日本ケロッグ(東京・千代田)は2022年9月中旬から、「ごはんのように、お箸で食べる」がコンセプトのオートミール「粒感しっかり オートミールごはん」を販売。近年流行しているオートミールの食べ方“米(コメ)化” に最適化することで、日本の食卓への定着を狙うという。

日本ケロッグが発売した「粒感しっかり オートミールごはん(300グラム)」。オープン価格で店頭価格は350円前後
日本ケロッグが発売した「粒感しっかり オートミールごはん(300グラム)」。オープン価格で店頭価格は350円前後
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オートミール市場は4年間で10倍に

 米ケロッグは1906年に創立した食品メーカー。療養所を運営する医学博士J.H.ケロッグ氏とW.K.ケロッグ氏の兄弟が入所者用の健康食としてシリアルの原型を考案したのが始まりで、現在180以上の国と地域でシリアル事業を展開している。62年には、100%出資の日本法人・日本ケロッグを設立し、63年には日本でも「コーンフレーク」などの販売を始めた。

 その日本で今、売り上げを伸ばしているシリアルが、オートミールだ。オートミールとは、栄養価の高いオーツ麦を原料とするシリアル食品。日本では2020年初頭から急成長し、この4年間で販売金額は10倍以上に拡大。日本能率協会総合研究所(東京・港)の調査によれば、20年度に23億円だった国内オートミールの市場規模は、26年度には120億円となる見込みだという。日本ケロッグによれば、世界的に見てもオートミールの市場規模は拡大しており、米国では00年代前半から伸長。欧州やアジア各国でも伸びている。

 世界的な人気の背景にあるのは、健康意識の高まりだ。オートミールは加工が少なく、自然に近い食品であることが支持されてきている。日本では、20年ごろからインフルエンサーらがSNS(交流サイト)などで発信したことで人気が高まり、特に20年後半からは白飯の代用として食べる「米化オートミール」がダイエット法として注目されるようになった。日本ケロッグでは、こうした需要の高まりを受け、21年4月に「ケロッグ オートミール」を、22年3月には白米ごはん(150グラム)と比べてタンパク質を50%多くとれる「ケロッグ プロテイン オートミール」を発売。どちらの販売数も好調に推移するなか、同シリーズ第3弾として投入したのが、今回の「粒感しっかり オートミールごはん」(以下、オートミールごはん)だ。

パッケージデザインは「ごはんのように、お箸で食べるオートミール」であることを強調(画像提供/日本ケロッグ)
パッケージデザインは「ごはんのように、お箸で食べるオートミール」であることを強調(画像提供/日本ケロッグ)
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「粒感しっかり オートミールごはん」の中身。水を加え、電子レンジで1分半ほど加熱するだけで食べられる
「粒感しっかり オートミールごはん」の中身。水を加え、電子レンジで1分半ほど加熱するだけで食べられる
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需要拡大も喫食経験者は約1割

 同社が実施した定量調査(22年3月、全国消費者パネル調査〈SCI〉)によると、オートミール市場は特にここ1年で急伸長し、認知者は約9割にまで高まったが、「(オートミールを)直近1年間で食べたことがある」と回答した人は約1割(同社調べ)にとどまっている。

 「知っていても購入したことがない人の理由として、『味がおいしくない/おいしくなさそう』というイメージや『どのように食べたらいいかわからない』などが選ばれており、オートミールへの抵抗感があることが分かる。オートミールの喫食者を増やすにはこうしたイメージの払しょくが必要だと考え、オートミールをごはんとして食べられる商品を開発することになった」と日本ケロッグ マーケティング本部の西村香里ブランドマネージャー。

 オートミールごはんは、オートミールに使用されるオーツ麦の中でも粒が大きく、くせがないことが特徴のロールドオーツ2種を配合している。ロールドオーツはオーツ麦の一番外側の皮(もみ殻)を取り除き、蒸して押しつぶし、乾燥させたもの。オートミールごはんには、粒感がしっかりしているロールドオーツと、甘さと粘り気、ふっくらもちもち感のあるロールドオーツという、特徴の異なる2種類を、ごはん化に最適な比率で配合した。レンジで簡単に炊きたてごはんのような甘みと食感が楽しめるよう設計したという。

 オートミールごはんは、手軽さも特徴の一つだ。炊飯器で白米を炊くと1時間前後かかるが、同商品の場合は水を加えて電子レンジで1分半加熱すれば完成する。茶わん1杯分から調理できるので、さほど自炊をしない単身生活者でも生活に取り入れやすい。

 栄養面ではオートミールごはん1食分30グラムと、白米ごはんの平均的な1杯分(150グラム)を比較すると、オートミールごはんのほうが糖質は約60%少なく、食物繊維は約6倍多く摂取できるという。

「ごはんの代わりにオートミールを召しあがっている方は2割程度であり、まだまだ拡大の余地がある状況」と語る日本ケロッグ マーケティング本部の西村香里ブランドマネージャー
「ごはんの代わりにオートミールを召しあがっている方は2割程度であり、まだまだ拡大の余地がある状況」と語る日本ケロッグ マーケティング本部の西村香里ブランドマネージャー
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オートミールは“第4のごはん”?

 発表会のゲストスピーカーとして登壇した五つ星お米マイスター、お米ブランド化アドバイザーの西島豊造氏は日本のごはん文化の変遷を「玄米(ごはん食の大衆化)」→「白米(おいしさの追求。精米、炊飯技術の向上)」→「雑穀米(健康志向の高まり)」と説明した上で、「オートミールごはんは、(正確に言えば)ごはんではない。しかし、雑穀飯の文化に入れていいと思う。雑穀飯が広まったから、米化オートミールも生まれたのではないか」と分析し、玄米、白米、雑穀米に続く第4のごはんになる可能性を示唆した。

 さらに「若い人が米を食べなくなってきて、白いごはんは今や、主食というより嗜好品になってきている。嗜好品であればもっともっといろんな食べ方を提案してもいいのでは」として、同商品の食味を米と比較して評価した。

 西島氏は炊飯器、土鍋、電子レンジなどいろいろな炊き方を試してオートミールごはんを味わったと言う。その上で、「炊飯器で炊くのは難しい」と説明。お勧めは土鍋で炊くことだとした。またその食感は、「もちもちよりはもっちりが強いイメージ」(西島氏)。「お米よりは粘りが強く、お米のイメージでいうと、『ひとめぼれ』と『ゆめぴりか』の中間くらいだ。また甘みは今までの雑穀と比較すると強く、お米でいえば、『あきたこまち』と同等くらいと感じた」と評価した。

五つ星お米マイスターの西島豊造氏が作成した、味のイメージのポジショニングマップ(画像提供/日本ケロッグ)
五つ星お米マイスターの西島豊造氏が作成した、味のイメージのポジショニングマップ(画像提供/日本ケロッグ)
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 ただし「食べ慣れない人は雑穀特有の香りや粒感を苦手に感じる人もいると思う」(西島氏)とのこと。最初はふりかけのようなものを混ぜて食べるか、レトルトの丼の具をのせて食べることを勧めた。

発表会で提供されたオートミールごはんをメインとしたお弁当。おかずといっしょに食べるとかなり玄米ごはんや雑穀ごはんに近いと感じた
発表会で提供されたオートミールごはんをメインとしたお弁当。おかずといっしょに食べるとかなり玄米ごはんや雑穀ごはんに近いと感じた
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スーパーの米売り場での販売も

 同社では、気軽に実食できる機会を増やし、味を体感してもらうことが重要と考え、企業とのコラボレーションも積極的に展開。吉本興業東京本部の社員食堂「Munch Lunch(マンチ ランチ)」では、期間・曜日限定で、定食のごはんとして白米、五穀米に加えて、「粒感しっかり オートミールごはん」を選択できるようにしている。

吉本興業東京本部の社員食堂「Munch Lunch(マンチ ランチ)」では、定食で「粒感しっかり オートミールごはん」も選択可能。実施期間は10月3日~31日の月・水・金、12~16時(画像提供/日本ケロッグ)
吉本興業東京本部の社員食堂「Munch Lunch(マンチ ランチ)」では、定食で「粒感しっかり オートミールごはん」も選択可能。実施期間は10月3日~31日の月・水・金、12~16時(画像提供/日本ケロッグ)
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 また東京都、千葉県、神奈川県で展開するスーパーマーケット「オオゼキ」では、総菜売り場コーナーで販売しているカレーライスのお米の代わりに、オートミールごはんを使用した商品を期間限定で販売。

「オオゼキ」で販売した「オートミール&カレープレート 」(498円、税抜き)。実施期間は9月14日~30日、実施店舗は千歳烏山店、門仲牡丹店、菊川店、松原店(9月14日開始時点)(画像提供/日本ケロッグ)
「オオゼキ」で販売した「オートミール&カレープレート 」(498円、税抜き)。実施期間は9月14日~30日、実施店舗は千歳烏山店、門仲牡丹店、菊川店、松原店(9月14日開始時点)(画像提供/日本ケロッグ)
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 さらに日ごろは白米を食べている人に、オートミールごはんも選択肢の一つとして認知してもらうため、一部スーパーマーケットではシリアル売り場のほかに、米売り場での販売も予定している。シリアル以外の売り場で展開してタッチポイントを増やすことで、「知っているけれど食べてこなかった」人が試すチャンスを増やすのが狙い。取引先と共同で、新型コロナウイルス感染対策に留意しながら試食の機会を設けることも考えている。

 このほか、人気料理家「ぐっち夫婦」が出演するYouTube動画もケロッグ公式YouTubeにて公開していくという。

人気料理家「ぐっち夫婦」(TatsuyaさんとSHINOさん)が出演するYouTube動画もケロッグ公式YouTubeにて公開。Tatsuyaさんはオートミールごはんレシピを活用したダイエットもするという
人気料理家「ぐっち夫婦」(TatsuyaさんとSHINOさん)が出演するYouTube動画もケロッグ公式YouTubeにて公開。Tatsuyaさんはオートミールごはんレシピを活用したダイエットもするという
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オートミール市場はさらに拡大の余地

 同商品のメインターゲットは、「和食好き」で、「40代から60代の健康を意識している層」。女性だけでなく男性も視野に入れている。

 気になるのは、21年3月の商品から「電子レンジで手軽に作れる」「ごはんより糖質が少ない」点をPRしながらも、男性層にはあまり届いていない印象があることだ。この点を日本ケロッグ 執行役員 マーケティング本部の山田実本部長にたずねると、「男性層にリーチできていない面は確かにあり、まだまだ女性のほうが購入者層としては多いといえる。今後は男性層にもリーチしやすくなるよう、自分では作らなくても、『完成品を売っていたら食べてみたい』という人向けに、コンビニなどで手軽に購入できる1食分の商品開発も検討していきたい。基本的にはBtoC(消費者向け)だが、BtoB(企業間取引)も並行して展開していくことを考えている」とした。

 「直近では国内のシリアル市場全体の約1割をオートミールが占めるところまで来ている。しかし世界市場ではシリアル全体に占めるオートミールの割合は約2割。日本の市場もまだまだ拡大できる。現在の売り上げ規模を約2倍まで成長させたい」(山田本部長)

「オートミールの売り上げ規模を現在の2倍まで成長させたい」と語る、日本ケロッグ 執行役員 マーケティング本部の山田 実本部長
「オートミールの売り上げ規模を現在の2倍まで成長させたい」と語る、日本ケロッグ 執行役員 マーケティング本部の山田 実本部長
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