キユーピーは2022年9月28日、D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)の新サービス「Qummy(キユーミー)」を開始した。「あなたとつくる、野菜のある食卓。」をコンセプトとして、会員登録者にサラダやドレッシングをEC(電子商取引)で販売する。キユーピーがD2Cに参入した狙いは、「売って終わり」の関係ではなく、顧客と長期的な関係を築くことにある。

キューミーセット
「Qummy」は、会員登録者にサラダやドレッシングをECで販売するサービス

 「目指しているのは単なるECサイトではない。多彩なつながりを構築し、イノベーションを起こす」。キユーピー上席執行役員カスタマーサクセス担当兼コーポレート副担当の山本信一郎氏がそう意気込むのは、「Qummy」のことだ。

 キユーミーは、2022年9月28日にキユーピーが新たに始めたD2Cのサービス。キユーピーが提供する各サービスを共通のIDで利用できる「キユーピーID」の会員に向けて、サラダやドレッシングなどをECで販売する。同日から、関東1都6県(伊豆諸島・小笠原諸島除く)で販売を開始した。「あなたとつくる、野菜のある食卓。」をコンセプトに掲げ、届いた食材やドレッシングで、利用者が「ひと手間未満で」つくることができる手軽さを実現するサービスだ。

登壇者
2022年9月21日の記者発表の様子。写真左から、キユーピー上席執行役員新規市場開発担当兼カスタマーサクセス室長の藤原かおり氏、キユーピー上席執行役員カスタマーサクセス担当兼コーポレート副担当の山本信一郎氏、ヤマト運輸執行役員ナショナル法人営業部長の稲森浩司氏

 キユーピーがD2Cのサービスを始めたのには理由がある。まず1つ目に挙げられるのが、ネットショッピングの台頭だ。新型コロナウイルス禍により、消費者の間でネット通販は日常的なものになった。「顧客と直接つながる時代」と山本氏は話す。大手メーカー発のD2Cの商品も多く生まれており、顧客の好みにきめ細かく寄り添うことが求められつつある。

 2つ目に、健康志向の高まりだ。コロナ禍において、テレワークや巣ごもり生活などライフスタイルが大きく変わった。それに伴い、自身の健康に目を向けるようになった消費者も多いだろう。「人生100年時代」ともいわれる。

 だが、その一方で、日常的な食事で十分に野菜を取り入れていくことは難しい。「副菜の準備が大変という声をよく聞く。共働き世帯や子育て世帯など、忙しくてなかなか野菜が取れないという人たちにもぜひ利用してほしい」(キユーピー上席執行役員新規市場開発担当兼カスタマーサクセス室長の藤原かおり氏)。スーパーなど買い物に行く時間がなかなかとれない消費者も、ECならば手軽に商品を手に取れるというわけだ。

 キユーミーで特徴的なのは、利用者の好みや悩みに寄り添いながら商品を届けられる点にある。キユーピーは22年9月28日、キユーピーの商品サイト内に新たな会員専用サービス「Hi! kewpie(ハイ! キユーピー)」をスタートさせた。お気に入りの商品やレシピの登録、タグ付け、メモ機能などを用意している。

 これをキユーミーと連係することで、会員のお気に入りレシピや家族の好みなどの情報を蓄積し、AI(人工知能)チャットボットやレコメンドシステムを通じて商品やレシピを提案できるようにする。パーソナライズされた食提案に力を入れていく発想だ。

スマホ操作
新たな会員専用サービス「Hi! kewpie」

 商品ラインアップには、サラダやドレッシング、スープなどがセットになった「はじめてのQummyセット」3980円(税込み)のほか、顧客が自身で好みのパッケージサラダやドレッシングを選んでつくるカスタマイズサラダ、ドレッシング、スープ、プラントベースフード「HOBOTAMA」などを取りそろえる。多彩な食のニーズに応えられるよう、今後はミールキットの販売も予定している。

商品セット
キユーミーでは、サラダやドレッシング、スープなど65品前後の商品を用意し、多彩な食のニーズに応える

 新鮮な状態で商品を届けられるよう、発送システムも工夫した。今回のキユーミーの取り組みに向けて、ヤマト運輸と提携し、物流環境を整備。ヤマトグループが持つ、宅急便の仕分けターミナルと3温度帯(常温、冷蔵、冷凍)の保冷機能が一体になった拠点で、商品の保管から出荷業務を行う。それにより、パッケージサラダの受注生産から発送までの時間を短縮。ヤマト運輸に商品を納品後、即日出荷し、注文から最短4日で利用者のもとに届ける。

ヤマト運輸
発送システムではヤマト運輸と提携し、新鮮な状態で商品を届けられるようにした

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