オールインワンVRヘッドセットを手掛ける中国のPICO Technologyは、2022年9月22日に新モデル「PICO 4」を発表。日本では10月7日に発売した。4Kの高解像度でコンテンツを楽しめることや、軽量で装着時の負担が小さいことが特徴。価格は4万9000円から(税込み、以下同)。日本発のゲームタイトルを用意するほか、インフルエンサーマーケティングを手掛けるUUUM制作によるVRチャンネルなどのコンテンツも展開する。米Meta「Meta Quest 2」のライバルとなりそうだ。

PICO TechnologyのオールインワンVRヘッドセット「PICO 4」
PICO TechnologyのオールインワンVRヘッドセット「PICO 4」
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 「PICO 4」は、単体で動作するオールインワンタイプのVRヘッドセットだ。プロセッサーは米クアルコムの「Snapdragon XR2」で、メモリーは8GB、ストレージは128GBまたは256GBの2種類。

ストレージ容量の違いで2モデルある。128GBモデルは4万9000円、256GBモデルは5万9400円。スペックが近い米Metaの「Meta Quest 2」より安価に設定されている
ストレージ容量の違いで2モデルある。128GBモデルは4万9000円、256GBモデルは5万9400円。スペックが近い米Metaの「Meta Quest 2」より安価に設定されている
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 特徴は、ストラップを除くと295グラムという軽さだ。また軽量なパンケーキレンズを採用したことで、ゴーグル部分の最薄部は35.8ミリと薄い。バンド部分がカウンターウエートとなって、前後のバランスを取るようになっている。

 実際に使ってみた。まず、PICO 4は装着しやすい。バンドを伸ばしてはね上げた状態で頭に被り、ゴーグル部分を顔の前面に軽く押し当てたらバンドを下ろす。あとは背面のホイールを回してバンドを縮めれば頭に固定できる。後頭部に当たる部分にはクッションがあって頭になじむので、バンドの締め付けで頭が痛くなることもなかった。外すときも、ホイールを回すだけで簡単に外せる。顔に当たるディスプレー周囲のクッションもフィット感がよい。

顔に当たるクッションはさらっとした感触で、湿気がこもりにくい。頭の上を通るベルトは面ファスナーでサイズ調整する
顔に当たるクッションはさらっとした感触で、湿気がこもりにくい。頭の上を通るベルトは面ファスナーでサイズ調整する
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後ろには、バンドを締めるホイールがついている
後ろには、バンドを締めるホイールがついている
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 一般に、VRヘッドセットを装着すると、レンズやバッテリーなどによる重さと厚さで首が疲れやすい。長時間装着していると、重みで前方にだんだんずり落ちてくることもある。その点、PICO 4は薄く、さらに重さを前後に分散させてバランスを取る作りにすることで、重みでずり落ちにくくなっている。前後のバランスがいいので、頭を激しく動かしてもずれたりすることがなく、装着感は軽快だった。長時間使ってもあまり疲れを感じずに済みそうだ。

付属コントローラー
付属コントローラー
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 画質も良好に感じられた。ディスプレーの解像度は片目あたり2160×2160ドットで、あわせて4320×2160ドットの4K解像度となっている。視野角は105度だ。装着してアプリをいくつか試してみたが、視野のほぼ全体に画面が広がって見えるし、精細さも十分感じられる。リフレッシュレートは90Hzで、動きのあるスポーツゲームをプレーしてみてもなめらかに見える。ゴーグル部分の前方には周囲のトラッキングなどを行う4つのSLAMカメラを搭載している。ヘッドセットを装着した状態でも、周囲の状況をカラー映像で確認できる。

戦略的な価格で日本市場に本腰

 Pico Technologyは東京ゲームショウ2022に出展するなど、日本市場にも力を入れている。PICO 4にスペックが近く、競合製品になりそうなのは米MetaのVRヘッドセット「Meta Quest 2」だ。

 PICO 4は、まず前述の軽快な装着感が強みになる。そして価格も戦略的だ。Meta Quest 2は実勢価格5万9400円前後からで、PICO4は4万9000円からと約1万円安い。購入してすぐ遊べるように、アカウント登録とストアでのログインを完了した人に有料のゲーム3タイトル(9188円相当)をプレゼントするキャンペーンも行う。

 コンテンツの拡充にも力を入れる。フィットネスゲーム『Body combat』や11種類のスポーツを楽しめる『All-In-One Sports VR』のほか、日本発のVR魔法アクションRPG『RUINSMAGUS~ルインズメイガス~』、VRアクションアドベンチャーゲーム『オノゴロ物語 ~The Tale of Onogoro~』といったゲームを用意する。軽快な装着感により、動きのあるスポーツゲームやアクションゲームを快適に遊べそうだ。22年9月29日に行われた発表会では、PICO 4のアンバサダーとしてタレントの峯岸みなみが登場し、激しいアクションで『All-In-One Sports VR』のプレーを披露した。

峯岸みなみが『All-In-One Sports VR』をプレー。装着感は「軽いです」とのことだった
峯岸みなみが『All-In-One Sports VR』をプレー。装着感は「軽いです」とのことだった
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装着時の重量バランスがいいため、動きの激しいゲームやコンテンツを楽しむのに向いている
装着時の重量バランスがいいため、動きの激しいゲームやコンテンツを楽しむのに向いている
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 また、YouTubeクリエイターのマネジメントやインフルエンサーマーケティングを手掛けるUUUMとコラボレーションし、インフルエンサーVRチャンネルを用意する。第1弾は「あなたの推しは、PICOの中にいる。」として、動画やSNSで活動するクリエイターが目の前に現れるようなコンテンツを展開する。推しのクリエイターと一緒にご飯を食べたり、テレビを見たり、散歩をしたり、あるいは企画会議に参加したりといった体験ができるという。動画配信サービスを行うU-NEXTとも協業し、U-NEXTの配信コンテンツや、VRならではのコンテンツを提供していく予定だ。

 VRヘッドセットは装着感が難点とされることが多い。PICO 4は快適な装着感が強みであり、これまでVRヘッドセットを敬遠していた人にも受け入れられそうだ。価格の安さも強みになる。あとはアプリストアの「PICO Store」をはじめ、コンテンツの拡充が販売を伸ばすカギになるだろう。

(写真/湯浅英夫)