3年ぶりに千葉・幕張メッセでのリアル開催となった「東京ゲームショウ2022」(TGS2022)。一般デイの来場者数の制限、小学生以下の入場禁止、コスプレ撮影会の禁止などの制限はあったものの、2019年に近い規模となった。その成果と来年の課題を、ゲーム業界を長く取材する3人のライターが分析する。初回はゲームジャーナリストの野安ゆきお氏。

「東京ゲームショウ2022」にはたくさんの来場者が訪れたが、そこに家族連れの姿がなかったのが残念だった(写真/木村輝)
「東京ゲームショウ2022」にはたくさんの来場者が訪れたが、そこに家族連れの姿がなかったのが残念だった(写真/木村輝)
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 東京ゲームショウ2022(TGS2022)は、3年ぶりに千葉・幕張メッセでのリアル開催となり、多くのゲームファンが新作ゲームの試遊を楽しむ光景が復活した。それを実現した関係者の努力に、1人のゲームファンとして深く感謝したい。

 そんなTGS2022の印象をひと言で述べるならば、「海外のゲーム展示会みたいだったなぁ」となるだろうか。

 筆者は米国で開催されるE3(Electronic Entertainment Expo)など、海外のゲーム展示会を取材したことがあるが、TGSにはそれらと異なる特徴が1つあると感じている。ファミリー層の来場者比率が高いことだ。

 新型コロナウイルス禍になる前までは、TGSの会場のあちこちにベビーカーを押す若い夫婦がいた。並んでゲームを試遊する親子がいた。友達と走り回るやんちゃな子どもたちがいた。3世代とおぼしき家族だっていた。ビジネスパーソンや報道関係者の情報収集の場であると同時に、ファミリー層には親子で楽しめる遊園地にも似たイベントとして親しまれている――そんな世界でもまれなゲーム展示会だったのだ。

 しかし残念ながら、2022年はコロナ対策として一般デイの入場者数が制限され、小学生以下の子どもたちの入場は不可とされた。親子連れが喜々としてゲームを楽しむ光景が消え、TGSが持っていた独自性は薄まってしまった。その結果、どことなく「海外のゲーム展示会みたいだったなぁ」と感じてしまったのである。

王道で勝負したためサプライズはなし

 その結果、TGS2022には“3日目のサプライズ”が発生しなかった。

 TGSでは時折、不思議な現象が起こる。1~2日目のビジネスデイでは、前評判も高いゲームタイトルが当然のように人を集めるのだが、3日目の一般デイになって会場に一般来場者が大勢訪れると、2日目までは誰も注目していなかったタイトルのコーナーがいきなり大盛況になるという現象だ。

 有名なのは11年。コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が出展したソーシャルゲーム(ガラケーで遊ぶゲーム)の展示コーナーだ。当時、ソーシャルゲームは“格下の存在”といった扱いを受けていたため、ビジネスデイでは閑古鳥が鳴く状態だったのだが、3日目になると雰囲気が一変。長蛇の列が生まれ、会場内で最大の人気コーナーとなった。

2011年のKONAMIブースの光景。3日目以降、ソーシャルゲームのコーナーに長蛇の列ができた(写真/野安ゆきお)
2011年のKONAMIブースの光景。3日目以降、ソーシャルゲームのコーナーに長蛇の列ができた(写真/野安ゆきお)
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 これはゲーム業界にとって大きな驚きだった。そして翌年以降、大手ゲーム企業がこぞってソーシャルゲームに注力し、広いスペースの試遊台を用意するようになったのである。こうした、ゲームの流行が劇的に変化する瞬間を目撃できることは、筆者にとってTGSを取材する楽しみの1つだ。

 だが、22年はそんなサプライズは見られなかった。3年ぶりの開催ということもあり、各社ともまずは熱心な大人ユーザーを満足させるための王道タイトル展示に注力したためだろう。これ自体は評価すべきことだ。一方で、話題作はたくさんあっても、異彩を放つとがったタイトルは少ないという印象が残った。

 ここは23年以降に強く期待したいところだ。コロナ禍の状況にもよるとは思うが、次こそは子どもも楽しめるTGSが復活してほしい。そして、熱心な大人のゲームファンはそっぽを向くけれど、ファミリー層が目を輝かせて注目するような、王道から大きく外れたタイトルがぜひ飛び出してきてほしい。再び“3日目のサプライズ”に出合うえることを願ってやまないのである。

女性向けゲーム部屋の展示が勝ち組に

 ゲーム各社のブースが王道タイトルに注力し、これといった驚きがない中、筆者の予想を裏切るサプライズを挙げるとするなら、家具・インテリア大手のニトリのブースだった。

 そこではデスクや椅子、じゅうたんに至るまで、すべてを白で統一したゲーム部屋が展示されていた。コロナ禍で外出がためらわれる日々が続く中、女性がゲームに没頭することも当たり前の状況となった。「若い女性が、若い女性らしい部屋の雰囲気を崩すことなく、しかしどっぷりとゲームを楽しむための空間」の提案、とでもいえるだろうか。

 いや、ゲームファンの裾野が広がった今、ゲーミングだからといって従来のような黒を基調としたインテリアばかりがもてはやされるものでもないだろう。男女の別にかかわらず、自分らしいゲーム空間を求める人は増えている。そんな時代の空気を鮮やかに切り取った展示として、存在感を発揮していた。

白一色でコーディネートされたニトリのゲーム部屋は、来場者の注目を浴びまくった(写真/湯浅英夫)
白一色でコーディネートされたニトリのゲーム部屋は、来場者の注目を浴びまくった(写真/湯浅英夫)
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 しかも、このブースは会場入り口近くの広い通路に面していたこともあり、一般入場者の食いつきが抜群に良かった。「ここが噂のニトリか」「ニトリの部屋、すげぇな」などと口にする人も多かった。ゲームショウ会場内で、最も多く口にされた固有名詞は「ニトリ」だったのではと思うほどだ。

 TGS2022は、大手メーカーが熱心なゲームファンをターゲットに王道の出展をしたゲームショウであると同時に、周辺産業とも言うべき家具・インテリア専門店が従来の王道とは逆を行く軽やかさで脚光を浴びた――そんなゲームショウという記憶が残った。

(編集/平野亜矢)