資生堂は、同社の化粧品ブランド「SHISEIDO ビオパフォーマンス」シリーズに、ヒアルロン酸研究技術を採用した美容液を投入、2022年10月1日に発売した。同商品で、資生堂の「安心・安全」というイメージに加え、高い技術力もアピールしたいという。

資生堂は、同社の化粧品ブランド「SHISEIDO ビオパフォーマンス」シリーズの新製品としてヒアルロン酸研究技術を採用した美容液を発売した
資生堂は、同社の化粧品ブランド「SHISEIDO ビオパフォーマンス」シリーズの新製品としてヒアルロン酸研究技術を採用した美容液を発売した

分子レベルでヒアルロン酸を肌に浸透させる

 「SHISEIDO ビオパフォーマンス」シリーズは、資生堂の数あるブランドの中でも、同社が持つ最先端技術を詰め込んだ化粧品ライン。今回発売した「スキンフィラー」は、同シリーズの第1弾として2021年10月1日に発売した、目元のたるみケア用美容液「セカンドスキン」(3万5200円、以下全て税込み)に次ぐ、第2弾商品となる。

 スキンフィラーは、夜用と朝用各30mlの2本セットで、価格は3万5200円。ブランド旗艦店の「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」、全国のデパートを中心とした約330店、SHISEIDOオフィシャルサイト、資生堂の総合美容サイト「ワタシプラス」で22年10月1日に発売した。

左から、夜用美容液の「SHISEIDO ビオパフォーマンス インフィル セラム 」(左)と朝用の美容液「SHISEIDO ビオパフォーマンス フルエクスパンション セラム」(画像提供:資生堂)
左から、夜用美容液の「SHISEIDO ビオパフォーマンス インフィル セラム 」と朝用の美容液「SHISEIDO ビオパフォーマンス フルエクスパンション セラム」(画像提供:資生堂)

 スキンフィラーの特徴は、ヒアルロン酸の分子の大きさを調節する「モレキュシフトテクノロジー」を採用している点だ。

 ヒアルロン酸は様々な化粧品に活用され、広く認識されている成分だが、その分子には、肌の表面にとどまりながら水分を補給し、高い保湿力を発揮する機能がある。ただ、通常のヒアルロン酸分子はサイズが大きいため、一般的な化粧品では分子を分解して小さくし、皮膚に浸透しやすくしている。しかしその方法では、ヒアルロン酸の保水量を低下させるため、ヒアルロン酸自体の効果が下がる。その課題を解決するものとして資生堂が開発したのが、「モレキュシフトテクノロジー」だ。

スキンフィラーが採用している「モレキュシフトテクノロジー」の仕組み
スキンフィラーが採用している「モレキュシフトテクノロジー」の仕組み

 同技術では、ヒアルロン酸に電荷を加えることで分子を小さくし、角層まで浸透させる。その後、専用の成分を注入することで、小さくしていたヒアルロン酸の分子を元の大きさに戻し、保水力を復活させることが可能だという。

 商品化するに当たっては、この技術を生かすため、あえて夜用と朝用の美容液のセットにした。まず、夜用美容液「SHISEIDO ビオパフォーマンス インフィル セラム 」で、小さくしたヒアルロン酸を肌のすみずみまで届ける。4~6時間後、ヒアルロン酸が角層深くに浸透したところで、朝用の美容液「SHISEIDO ビオパフォーマンス フルエクスパンション セラム」をつけることで、小さくしたヒアルロン酸を元の大きさに戻し、ハリや弾力のある肌に導くという仕組みだ。

ブランドイメージをもっと身近なものに

 価格が3万円以上と高いこともあり、メインターゲットは40代以降とのこと。ただし、資生堂ジャパン プレステージブランドマーケティング本部 グローバルブランドマーケティング部 SHISEIDOグループブランドマネージャーの松村美穂氏は「若い人も美容の意識は高く持っている。年代を絞らずに、悩みや価値観に合わせてしっかり訴求していくことを意識していきたい」と意気込みを見せる。

 そのため、「本製品はキャッチコピーにもこだわった。CMではあえて“美容液は分子の時代へ。”と掲げている。分子レベルで製品開発をしていると伝えても、一般のお客様にはあまりピンとこないかもしれないが、より感度の高いお客様にはそういったポイントになるようなワードが見えていたほうが、スマホ(をスクロールする)の手が止まる。言葉のチョイスにはものすごく時間をかけた」(松村氏)と言う。

 コミュニケーションにこだわる背景には、松村氏がブランドに対して2つの課題感を持っていることもあるという。

 1つは技術力の認知だ。「資生堂は『安心・安全』というイメージが強い。それはもちろん大事だが、技術力もあることがお客様にあまり認知されていないと感じる。今回のスキンフィラーでは、安心・安全を担保したうえで技術力があるという、イノベーティブなイメージをしっかり打ち出し、それを浸透させたい」(松村氏)

 もう1つが、資生堂という企業イメージは強くても、ブランド「SHISEIDO」としての顔が不明瞭なことだ。「SHISEIDOには、スキンフィラー以外にもニーズに合わせた複数のラインがあるが、いくつもあることによって分散しているのが課題でもある。総合ブランドであることは変えずに、『SHISEIDO』というものをお客様の中で1つのブランドとして認識してもらえるようにコミュニケーションの統一をしていきたい」と松村氏は語った。

技術革新が進む美容分野

 資生堂では、スキンフィラー発売に合わせ、美容家の神崎恵氏と日本形成外科学会認定専門医の貴子氏を招いたトークイベント「SHISEIDO ビオパフォーマンス スキンフィラー新発売記念イベント」を開催、YouTubeで公開した。

 これも、松村氏が語る課題感の表れだという。松村氏によると、貴子氏は美容医療の専門医、神崎氏は美の力を通じて女性に対して、ポジティブに生きることを発信する美容家で、それぞれの立場から美に取り組んでいる。「我々のブランドであるSHISEIDOも、今回のように先進技術をうたった商品もあるが、基本的にはその人自身が本質的に持っている美しくなる力を呼び起こすというアプローチをしている。表面から何かを施すのではなく、内側から美しく、生き生きと生きられることは、自分の自信につながってくるはず。そうありたいという姿勢や意識は、神崎さんが発信されていることと親和性がある。今回は技術だけではないことをしっかり伝えたかったため、神崎氏を通じてブランドのイメージを(お客様にも)感じていただけるのではないかと考えた」と話す。

美容家の神崎恵氏(左)と、形成外科学会認定専門医の貴子氏(右)(画像提供:資生堂)
美容家の神崎恵氏(左)と、形成外科学会認定専門医の貴子氏(右)(画像提供:資生堂)

 イベントでは、化粧品だけでなく、美容医療の最新事情や人気の施術傾向などにも話は及んだ。

 貴子氏は「美容医療市場が伸びているという実感は非常にある。最近はSNSで美容医療の情報や個人で施術を受けた人の口コミが発信されるようになり、美容医療への抵抗感やハードルが低くなったように思う」と説明。美容医療というと、今までは刺したり切ったりというイメージが強かったが、レーザー治療のようなダウンタイムが短い治療法などが増えたことで、ライフスタイルに合わせて施術方法が選びやすくなり、身近な存在となっているようだ。

 これには神崎氏も同意しつつ、「今までは、エイジングを自覚して『どうしよう!』と(美容医療に)駆け込み、それから知識や経験を増やしていく流れだった。しかし、最近はSNSなどで自分から情報を取りに行ったり、エイジングの予防として若い人も手を伸ばしたりするようになった」とコメント。加えて、「新型コロナウイルス禍を機にオンラインで人と会う機会が増えた。今までは対面で相手の顔を見ながら打ち合わせをしていたが、(オンラインでは)なぜか画面に映る自分の顔を見てしまい、思いもしなかったエイジングのサインを見つけたりする。自宅で過ごす時間が増えて自分と向き合う時間も増えた。それによって、もっとこうしたいという気持ちが増したように思う」と話した。

 施術では「ヒアルロン酸注射のほか、(レーザーでリフトアップ治療を行う)ハイフが人気」と貴子氏。「ミリ単位で調整できるようになり、ナチュラルに仕上がるようになってきている。技術の進歩を感じる」と言う。一方、神崎氏は「化粧品も枠がどんどん広がり、美容医療の効果実感に近づいていっている」と化粧品の進化も指摘した。

 発表会の後半では、神崎氏が実際にスキンフィラーを体験した。神崎氏によると、夜用美容液は透明感があってみずみずしく、すーっと肌になじんでいくという。「みずみずしさに包まれているような、本当に気持ちのよいテクスチャー。さらっとしていて心地よく、浸透が非常に早い印象」(神崎氏)。朝用は、「少しコクととろみがある。しかし塗ると肌の上でほどけていき、美容液から肌に入って来てくれるような感じで気持ちがいい」(神崎氏)

 その上で、「朝と夜で分かれているということは、それだけその時に必要なケアができるということ。その点にも期待している。美容医療は身近になったが、それでもどこかで抵抗感や距離感がある人はいる。(化粧品は)自分で選んでその効果を試せるうえに、自宅で本格的なケアができるのは素晴らしいことだと思っている」と語った。

実演で使用感を語る神崎氏。「夜用と朝用があるのでルーティーン化しやすいのでは」と神崎氏(画像提供:資生堂)
実演で使用感を語る神崎氏。「夜用と朝用があるのでルーティーン化しやすいのでは」と神崎氏(画像提供:資生堂)

 イベント後には、筆者も試してみた。夜用の美容液は透明でとろっとした手触り。肌に伸ばすと若干粘り気がある。「べたつくかな?」と思ったところで、すっと肌に浸透していくことに驚いた。「あれ? なくなっちゃった……」と思わず、声に出てしまったほど。一方の朝用は、乳白色でしっとりとしており、塗った後にべたつきはないものの、肌に吸い付く感じがあった。この美容液で、夜に浸透させたヒアルロン酸が本来の大きさになり、力を発揮してくれているのだと思うと、テンションが上がる。メカニズムを理解し、想像することでモチベーションがアップするのも、スキンケアをするうえでは重要なことだろう。

 さらに、体験1日目の洗顔では肌に泡を乗せた段階から肌の感触がこれまでと全く異なっていたことを感じられた。泡が肌を滑らかになぞり、洗い上げたときにはしっとりさらさらとした触り心地で感動。筆者はこれまで適当なスキンケア商品を試しながら使用してきたが、これからは質の良いもの、最先端の技術を活用しているものを使ってみたいと思わされた。

展示会では自由に「SHISEIDO ビオパフォーマンス スキンフィラー」のテクスチャーを体験できた(画像提供:資生堂)
展示会では自由に「SHISEIDO ビオパフォーマンス スキンフィラー」のテクスチャーを体験できた(画像提供:資生堂)
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