レノボ・ジャパン(東京・千代田)は2022年10月5日、16.3型の折り畳み式有機ELディスプレーを搭載した「ThinkPad X1 Fold」を発表した。広げると大型タブレットとして、折り曲げてキーボードと組み合わせるとコンパクトなノートパソコンとして利用できる。22年10月中旬以降発売で、レノボオンラインストアでの最小構成価格は54万2300円(税込み、以下同)から。

レノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Fold」。パソコン本体のほか、Bluetooth接続のキーボードと本体を立てるスタンド、ペン入力用のペンは注文時に選択できる
レノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Fold」。パソコン本体のほか、Bluetooth接続のキーボードと本体を立てるスタンド、ペン入力用のペンは注文時に選択できる

 「ThinkPad X1 Fold」のディスプレーは16.3型で、解像度は2560×2024ドットだ。比率は4対3で、縦向き・横向きどちらでも使いやすい。CPU(中央演算処理装置)は米インテルの第12世代コアi5またはi7で、メインメモリーは最大32ギガバイト、ストレージは最大1テラバイトとなっている。拡張端子はThunderbolt 4が2つと、USB 3.2 Gen2 Type-Cを備える。

 そのほか、米国国防総省の調達基準(MIL-STD-810H)準拠の堅ろう性を備え、顔認証や指紋認証機能にも対応している。重さは選択するスペックによって変わり、本体のみで約1.28キログラムから、キーボードとスタンドを装着した場合は約1.92キログラムからとなる。バッテリー駆動時間は最大14.65時間だ。

開いてスタンドに設置すると、デスクトップパソコンのように利用できる。これは横向き
開いてスタンドに設置すると、デスクトップパソコンのように利用できる。これは横向き

タブレット、ノート、デスクトップが1台に

 最大の特徴は折り畳み式の有機ELディスプレーだ。開くと完全にフラットになり、16.3型の大型タブレットになる。専用スタンドに縦向きまたは横向きに立て、手前にBluetooth接続のワイヤレスキーボードを配置すればデスクトップパソコンのように利用できる。スタンドは角度を自由に調整可能だ。

横向きだけでなく縦向きでも安定して立てられる。スタンドは角度調整が可能
横向きだけでなく縦向きでも安定して立てられる。スタンドは角度調整が可能

 さらに、折り曲げると、およそ12型のノートパソコンサイズになる。手前側にソフトウエアキーボードを表示したり、ワイヤレスキーボードを載せたりすれば、モバイルノートパソコンのような使用感に。軽く折り曲げてブックスタイルで利用することもできる。こうして場所や用途に合わせて、さまざまなスタイルで使えるのがThinkPad X1 Foldの魅力だ。

折り曲げて、手前側にソフトウエアキーボードを表示したところ。ノートパソコンのように利用できる
折り曲げて、手前側にソフトウエアキーボードを表示したところ。ノートパソコンのように利用できる
手前側に、ワイヤレスキーボードを載せたところ。12型モバイルノートになる
手前側に、ワイヤレスキーボードを載せたところ。12型モバイルノートになる

新開発のディスプレーが鍵

 ThinkPad X1 Foldは、2020年10月に13.3型有機ELディスプレーを搭載した初代モデルが発売された。新モデルの開発では、そのユーザーからのフィードバックを盛り込んでいる。ユーザーからは処理性能への不満や、ワイヤレスキーボードにポイティングデバイスのTrackPointがないこと、スタンドで縦向きに立てられないことなどについて、要望が寄せられたという。そこで第2世代となる製品開発にあたって、処理性能の強化、フルサイズキーボードとTrackPointの搭載、大画面と携帯性の両立を目指した。

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 開発で特に力を入れたのが、大型で、折り畳むとコンパクトになる、フレキシブルな有機ELディスプレーだ。初代モデル搭載のディスプレーは、折り畳むと向かい合ったディスプレーの間にすき間ができ、横から見るとU字型になった。そのすき間にワイヤレスキーボードを挟んで持ち運べる仕様だった。

 新型モデルはそうしたすき間がなく、ぴったりと閉じることができる。折り畳んだときに曲がる部分はヒンジ部分に収まっていて、外観上は完全に折り曲げたように見える。このディスプレーは、シャープディスプレイテクノロジー(SDTC、三重県亀山市)と共同開発したもので、SDTCではこれを「雫(しずく)型曲げ」と呼んでいる。ヒンジやボディーを開発するレノボ・ジャパンのチームと、技術の擦り合わせをしながら開発したという。

閉じた状態。横から見ると、ディスプレーの間にすき間がなく、完全に折り畳まれたように見える
閉じた状態。横から見ると、ディスプレーの間にすき間がなく、完全に折り畳まれたように見える
スタンドとキーボードの上に、半分に折り畳んで閉じた本体を重ねた状態。この状態でコンパクトに持ち運べる。ペンはマグネットで本体側面に取り付けられる
スタンドとキーボードの上に、半分に折り畳んで閉じた本体を重ねた状態。この状態でコンパクトに持ち運べる。ペンはマグネットで本体側面に取り付けられる

使い勝手と“ThinkPadらしさ”が向上

 専用のスタンドとワイヤレスキーボードも大きく変わっている。初代モデルは、本体裏側のカバーの一部が折り曲がってスタンドになる仕様だった。横向きに開いた状態で自立できたが、ディスプレーの角度は固定で、縦向きにすると不安定で立てられなかった。新型モデルではスタンドを分離し、縦向きでも横向きでも立てられるようになったほか、角度調整もできるようになった。

 Bluetooth接続のワイヤレスキーボードには、ThinkPadシリーズの特徴的なポインティングデバイスであるTrackPointが付いた。キーボードの中央にある赤いボタン型のデバイスで、指先で押すとその向きにマウスカーソルを動かせる。初代モデルのワイヤレスキーボードにはなかったもので、ユーザーから要望が多かったという。デザイン的に見ても、赤いTrackPointが付いたことで“ThinkPadらしさ”がぐっと増している。

スタンドとワイヤレスキーボード。キーボードのTrackPointがThinkPadらしさを醸し出している
スタンドとワイヤレスキーボード。キーボードのTrackPointがThinkPadらしさを醸し出している

 初代モデルはアーリーアダプター層やエグゼクティブ層に人気があったという。新型ThinkPad X1 Foldは大画面化して実用性が増し、さらにワイヤレスキーボードにTrackPointが付くなどThinkPadらしさも増している。レノボオンラインストアでの最小構成価格は54万2300円で、パソコンとしてはかなり高額な製品だが、従来モデルのユーザー層に加えて、ThinkPadのファンや実用的なモバイルパソコンを求める人にも人気が広がりそうだ。

ブックスタイルにすると、大画面で電子書籍を読むのによさそうだ
ブックスタイルにすると、大画面で電子書籍を読むのによさそうだ

(写真/湯浅英夫)

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