2022年の音楽フェスティバル(以下、フェス)のなかで、グロービス経営大学院学長の堀義人氏が茨城県で初開催した「LuckyFM Green Festival(通称LuckyFes)」が注目を集めている。経営のプロならでの新たな試みも実施し、短期間で開催にこぎ着けたからだ。

2022年7月に開催された「LuckyFM Green Festival」(通称LuckyFes)
2022年7月に開催された「LuckyFM Green Festival」(通称LuckyFes)

 LuckyFesは茨城県のひたち海浜公園で行われた、2022年が初開催の音楽フェスティバルである。ひたち海浜公園では前年まで大型音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」が開催されていた。20年の歴史と27万人の動員実績があったが、新型コロナウイルス禍で20年は開催を断念。21年に規模を縮小しての実施を試みたが、地元関係者との調整ができなかったことなどから中止になった。こうした状況から主催のロッキング・オン・ジャパンは22年初頭、茨城県から千葉県に会場を移転すると発表した。

 茨城県から音楽フェスが失われることを危惧して動いたのが、LuckyFM(茨城放送)のオーナー兼グロービス経営大学院学長の堀義人氏だ。「茨城のフェス文化の灯を消すな!」というスローガンのもと、22年2月、LuckyFesを同年夏に開催することを発表した。開催のわずか半年前のことだ。経営のプロとして多くのスタートアップ企業を支援してきた堀氏だが、音楽業界では素人同然。LuckyFesの開催を宣言したものの、最初はどこから手を付けるべきか悩んだという。偶然、LuckyFMの番組DJであるDJドラゴン氏が音楽フェスを開いた経験があり、LuckyFesの最初のキーパーソンとなった。彼とのつながりから音楽イベントなどを手掛ける会社の代表である矢澤英樹氏、食プロデューサーの遠藤衆氏が加わり、4人のLuckyFes実行委員会が組成された。

 堀氏は音楽業界各社に日参してネットワークを築く一方、半年の準備期間での開催は無謀だと関係者から冷たくあしらわれもしたという。それにもめげずに、自治体、警察、消防への協力依頼、協賛社獲得、アーティストブッキングを実行委員で進めていった。音楽業界から逆風が吹く中でここまで突き進められたのは、ひとえに堀氏の掲げる「地元愛」のおかげといえるだろう。ROCK IN JAPANは茨城県民にとっての自信や誇りとなっていた。水戸市出身の堀氏は、それが他県に移転することで起きる県民の喪失感は少なからず大きいと判断し、新たなフェスを開催する決断をした。

 「地元愛」はフェスを始めるうえでの大きなストーリーとなっている。堀氏が掲げたスローガンは県内の来場者の心に大きく響いたに違いない。LuckyFesのテーマは「音楽と食とアートの祭典」。以下5つのコンセプトを打ち出している。

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