国内のプラントベース市場は成長している」(魚住氏)

 しかし、プラントベースフードには課題もある。筆頭としてあげられるのが、「おいしくなさそう」というイメージだ。

 ミヨシ油脂が21年11月に行ったプラントベースフードに関する消費者調査では、「プラントベースフードを知っている」と回答した人のうち、「説明できるくらいに知っている」(4.3%)、「どのようなものかイメージできるくらいに知っている」(32%)、「聞いたことがある」(37.3%)と、7割以上がプラントベースフードを認知していることが分かった。その一方で、プラントベース食品に今後期待することは何かを尋ねたところ、「味の改良」を求める声が40.1%に及んだ。

 そこで開発したのが、ボタノバだ。「プラントベースフードにはおいしくないことへの諦めがある。それを解消するためにブランドをつくった」と魚住氏は語る。同氏は、プラントベースフードの物足りなさとしてあげられることの多い点として、「コクの足りなさ」「大豆など植物性由来による青臭さ」をあげる。ミヨシ油脂がこれまで培ってきた動物性油脂の知見をもってすれば、これらの課題を解消できると考えたわけだ。

この記事は会員限定(無料)です。

4
この記事をいいね!する