2020年に投稿された「ミロで貧血が改善した」という1通のツイートをきっかけに、「鉄補給」のために「ミロ」を飲む大人の女性を中心とした「ミロ活」が高まり、21年3~8月の金額ベースの売り上げが19年同期比の約3.5倍に伸びたネスレのロングセラー飲料商品、ミロ。その後も好調を維持しているが、ネスレ日本(神戸市)はこのムーブメントを継続するため、鉄不足の女性への啓発コミュニケーションを強化している。今回、新たに防音個室ブース「テレキューブ」の企画・開発・提供を手掛けるテレキューブ(東京・千代田)とのコラボレーションで、「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」を22年8月8日から期間限定でオープンした。

新丸の内ビルディング(通称・新丸ビル、東京都千代田区丸の内1丁目5-1)地下1階に設置(1台)されたテレキューブが、「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」に変身。2022年8月8日から9月2日までの期間限定で、営業時間は7時から21時まで
新丸の内ビルディング(通称・新丸ビル、東京都千代田区丸の内1丁目5-1)地下1階に設置(1台)されたテレキューブが、「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」に変身。2022年8月8日から9月2日までの期間限定で、営業時間は7時から21時まで

個室型ワークブース利用でミロ提供

 「ミロ」は、スイスに本社を置く大手食品・飲料会社ネスレが製造、販売するココア味の粉末大麦飲料だ。もともとは成長期の子供の栄養補給を主目的にしていたが、20年夏に始まった「ミロ活」ブームにより、購入者の構成比が激変し、購入世帯数は「子供のいない家庭」と「子供のいる家庭」がほぼ同等になる現象が起こった。少子高齢化の影響があるとはいえ、大人の飲用が広がっている日本の状況はグローバルで見ると特殊で、スイスのネスレ本社も驚いているという。

 ネスレ日本は、偶発的に掘り起こされた新たな購買層を、長年培ったブランド力で定着させることに成功。その熱を維持するべく、「鉄摂取」の重要性を啓発するキャンペーンを強化している。21年10月には女子栄養大学の学生が考案したメニューの販売や、栄養アドバイスの提供を行うキッチンカーを活用した「ミロ 鉄分お助け隊」を結成。22年3月には「“鉄”不足チェック」体験やマグカップとのセット製品の購入ができる「ミロ 鉄分お助け自販機」を、ネスレ日本直営の「ネスカフェ 原宿」に設置した。

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 「鉄不足」啓発キャンペーン第3弾となるのが、防音個室ブース設置台数シェア No.1(※1)のテレキューブとのコラボレーションだ。JR東京駅前にある新丸の内ビルディング(通称・新丸ビル)の地下1階に、緑のラッピングを施した「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」を、22年8月8日から9月2日までの約1カ月間、期間限定で設置している。

 利用者はブース内で「“鉄”摂取量チェック」を行うと「ネスレ ミロ オリジナル スティック」1箱を持ち帰ることができる。「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」使用にはテレキューブの会員登録が必要で、従量料金プランは30分で1188円(税込み、「テレキューブ」に個人登録した場合の料金。料金プランは予告なく変更する場合あり)。

 テレキューブは17年より「Web会議の場所がない」という問題を解決するために様々な場所に容易に設置できる、防音個室ブースを考案し提供。企業内の会議室の増設・設置において1万台以上の実績をはじめ、全国の駅・事務ビル・商業施設などの公共エリアにも600台を設置・展開しているという(21年12月末時点)。

※1:日本マーケティングリサーチ機構、2022年2月期_指定領域における市場調査

「身だしなみセット」も用意

 ミロ 鉄分お助け テレキューブのブース内には「ネスレ ミロ オリジナル スティック」が入ったセーフティーボックスを設置。ブース内の2次元コード(QRコード)を読み取って「“鉄”摂取量チェック」を行うと、最後にセーフティーボックスの扉を開けられる暗証番号が発行される。

ブース内に掲示されている専用2次元コードを自分のスマートフォンなどで読み込む
ブース内に掲示されている専用2次元コードを自分のスマートフォンなどで読み込む
「“鉄”摂取量チェック」を行う。完了すると、ページ最下部に暗証番号が表示される
「“鉄”摂取量チェック」を行う。完了すると、ページ最下部に暗証番号が表示される
暗証番号をもとに、ブース内に設置されているセーフティーボックスを開錠し、「ネスレ ミロ オリジナル スティック」1箱を取り出し、持ち帰る
暗証番号をもとに、ブース内に設置されているセーフティーボックスを開錠し、「ネスレ ミロ オリジナル スティック」1箱を取り出し、持ち帰る

 さらにブース内には、ライト付きミラー、ミニ扇風機、汗をかく季節に役立つ汗ふきシート、コットン、綿棒などの身だしなみグッズも用意されている。

ブース内には、オンライン会議に備えて身だしなみを整えられるライト付きミラー、ミニ扇風機、汗ふきシート、コットン、綿棒なども用意
ブース内には、オンライン会議に備えて身だしなみを整えられるライト付きミラー、ミニ扇風機、汗ふきシート、コットン、綿棒なども用意

自覚しづらい鉄不足を数値・見える化

 ネスレ日本がこうしたキャンペーン活動を継続するのは、女性に対して鉄の摂取量不足の自覚を促したいという思いからだという。鉄の摂取量はほぼ全ての年代の女性で不足傾向にあるが、自覚症状が少ないため、自分がそうであると思っていない人が意外に多い。そこで22年3月にネスカフェ 原宿に設置した「ミロ 鉄分お助け自販機」には、女子栄養大学栄養生理学研究室の上西一弘教授監修による「“鉄”不足チェック」ができるタブレットを用意した。

 だが利用者から、「単に不足しているというだけではなく、自分がどれくらい不足しているのか、不足を解消するには何をどれくらい食べればいいのかを知りたい」という声があった。そこで今回の「“鉄”摂取量チェック」では、「“鉄”を多く含む食材を過去3日間どれくらいとったか」という設問を通して、自身の鉄不足量を数値でイメージできるようにした。ちなみにこの「“鉄”摂取量チェック」は、ミロ公式サイトでも利用できる。

「“鉄”摂取量チェック」の結果の一例
「“鉄”摂取量チェック」の結果の一例

 ネスレ日本飲料事業本部 Ready to Drinks & MILO ビジネス部の吉永祐太氏は「夏は発汗により、汗に含まれるミネラルが失われる。ナトリウムやカリウムはスポーツドリンクなどで補う人も多いが、ミネラルのうち“鉄”については摂取を心がけている人は多くないと考えている。この夏は冷たい牛乳にミロを溶かして飲んでいただくことで、鉄もしっかり摂取していただきたいと考えている」とした。

「前回の自販機付属のチェックは、自分の“鉄”不足を自覚していただくきっかけづくりが目的だったが、今回は数値化したことで、より踏み込んだ内容になっている」と語るネスレ日本飲料事業本部 Ready to Drinks & MILO ビジネス部 部長の吉永祐太氏
「前回の自販機付属のチェックは、自分の“鉄”不足を自覚していただくきっかけづくりが目的だったが、今回は数値化したことで、より踏み込んだ内容になっている」と語るネスレ日本飲料事業本部 Ready to Drinks & MILO ビジネス部 部長の吉永祐太氏

テレキューブとのプロジェクトを発展

 テレキューブの間下浩之社長によると、ネスレ日本とのコラボレーションのきっかけは2年前、個室ブースを利用した「ネスカフェ 睡眠カフェ」を企画したネスレ日本が、テレキューブに協業の可能性を持ちかけたこと。ネスカフェ 睡眠カフェは、ネスレ日本が17年から実施している取り組みだ。社会的な問題となっている日本人の睡眠不足に注目し、カフェインを含むコーヒーとカフェインレスコーヒーの飲み分けにより、日中のパフォーマンス向上や、夜の良質な睡眠につなげることを啓発している。ネスレ日本では現在、良質な睡眠のために必要な情報を学べる情報拠点として「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」を運営。実証実験として22年6月30日よりJR大宮駅構内で「STATION BOOTH supported by ネスカフェ 睡眠カフェ」の提供を開始している。なお、JR東日本が全国で運営をしている「STATION BOOTH」もテレキューブのブースとのこと。

 「ミロ 鉄分お助け テレキューブ」は、テレキューブ側からミロとのコラボを提案したもので、テレキューブとネスレ日本が今後推進していく、「カラダもココロも健やかに!プロジェクト」の一環であり、今後も両社で様々な試みを実施予定だという。なおネスカフェ 睡眠カフェも、新丸ビルのような都心で展開することも視野に入れているという。

 「テレキューブは、徐々に認知度が上がってきているものの『知っているが、使ったことがない』という人が多い。今後はネスレ日本さんのネスカフェ、ミロ、キットカットといった多彩な食品・飲料とコラボレーションすることで利用者に新たな価値を与え、ビジネス利用や休憩にとどまらずにテレキューブの様々な使い方を広げていきたい」(間下氏)

 ネスレ日本にとって、「ミロ」の売り上げを急拡大させた「鉄不足」への関心の高さを継続させるためには、話題性のあるイベントが効果的であり、そのためには場所が必要。テレキューブとのコラボレーションは、駅構内やオフィス街など、人が集まりやすい様々な場所でイベントを実施できるというメリットが大きい。一方テレキューブ側は、知名度抜群のネスレ日本の商品とコラボレーションにより注目度も認知度も上がり、実際に利用する人が増やせると期待する。双方にとってwin-winの結果を目指す、両社の今後のコラボレーションが成功すれば、個室ブースの新たな用途が生まれるかもしれない。

テレキューブ社長の間下浩之氏(左)と、ネスレ日本の吉永祐太氏
テレキューブ社長の間下浩之氏(左)と、ネスレ日本の吉永祐太氏

(撮影/桑原恵美子)

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