「食×テクノロジー&サイエンス」をテーマにしたイベント「SKS JAPAN 2022」(22年9月1日から3日間開催)を主催するシグマクシスは、フードテック&食の進化の方向性を示した最新マップ「Food Innovation Map 3.0」を作成した。新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻などにより世界のフードシステムを取り巻く環境が大きく変わる中で、今注目すべき4つの視点とは。シグマクシスの岡田亜希子氏、住朋享氏に聞いた。

シグマクシスが作成した最新の「Food Innovation Map 3.0」
シグマクシスが作成した最新の「Food Innovation Map 3.0」

――2020年7月に発売した書籍『フードテック革命』(日経BP刊)では「Food Innovation Map 2.0」でした。それから約2年、今回の「SKS JAPAN 2022」で正式発表される「Food Innovation Map 3.0」はどんな点がバージョンアップされたのでしょうか。

岡田亜希子氏(以下、岡田) 前回のMap 2.0はコロナ禍で加速した新たなトレンドにフォーカスしたものでした。今回の3.0は主に「フードシステム革新」「人と人を繋げる食体験」「食とWell-being(ウェルビーイング)」「再生・循環型食」の4つが新たなポイントとなっています。SKS JAPAN 2022では、これらに関連したセッションも展開していきます。

 まず、「フードシステム革新」の議論が非常に活発化しています。もちろんサステナビリティー(持続可能性)の観点から注目されている部分もありますが、現在はサプライチェーンの分断や食糧自給率の問題、感染症や戦争などによって食糧の安全保障が脅かされたときにどうすべきなのかという論点が必要になっています。

 「人と人を繋げる食体験」については、最近Web3(ウェブスリー)やメタバース、NFT(非代替性トークン)などのデジタルテクノロジーが新しい潮流を起こしています。これらがどのようにフードイノベーションに影響を与えるのかという観点も見ていくべきです。

 3つ目の「食とWell-being」は、食を通じて最終的に生活者がどのような心身の幸福感を享受できるのかという観点になります。

住朋享氏(以下、住) 前回のMap 2.0では「無理なくロス削減」という項目がありましたが、これも単純な「食品ロスの削減」ではなく「資源循環」、つまり今回4つ目に挙げた「再生・循環型食」に変わってきています。マイナスになっているもののマイナス度合いを減らすのではなく、マイナスをプラスに、「アップサイクル」や「サーキュラーエコノミー」といった概念への変化が重要なポイントです。

以前の「Food Innovation Map 2.0」(シグマクシス作成、画像/『フードテック革命』より)
以前の「Food Innovation Map 2.0」(シグマクシス作成、画像/『フードテック革命』より)

 1つ目の「フードシステム革新」を補足すると、フードテックの代表格となった植物肉や培養肉なども、コロナ禍以前は「たんぱく質クライシスを救う」という文脈でしたが、最近は輸入肉だけに頼っていると食の安全保障が脅かされるという懸念が強まってきました。つまり、自分たちが食べるたんぱく質の自給率を上げていかなければならないという問題意識です。

――代替肉の市場動向についてはどのように見ていますか。

岡田 米ビヨンド・ミートはマクドナルドと組んでプラントベースのハンバーガーを出していますし、米インポッシブル・フーズは植物性パティを使った「Impossible Burger」から始まってアジア進出を見据えた代替豚肉「Impossible Pork」まで展開しています。日本では「大豆ミート」という形で売られていることが多く、米国のような展開はないものの、今ではコンビニやスーパーでも買えるようになってきています。

 ただ、牛肉の消費量が多い欧米と違って、日本はもともとたんぱく質を豆腐などさまざまな食品から採ってきました。そのため、日本が目指すのは「代替肉」なのか、それともあまり肉に頼らない日本の食文化をもっと押し出していくほうがいいのか。現在、食品メーカーや流通企業なども交えながら議論が進んでいます。

 代替たんぱく質の生成技術として、世界ではたんぱく質の生成を菌に行わせる「菌発酵」の技術を持つスタートアップへの投資が増えている点も注目したいポイントです。実は、21年は植物肉よりも菌発酵代替肉への投資がかなり伸びました。

 欧米では機械で人間側が発酵をコントロールし、AI(人工知能)などを活用しながら生産性を高めていく精密発酵がメインですが、発酵自体は日本がもともと得意な分野です。日本ではまだ、欧米ほど注目を集めるスタートアップは出てきていませんが、菌発酵は今まで培ってきた技術なども含めて大きな可能性があると思っています。

――日本の食文化を押し出した代替たんぱく質の方向性として、見えているものはありますか。

 最近は海外で海藻由来の代替たんぱく質を開発するスタートアップが増えています。また、アジアではシーフードのニーズがすごく強いので、「代替シーフード」もフォーカスするべき1つの分野だと思います。

 日本では魚を1匹ずつ目利きして売る文化がありますが、魚の脂の乗り方やテクスチャー(質感)、味などに対する異常なまでのこだわりを代替シーフードでもうまく発揮できれば、まだ市場を取れる可能性は高いはずです。

岡田 代替シーフードだけではなく、陸上養殖の技術や、海上養殖でも魚の育て方や生産方法を変えるなどといった養殖自体のアップデートという方向性も注目すべきですね。

SKS JAPAN 2022は22年9月1日から3日間開催
SKS JAPAN 2022は22年9月1日から3日間開催

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