全国の美術館やホテルなどで使われている照明機器「SALIOT(サリオ)」が、一般家庭での使用を意識した「サリオ ムービングスポットライト」を発売した。部屋のダクトレールに付けるだけで、部屋に貼ったポスターや絵画がまるで美術館に飾られているようなムードになる。どのような人が購入しているのだろうか。

ミネベアミツミ「サリオ ムービングスポットライト」色は、写真の白のほか黒もある
ミネベアミツミ「サリオ ムービングスポットライト」。色は、写真の白のほか黒もある
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 全国の美術館やホテルなどで使われている「SALIOT(サリオ)」という照明機器。天井のダクトレール(照明器具を取り付けるためのレール)に取り付けるタイプで、専用アプリを入れたスマホやタブレットなどから光の明るさや向きを自在にコントロールできるのが特徴だ。さらに、そうしたスポットライトの状態を保存し、同じライティングを簡単に再現できる機能を搭載する。色の再現度(演色性という)を示すRa値は、太陽の下で見た色を100としたとき、サリオは97。つまり、太陽光の下で美術品などを見るのと変わらない色味を再現できるのだ。

 そのサリオを開発したミネベアミツミが2022年6月、一般家庭での使用も視野に入れた「サリオ ムービングスポットライト」を2万4800円(税込み)で発売した。家庭向けのムービングスポットライトを発売したのは、新型コロナウイルス禍で在宅時間が増加し、一般消費者の住まいへのこだわりが強まっているためだ。さらに「明かりのトレンドが(室内などを均一に照らす)全般照明から部分照明に変わっている」と、照明製品等新商品企画室室長の上野毅氏は明かす。そこで30~40代で初めて住宅を購入する人をターゲットにし、部分照明のニーズがあると踏んだというわけだ。

 最大の売りは、家庭用照明としても使いやすいサイズ。高さ179ミリメートル、長さ211ミリメートル、蛍光部の直径53ミリメートル、重さ850グラムというサイズは、従来のムービングスポットライトの約3分の1程度の大きさだ。一般家庭で使用される簡易のダクトレールに複数装着しても、問題なく使えるだろう。

左が、「サリオ ムービングスポットライト」、右が博物館などで使われる従来のミネベアミツミのムービングスポットライト。ライト部分のサイズが小さくなった
左が、「サリオ ムービングスポットライト」、右が博物館などで使われる従来のミネベアミツミのムービングスポットライト。ライト部分のサイズが小さくなった
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 元々、サリオは博物館や大規模店舗のような場所向きで、個人経営の店舗や小さなギャラリーなどでは導入が難しかった。他社製品でもムービングの機能が付いた製品はサイズが大きく、家庭で使用するにはハードルが高かった。

 最近では、商店やギャラリー以外に、住宅でもダクトレール付きの部屋が増えている。そこで、「ダクトレールに付けることが可能な、とにかく小さいムービングスポットライトができないかと考えた」(上野氏)。

通常の照明とは一線を画す体験とは

 筆者は、仕事部屋でこのライトを3灯設置している。元々の部屋にはダクトレールが付いていなかったので、量販店で簡易ダクトレール(1メートル)を5000円程度で購入。天井の照明用のコンセントに装着しただけで、工事の必要もなく、簡単に導入できた。最初からダクトレールが設置されているギャラリーや最近のマンションのような場所では、さらに設置は簡単だ。設置さえ終われば、光の向きや強さは手元のアプリで自在に設定できる。脚立の上で角度を決め、脚立を降りて照明を確認してはまた調整し直す、といった作業がいらないのだ。

ダクトレールさえあれば、だれでも簡単に設置可能。角度や方向は、設置した後でスマホから操作できる
ダクトレールさえあれば、だれでも簡単に設置可能。角度や方向は、設置した後でスマホから操作できる
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照明の角度や向き、明るさは、スマホの専用アプリから操作可能。右はスマホの操作画面
照明の角度や向き、明るさは、スマホの専用アプリから操作可能。右はスマホの操作画面
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 実際に使ってみると、モノを本来の色に近い形で見ることができ、本も読みやすい。コントラストが向上してパソコンのキーボードが見やすくなるなど、従来のデスクライトには無かったメリットを日々感じている。

 一方で、通常の照明として使うにはひと工夫必要だ。照射角度を16度から28度まで広げられるとはいえ、性能はスポットライト。2~3灯で6畳の部屋全体を明るくしようとすると、壁などに反射させて間接照明のような使い方をする必要がある。

光の広がり具合は、ライト前方のリングを手動で回して調整する
光の広がり具合は、ライト前方のリングを手動で回して調整する
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リビングでの使用例
リビングでの使用例
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 たが、この使い方が思わぬ効果を上げた。通常の天井からのシーリングライトによる照明と違い、間接照明になるため、影ができにくいのだ。本などを読む際に、自分の頭や手で紙面が暗くならないのはメリットの1つだ。

 そして、Ra97の光が部屋全体に行き渡っているので、写真が本当にきれいに撮れる。適当に撮っても、深みのある色に仕上がるのだ。部屋に貼ったポスターや絵などは、まるで美術館に飾られているような印象になる。これは、かなり面白い体験。照明の向きや明るさをあらかじめ設定して、好きなときに呼び出せる機能もあるので、ワンタッチで部屋のムードを変えることができる。

部屋の照明に「サリオ ムービングスポットライト」を使用すると、ただ机の上に置いたビンをiPhoneで撮影しても、美術館風の仕上がりになる
部屋の照明に「サリオ ムービングスポットライト」を使用すると、ただ机の上に置いたビンをiPhoneで撮影しても、美術館風の仕上がりになる
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 ギャラリーや店舗で使用する場合は家庭とは違い、展示品の移動なども頻繁に起こる。そんなときも、ライトに触れずに照明の調整ができること、実際の照明の具合を見ながら微調整ができることはとても効率的。その上、照明自体が美術館レベルの光であるため、作品や商品の色を鮮やかに見せてくれる。1個から購入できるのも小規模の店舗ではありがたいだろう。

 小規模店舗やギャラリーからの問合せは多く、確実にベース値は上がっている。他に選択肢のない新しい製品だけに、年間2000台を目標に、今後は、事例の提示を強化する予定だ。