年間200万円しか集まらなかったふるさと納税の寄付金額が、21億円以上に増加――。人口約2万人、かつては財政破綻も囁(ささや)かれた高知県須崎市。この小さな市を“ゆるキャラ”の「しんじょう君」で立て直した男がいる。ゼロからゆるキャラをプロデュースし、「ゆるキャラグランプリ」で日本一を獲得するまでに成長。その知名度を生かしてふるさと納税をPRし、須崎市の活性化に貢献した。そんな須崎市を再建させた立役者である守時健氏に、地域活性化のノウハウを聞いた。
ふなっしー、ひこにゃん、くまモンなど、アイドル級の人気を誇るキャラも登場し、今では1500体以上が存在するといわれる「ゆるキャラ」。
愛くるしい見た目に、どこかおぼつかない立ち振る舞い、ゆるくやる気のないキャラクター性などが、世間から注目を集め、08年にはユーキャンが主催する新語・流行語大賞にもノミネートされた。10年からはファン投票で人気を決める「ゆるキャラグランプリ」も開催されるようになった。ゆるキャラは一大ブームとなり、各地域のPRや活性化に必要不可欠な存在となっている。
そんな過渡期を迎えていたゆるキャラ業界に13年、また1体、新たなゆるキャラが誕生した。その名は「しんじょう君」。高知県須崎市という小さな町で生まれた、くりくりっとした目がかわいらしい同キャラクターは、ニホンカワウソをモチーフにデザインされ、鍋焼きラーメンをイメージした被り物をしている。
お披露目前にモチーフのニホンカワウソが絶滅種に指定されてしまうというハプニングがあったものの、しんじょう君は着実に知名度を上げていった。誕生から3年後の16年には、「ゆるキャラグランプリ」で日本一を獲得。現在のTwitterのフォロワー数は12万人を超えている。しんじょう君をきっかけに、須崎市を知ったという人も多いはずだ。
瞬く間に有名となり、須崎市の知名度向上に貢献したしんじょう君。その発起人は、当時、須崎市の市役所職員を務めていた守時健という男性だ。岡山県出身、関西大学卒業と高知県に縁のない彼が、ひょんなことから須崎市の市役所職員に入庁。そこからSNSを駆使してしんじょう君を日本一にまで押し上げた。さらにブレイク後も、しんじょう君の知名度と経済効果を生かして、ふるさと納税の寄付金額を爆上げ。担当になった当時は年間200万円しか集まらなかった寄付金額を、20年度には21億円以上にまでに増加させた。
守時氏は、どのようにしてゆるキャラの実績をつくりあげ、ふるさと納税の寄付金額を増やしたのか。本記事ではその過程をたどった。
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