角川アスキー総合研究所(東京・文京)は2022年8月25日、国内外ゲーム業界の最新動向を分析した『ファミ通ゲーム白書2022』を発売した。21年のゲーム市場は、ワールドワイドで前年比6.1%増の21.9兆円。日本国内はほぼ横ばいだが2兆円規模を維持。そのうち1.3兆円はゲームアプリで、市場をけん引している。
巣ごもり需要による急成長への反動はなし
世界のゲームコンテンツ市場は、2020年に新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要の影響などから31.6%増と大きく伸び、20兆円の大台に乗った。21年はその反動による縮小が懸念されるところだったが、実際には6.1%増と引き続き伸びて、市場は21.9兆円になった。地域別にみると、伸びが大きいのは北米市場で前年比10.4%増。次いで欧州も同7.9%増となっている。
世界的な傾向は、オンラインプラットフォーム(家庭用ゲーム機、スマートフォン、タブレット、PCなど、ネットワーク接続を前提にゲームコンテンツが動作するプラットフォームのこと)の割合が高いこと。また、家庭用ゲーム機やPC、スマホといったハードを選ばずに遊べるようなマルチデバイスで展開しているコンテンツや、フリー・トゥ・プレー(Free-to-play、またはF2P、FtP:プレー自体は無料で、ゲームに使える武器やアイテムなどの追加コンテンツが有料となっているゲームのこと)のコンテンツが増えている。
国内ゲーム市場はほぼ横ばい
日本国内のゲームコンテンツ市場は、20年に巣ごもり需要などで19年から2割近く伸びた。21年は前年比0.8%減の微減となったが、20年に引き続き2兆円規模を維持しており、ほぼ横ばいの状態とみられる。日本を含む東アジア(日本、中国、韓国、香港)全体をみると、同0.6%増と前年から微増している。新型コロナ禍による巣ごもり需要は特需で終わることなく、世界的にゲームコンテンツの需要を拡大、定着させたといえそうだ。
国内市場が微減で東アジア市場全体でも微増にとどまっているのは、新型コロナ禍による世界的な半導体不足が要因の1つとみられる。本来なら、20年11月にソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation 5」(PS5)が発売されたことなどから、ハード、ソフトともに伸びが期待されるところだ。しかし世界的な半導体不足が家庭用ゲーム機の供給にも影響し、需要に追いつかなかったため、家庭用ゲームコンテンツも伸び悩んだとみられる。
国内ゲーム人口は増加 ゲームアプリが市場をけん引
市場規模は微減だが、21年の日本国内ゲーム人口は5535万人で、初の5000万人超えとなった前年の5273万人からさらに増加した。ここからも、新型コロナ禍による巣ごもり需要の反動はなかったといえるが、1人当たりのゲームにかける金額はやや下がったことになる。ゲーム人口が特に増えたのは、前年が微減だったスマホのアプリゲームユーザーで6.4%増。PCゲームユーザーも4.8%増加し、PCでのみプレーする人口が約20%増と大きく伸びている。PCゲームユーザーの増加は、若者を中心にeスポーツ系のタイトルや、F2Pでマルチデバイス対応のタイトルが人気を集めたからとみられる。
前述のように2兆円規模である国内ゲームコンテンツ市場において、オンラインプラットフォームは1兆6414億円と大半を占める。そのうちゲームアプリは1兆3001億円で79.2%を占める。20年の1兆3164億円から前年比1.2%減と微減だが、国内ゲーム市場のけん引役となっている。
21年のトピックとして挙げられるのは、『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)が大ヒットし、他のゲームアプリから移ったユーザーも相当数いると考えられること。ゲームアプリ市場はここ数年、ランキング上位のタイトルがほぼ固定され、変化が乏しくなっている。『ウマ娘』はその状況に変化をもたらした。
ランキング上位がほぼ固定されてしまう要因はいくつかある。その1つは宣伝費だ。スマホはゲームのコア層だけでなく一般層の多くが所有しているため、ゲームアプリでランキング上位に入るほどの売り上げを出すには、テレビCMやアプリ紹介サイトの制作など、多額の宣伝費が必要になる。そのため、新規参入企業にとってハードルが高い。
国内ゲーム市場のけん引役であるゲームアプリ市場の活性化には、この状況を変えることが求められそうだ。例えば『ポケモン GO』は、位置情報とAR(拡張現実)技術で新たなゲーム体験を実現して大ヒットとなった。こうした新しい体験ができ、インフルエンサーに訴えることができるイノベーティブなゲームの登場が求められるだろう。
(写真提供/角川アスキー総合研究所)