ネスレ日本は、「ナレーション」で、スターバックスの家庭用コーヒー商品を訴求するプロジェクトを開始した。音声で商品背景や味の特徴を伝え、ユーザーの想像力に訴えることで、家庭や職場などカフェ以外の飲用シーンを創出していく狙いだ。ナレーターは人気声優の梶裕貴と岡本信彦が務める。

ネスレ日本が人気声優を起用して音声コンテンツをローンチ。その名も「聴きスターバックス」
ネスレ日本が人気声優を起用して音声コンテンツをローンチ。その名も「聴きスターバックス」

 1996年の日本進出以来、約四半世紀で、コーヒーチェーンとして店舗数日本一までに拡大したスターバックス。2022年6月末時点では1700店舗以上と、2位のドトール(22年9月末時点で1000店舗強)を大きく引き離している。都心をはじめとするオフィス街だけでなく、各地域の公園や建造物と融和した地域密着型の店舗や、ティー特化型店舗など、コンセプトのある店舗も開発してきた。

 またスターバックスといえば、店員がカップにメッセージを書き添えてくれたり、シーズンごとの甘いフラペチーノが話題になったりと、つい足を運んでしまうような演出も多い。チェーン店でありながら、店舗を通じたブランド体験を重視している。

 店舗の存在感が強いスターバックスだが、家庭用コーヒーの商品も多種類にわたり展開している。19年9月から、店舗で人気のカフェラテやモカといったフレーバーを、豆、粉、ドリップ式のバッグと3種類のタイプで発売。図らずも20年春以降の新型コロナウイルス禍と、それに伴う巣ごもり消費の拡大で、家庭内のコーヒー需要が高まったことで、売れ行きは想定以上のようだ。

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スターバックスは2019年から、家庭用のコーヒー商品を展開している。写真は定番のフレーバー「ハウス ブレンド」で、左から順に、ドリップ式のパック、粉、豆となっている
スターバックスは2019年から、家庭用のコーヒー商品を展開している。写真は定番のフレーバー「ハウス ブレンド」で、左から順に、ドリップ式のパック、粉、豆となっている

 一方で、課題も抱える。ネスレ日本飲料事業本部スターバックスCPGビジネス部の大塚幸部長は、「家庭用の商品では、複数のフレーバーを購入するユーザーはそこまで獲得できていなかった。各フレーバーごとに『どういうシーンや気分のときに飲んでもらうか』といった飲用シーンを設定しているにもかかわらず、なかなか消費者に伝わっていない部分があった」と語る。

 たしかにスターバックスの家庭用商品を、その時々に応じて買い分ける人は少ないかもしれない。「ライトノート ブレンド」「パイクプレイス ロースト」「カフェ ベロナ」「ブレックファースト ブレンド」……。これらの商品名を羅列されても、そもそも各商品がどんな味なのかは想像しづらい。

 そこでネスレ日本は、各フレーバーの特徴や開発背景など、商品のストーリーを「音声」で訴求することにした。「聴きスターバックス」と題して、22年9月28日から6種類のフレーバーに関する音声コンテンツを、聴きスターバックス特設サイトで順次配信していく。

今回、配信される6種類のフレーバーの商品設定をまとめたもの
今回、配信される6種類のフレーバーの商品設定をまとめたもの

 「(音声にこだわったのは)例えば雨音や調理する音を聞くことで、それぞれのロケーションが想起されて、イマジネーションがかき立てられる。そうすることで、各テイストの特徴や、飲用シーンも浮かびやすくなると考えた。また現在では、オーディオブックやストリーミング配信、ポッドキャストなど、音を使ったコンテンツが非常に増えており、音が我々の生活に身近になっている」(大塚氏)

声優の梶裕貴が担当した「ハウス ブレンド」のパート。仕事をする中で気分転換をしたいときに向けて訴求。「どんな気分にもぴったりと合うのは、このコク、酸味、苦みのバランスがとれているからなんだろうなあ。創業からずーっとみんなに愛されているスターバックスの顔っていうの分かりますよね!」とナレーションが入る
声優の岡本信彦が担当した「ライトノート ブレンド」のパート。休日にゆっくりしたいときを想定している。「ライトノートブレンド自体が、柔らかな香りや味があるので、声自体も柔らかい雰囲気を出していけたら」と語った

 「フレーバーについての理解を深めてもらい、これまで定番の商品しか飲んでなかったユーザーも、2種類3種類と飲んでいただける流れをつくれたら」と大塚氏。これまで店舗中心に利用していたユーザーに、店舗外でもコーヒーを飲んでもらえたらと期待を込める。

 ナレーションの原稿では、「柔らかでココアのような風味で、お休みの日など解放感のあるときに」「シトラス感のあるいきいきとした風味で、気持ちいい朝の目覚めに」など、味の特徴と飲むシチュエーションを掛け合わせて訴求することで、様々な状況で飲用接点を生み出していく。加えて「ハウスブレンドのパッケージは、生産地であるラテンアメリカの農園をイメージしている」など、商品背景や豆知識も盛り込み、つい他人にシェアしたくなるような情報も入れている。

 聴きスターバックスで流す音声コンテンツは、声優の梶裕貴と岡本信彦が朗読。聴きスターバックスで紹介する6種類のうち、それぞれ半分ずつを担当する。梶は「進撃の巨人」のエレン・イェーガー役や、「僕のヒーローアカデミア」の轟焦凍役などで、岡本は「僕のヒーローアカデミア」の爆豪勝己役や、「ハイキュー!!」の西谷夕役などで知られる。

梶裕貴。発表会にはコーヒー色のスーツに、スタバカラーをイメージしたグリーンのシャツを合わせて登場
梶裕貴。発表会にはコーヒー色のスーツに、スタバカラーをイメージしたグリーンのシャツを合わせて登場
岡本信彦。「僕のポッケにはワンモアコーヒーのレシート(ご購入時のレシートを持参することで、当日の営業終了まで2杯目のドリップコーヒーが安くなる)がしっかりと入っていました」とスタバ好きをアピール
岡本信彦。「僕のポッケにはワンモアコーヒーのレシート(購入時のレシートを持参することで、当日の営業終了まで2杯目のドリップコーヒーが安くなる)がしっかりと入っていました」とスタバ好きをアピール

 22年9月28日に行われた記者発表会では、両者が収録時の様子を振り返りつつ、音声コンテンツならではの魅力を語った。梶は「フレーバーごとに『飲むとどういう気持ちになれるか』が、明確に用意されているので、受け手としてもすごく分かりやすい。商品のテーマも含めて楽しめる」とコメント。岡本は「ただ飲むよりも、作り手の思いを知っているだけで、だいぶ味は変化する」と語った。

音声コンテンツならではの魅力を語る2人
音声コンテンツならではの魅力を語る2人

 大塚氏は「音を媒体にしていこうとプロジェクトを進めたときに、メッセンジャーとして最適な声優のお二方に声がけさせてもらった。もちろん岡本さんと梶さんのファンの方に家庭用製品を知っていただけたらプラスになるが、最初からセレブリティーとか有名人を起用して、認知を広げていこうという戦略ではなかった」と、あくまでも音声にこだわった企画だと強調する。

 聴きスターバックスは、22年9月28日に「ハウスブレンド」「ライトノート ブレンド」「パイクプレイス ロースト」の3種類のコンテンツを公開。11月中旬に「カフェ ベロナ」「ブレックファーストブレンド」「デイカフェ ハウス ブレンド」と残りの3種類を解禁する予定だ。

(写真提供/ネスレ日本)

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