都心部では通勤ラッシュ時間帯の電車の混雑は戻ってきているものの、テレワークの定着で、新型コロナウイルス感染拡大以前の混雑レベルには至っていない。東京メトロ各駅の乗降人員を2021年度とコロナ禍前の19年度で比較したところ、減少エリアの特徴が見えてきた。
東京都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は58.6%――。東京都は新型コロナウイルス感染拡大以降、毎月都内企業のテレワーク実施状況を調査している。2022年8月は、前月の52.3%から6.3ポイント増えて58.6%だった。この数字は感染者数の増減とほぼ軌を一にしている。
最初に緊急事態宣言が発出された20年4月は62.7%、第4波の21年5月が64.8%、第5波が襲った東京五輪・パラリンピック期間中の21年8月が65.0%という具合に、感染の波に呼応して50%台前半から60%台半ばの間を推移してきた。
テレワーク率の推移が端的に影響するのが通勤電車だ。東京メトロは各駅の1日平均乗降人員を公表している。
2021年度(21年4月~22年3月)乗降人員トップの池袋駅は40万3964人(*1)。前年度(20年度)の37万6997人より7.2%増えたが、コロナ禍前の19年度は56万7703人だった。2年前比28.8%の減少ということになる。
では、2年前比で最も乗降人員の減少率が大きかったのはどこの駅か? 以下がそのランキングだ。
トップは、銀座線・南北線の溜池山王駅および丸ノ内線・千代田線の国会議事堂前駅。東京メトロは、接続している両駅の乗降人員を合わせてカウントしている。19年度の15万9494人から21年度は8万6887人へ、実に45.52%減少した。半減に近い水準だ。
2位は銀座線・丸ノ内線の赤坂見附駅。19年度の12万1665人から21年度は6万6327人へ、こちらも45.48%減で、トップと僅差の減少率だった。都心勤務のマーケターはご存じのように、溜池山王駅と赤坂見附駅は外堀通りを歩いて数分、数百メートルの距離だ。溜池山王駅直結の山王パークタワーにはNTTドコモが本社を構える。赤坂見附駅は大手ゼネコンの鹿島などの最寄り駅だ。ゼネコンはテレワークの印象が薄いかもしれないが、鹿島は東京証券取引所と経済産業省が定める「DX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄2020」に大手ゼネコンで唯一選ばれた企業で、建築の企画・設計や建物の維持管理にデジタルツインを活用している(*2)。このエリアが、都内でも随一のテレワーク推進エリアと見てよさそうだ。
3位は東京タワーの最寄り駅、日比谷線の神谷町駅。19年度の10万6952人から21年度は5万9759人へ44.13%減。伊藤忠テクノソリューションズが21年6月、JTが20年10月に神谷町トラストタワーへ本社を移転しているが、回復には至っていない。ちなみに、乗降人員に影響するほどの規模ではないが、当社日経BPも神谷町が最寄り駅である。
4位千代田線の二重橋前〈丸の内〉駅は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱商事、日本郵船、三菱電機など“三菱村”の入り口。5位南北線の六本木一丁目駅は、直結している泉ガーデンタワーにSBIグループ企業が集積している。以下、6位浅草駅、7位有楽町駅、8位六本木駅、9位新橋駅、10位青山一丁目駅と続き、9位までが2年前比減少率40%を超えている。
では、コロナ禍1年目の20年度と、コロナ禍前の19年度を比較した場合も、減少率ランキング上位は同様の駅が並ぶかというと、実は顔ぶれがだいぶ異なる。以下がそのランキングだ。
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