FCバルセロナやスペイン代表で活躍し、ヴィッセル神戸のキャプテンとしてチームを率いているアンドレス・イニエスタ選手が中心となり、新たなサッカーシューズ・アパレルブランド「CAPITTen(キャピテン)」が設立された。なぜ既存メーカーのサブブランドではなく自身のブランドなのか。
ブランド名に日本語の「縁」を入れた
FCバルセロナやスペイン代表で活躍し、日本ではヴィッセル神戸のキャプテンとしてチームを率いてきているアンドレス・イニエスタ選手(以下、イニエスタ氏)が中心となり、新たなサッカーシューズ・アパレルブランド「CAPITTen(キャピテン)」が設立された。同ブランドは、イニエスタ氏、M&A・ファイナンス・事業投資を行うReSTARTパートナーズ(東京・中央)、アパレル事業の生産管理・販売・経営改善を行うアパレルReSTARTファンド(東京・港)、イニエスタ氏のマネジメント会社であるNSNグループ(スペイン・バルセロナ)によって、共同出資・共同経営される。また日本初のフットウエアクリエーターとして知られる井上晋平氏が参画。イニエスタ氏がキャリアを通じて培った知見に基づくサッカーシューズを中心にスポーツウエアなど幅広い製品を、メンズ、ウィメンズ、キッズ向けに展開する。また2022年9月下旬以降に、神戸市中央区八幡通4に旗艦店を開く予定だ。
22年9月8日に国立競技場で行われた「イニエスタ新ブランド発表会」に登壇したイニエスタ氏は、ブランド名の「CAPITTen(キャピテン)」には、サッカー選手としてのすべてのキャリア、1人の人間として人生で学んだこと、サッカーが持つ価値、ハードワーク、その中でも野心的なものすべてを込めたという。またつづりの最後にある「en」は日本語の「縁」に由来するとし、「日本に来たのも縁、このチームでみんなとプレーができるのも縁。チームの中でプレーをすることが大切だという思いを込めた」(イニエスタ氏)と話した。
創設メンバーの1人であるアパレルReSTARTファンドの代表、高橋浩二氏は、「イニエスタ氏との交流の中で、未来の子どもたちに向けて何か残していきたいと考えブランド創設となった。重視したのはイニエスタ氏の理想とする形をどう実現するかだった」という。イニエスタ氏は「プロダクトは一つの製品ではあるが、まず試してほしい。どれくらい履き心地がいいか、どのくらいみなさんが期待している要素があるか。個人で感想は異なることは承知しているが、試せば素晴らしさが分かると思っている」と製品への自信をのぞかせた。
現役引退後のサッカーとのつながり
なぜ、自身のブランドを立ち上げようと考えたのか。一般的に現役選手であれば、既存メーカーの製品に監修の立場で携わることが多く、イニエスタ氏自身も、ナイキやアシックスといったメーカーと契約してきた経緯がある。しかし自らの理想とする形を追求するためには、ブランドの初めから関わる必要があると考えた。
「タイミングの問題で、21年までは他メーカーとの契約があり立ち上げられなかったが、長らく自分のブランドがほしい、納得のいくものがつくりたいと考えてきた。22年に入り、すぐにこのプロジェクトを立ち上げられたのはタイミングが良かったし、非常にアンビシャス(野心的)なプロジェクトだと考えている。いつかは現役選手をやめるときがくるが、その後、どのようにサッカーとつながりを持っていくかを考えると、スパイクのブランドを立ち上げて、そのブランドが残っていくことに、大きな意味がある」とイニエスタ氏。今後、サッカーをしたいと考える少年少女、あるいは大人たちにも、愛用されることを目指している。「もちろんこれで完成ではない。長く愛されるブランドにするため、研究、進化を続けていきたい」(イニエスタ氏)
世界展開も視野に進化させていく
第1弾製品にサッカーのスパイクを選んだ理由を、イニエスタ氏は「いちサッカー選手として、様々なツールを使ってきているが、中でもスパイクは私にとって一番大事にしているものだから」と説明する。
フットウエアクリエーターの井上氏は、これまで国内ブランドではアシックス、海外ブランドではATHLETA(アスレタ)などでスポーツシューズブランドの職人として従事してきており、世界中からオファーを受ける技術を持つ。その井上氏をしても、ブランドから声がかかったときには、にわかに信じられなかったそうだ。すぐに神戸に呼ばれ、目の前にイニエスタ氏がいるのを見て、その本気度を感じたという。
ReSTARTパートナーズの代表、倉本大樹氏は、「チーム一丸となってつくりあげてきた。スパイクは非常に履き心地がよく、プレーがうまくなったのかと錯覚するほどだ。ぜひ、イニエスタ氏の経験と価値観すべてが詰め込まれたシューズを楽しんでもらいたい」と話した。
イニエスタ氏は現状のスパイクは「デザインも履き心地もパーフェクト」と考えているとしつつも、「改善の余地はあり、この時点では完璧だということ。より良くするために改善していくだろう」とした。また、早速このシューズを履いてプレーをするとし、「明日からまたサッカーに精進したい」とも。
ただし今後の展開については、「現役選手としてプレーしながらプロダクト製作に携わったため、現時点では遠い将来のビジョンは持っていないが、今後、どういう選手が履いてくれるのか、世界展開できる履き心地のよさを追求して開発していきたい」(イニエスタ氏)と話すにとどまった。