新型コロナウイルス感染症拡大の影響で宅配需要が増え、日本でも定着した感のあるフードデリバリー。そんななかウーバーイーツは、2019年から飲食店以外とも提携を進めている。同社デリバリー部門でアジア太平洋地域を統括するゼネラルマネージャー、サスキア・デ・ヨング氏にその理由を聞いた。

2022年4月からは安達祐実と芦田愛菜をテレビCMに起用。世代の異なる2人を登場させることで幅広い世代に利用してもらう狙いがある
2022年4月からは安達祐実と芦田愛菜をテレビCMに起用。世代の異なる2人を登場させることで幅広い世代に利用してもらう狙いがある

 2016年の9月に日本でのサービスを開始したウーバーイーツは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で宅配需要が増えたこともあって、20年以降、急速に利用者数・提携店舗数を増やした。利用者数は「数百万人」と具体的数字を公表していないが「日本の利用者数は、この2年間で約3倍になった。日本進出当初は東京都内に150店舗ほどだった提携店舗も、22年7月の時点で47都道府県、約18万店舗まで増えている」と、アジア太平洋地域(日本、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、スリランカ)を統括するサスキア・デ・ヨング・ゼネラルマネージャー(以下、ヨングGM)は話す。

 日本の飲食店にはもともと出前の文化があるが「ウーバーイーツは従来の出前文化をデジタルに進化させたサービスといえる。(出前文化があったおかげで)日本では他国よりもサービスの普及は速かった」とヨングGM。

ウーバーイーツのデリバリー部門でアジア太平洋地域のジェネラルマネージャーを務めるサスキア・デ・ヨン氏
ウーバーイーツでアジア太平洋地域 デリバリー部門 リージョナル ゼネラルマネージャーを務めるサスキア・デ・ヨング氏

 20年から続く新型コロナウイルス禍が原因で飲食店での会食が制限されたことで、ウーバーイーツの利用者数・提携店舗数が増えたのは間違いない。そこで懸念されるのが、コロナ禍収束後のサービス展開だ。

 ヨングGMは「コロナ禍でウーバーイーツの利用者数・提携店舗数が伸びたのは事実。しかし、コロナ禍をきっかけに起こった人々の行動様式の変化は一時的なものではなく、決定的な変化だと捉えている。『コロナ禍以前はデリバリーサービスを利用することに抵抗があったが、必要に迫られて利用してみたら思っていた以上に便利だった』と言う人は少なくない。スマートフォンのアイコンをタップするだけで料理を注文できる便利さが理解され始めたので、コロナ禍後もビジネス環境が悪化するとは考えていない」と言う。

 コロナ禍収束後の具体的な施策について言及できるのはもう少し先になるとのことだが、ヨングGMによれば「アジア太平洋地域における市場規模で最大のオーストラリアでは3~4人分の家族単位での注文が多く、客単価も高め。これに対し、日本は1~2人分の注文が中心で客単価も低い。一方で、日本は他国と比べて(料理ではなく)食料品や日用品の注文も多い」とのこと。ヨングGMは少子高齢化が進んでいる日本では、スーパーに買い物に行くのも負担に感じる人が増えているとみている。逆に、育児に追われて買い物に時間を割けない子育て世代も少なくないという。

 「日本では料理以外のデリバリー需要があることがはっきりした。今後は料理に加えて、食料品や日用品を扱うことで売り上げの底上げを図る」(ヨングGM)

 実際、ウーバーイーツは19年8月にコンビニエンスストアの「ローソン」をはじめ、21年3月には家電量販店の「エディオン」、21年11月には会員制量販店「コストコ」と次々と提携先を増やし、料理以外の領域にも手を広げている。22年6月にはイオンモール内にある飲食店の料理を配達するようになったが「イオンモール内の商品すべてを配達できるようにすることが理想」とヨングGMは意気込む。

オーストラリアのテレビCMではお騒がせセレブのパリス・ヒルトンを起用。プールや動物園で彼女が騒動を起こすというストーリーを展開している
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 グローバルでサービスを展開するウーバーイーツがスマホアプリのローカライズに注力していることも、普及を加速した要因の1つだとヨングGMは言う。アプリの使い勝手は、ユーザーの獲得に大きく影響するのだそうだ。

 「サービス自体はグローバルなのでユーザーインターフェースは共通だが、住所の表記やカテゴリーに違いがある。住所が番地から始まり、最後に郵便番号が来る国が多いのに対し、日本の場合は郵便番号、市区郡町村と、順番が逆になる。また居酒屋、そば、すしなど日本ならではカテゴリーも追加した」とヨングGM。また海外ではほとんど利用されないWebサイトでの注文も日本では多く、Webサイトの最適化も継続しているとのことだ。

日本語版アプリの住所情報入力画面。日本の慣習に合わせて上から郵便番号、市区郡町村の順に入力できるようカスタマイズしてある
日本語版アプリの住所情報入力画面。日本の慣習に合わせて上から郵便番号、市区郡町村の順に入力できるようカスタマイズしてある

(写真/武田信晃、写真提供/ウーバーイーツ)

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