2022年1月1日に「日清フーズ」から社名変更した日清製粉ウェルナが同8月5日、秋の新商品発表会を行った。コーポレートブランド刷新直後に起こった、世界的な小麦価格高騰という逆風にどう立ち向かうのか。新商品群および、発表会当日に行われた日清製粉ウェルナの小池祐司社長へのインタビューから、同社の戦略を読み解く。
22年秋は例年の2倍相当の全83品
日清フーズは2022年1月1日付けで社名を日清製粉ウェルナに変更した。Wellness by nutrition from nature(自然の恵みで、世界の人々に健康をお届けする)から付けられた「Welna(ウェルナ)」は、日清製粉グループが14年から海外向けに展開しているブランド名だ。日清フーズの設立60年に合わせ、ウェルナを冠した日清製粉ウェルナとすることで、国内外、社内外への新たなブランド戦略によるグローバル展開企業を目指す狙いがある。
22年8月5日に開催された秋の新商品発表会冒頭で、同社の小池祐司社長は今後の戦略として「事業構造の転換」「価値の創造」「海外展開の深耕」の3つの中・長期戦略を改めて強調した。一方で世界的な小麦価格の高騰や円安などの影響を受け、7月、8月には価格改定を実施したこと、新型コロナウイルス禍第6波後に落ち着きつつあった家庭内消費の増加傾向が、直近の感染再流行により再度高まりつつあることなどに触れ、先の予測が困難な時代であることを指摘した。
その上で小池社長は、「コストアップは、かつてわれわれが経験したことがないレベルで継続している。そのためこの環境に適合するコストアップ対応型の新製品も含め、22年春に引き続き22年秋は、例年の2倍相当のアイテムを上市する」(小池社長)と説明。家庭用・業務用を合わせた新製品の売り上げ目標は100億円とした。
22年秋の新製品・リニューアル品は、家庭用が全74品(新製品58品・リニューアル品16品)、業務用が9品(新製品7品・リニューアル品2品)で合計83品。同社では下記の「5つの重点テーマ」を設けている。
【2】 変化をとらえる「新たなニーズへの対応」
【3】 食卓を豊かにする「付加価値製品の提案」
【4】 伸長する「冷凍商品市場への新たな挑戦」
【5】 業務用ユーザー様の「課題解決に繋(つな)がる提案」
値ごろ感と付加価値の二極化に対応
中でも注力しているのが「値ごろ感のある新製品」カテゴリーで、新製品・リニューアル品全体の2割に相当する。
「コストインフレにより、40~50年に一度というまさに異次元のコストアップが発生し、価格改定をせざるを得ない状況。このような中で消費者の意識も大きく変化している。その変化を見極めて対応しなければならない」と日清製粉ウェルナのプロダクトマネジメント統括部伊藤俊二部長。
そこで同社の3つの基本戦略である「簡便」「本格」「健康」を軸に、「これからの消費を担うZ世代」や「環境配慮への意識」などの新たな消費トレンドを捉えた新製品を発売。無駄なく使える小容量タイプの製品ラインアップも多くそろえ、家計を幅広くサポートするという。
例えばロングセラーの「日清 お好み焼粉」と「日清 たこ焼粉」は従来の500グラムと800グラムに加え、300グラムサイズを追加。
また「新たなニーズへの対応」として「節約ニーズはありつつも、手軽さ、あるいは適量ニーズ、早く食べたい、すぐ食べたいといったニーズも増えている」と伊藤部長。こうした声にしっかり応える、量を少なめにした製品や、すぐに使える冷凍商品などもそろえた。
「健康を意識して体重管理している方やシニアの方は、スパゲティの喫食量が一般的な100グラムより少ない。よって、定番製品であるスパゲティ『マ・マー』は、少なめニーズに応える、1束80グラム製品を発売する。既存の100グラム結束とは別のターゲットになるので、すみ分けも可能と考えている」(日清製粉ウェルナCRM推進部主幹兼プロダクトマネジメント統括部第一部 ディレクショングループ グループリーダーの石井公貴氏)
同社主力商品のひとつである強力粉「日清 カメリヤ」も、既存の1キログラムに加え500グラムサイズをラインアップに追加する。また「日清 天ぷら粉 チャック付」は容量を600グラムから500グラムに、「日清 ホットケーキミックス チャック付」は容量を500グラムから400グラムに変更する。これは世帯当たり人数の減少に伴い、一般的な世帯当たり使用量が変化していることを踏まえてのことだ。
コスト増に伴う価格改定で消費者の意識がシビアになる一方で、「ちょっとぜいたくをしたい」「食卓を華やかにしたい」というニーズに対しては、付加価値型の商品で対応。新商品の筆頭にあげられるのが、“贅沢(ぜいたく)なおいしさ”をより手軽に楽しめる「青の洞窟 Piccolino(ピッコリーノ)」シリーズだ。「青の洞窟」ブランドの“本格的なイタリアン”を、より手軽に楽しめる新シリーズのパスタソースだという。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー