出版から約3カ月で5万部超ーー。1万部でヒットといわれるドリル業界で、学研の「天才!!ヒマつぶしドリル」が好調だ。パズル形式の問題やゆるキャラの起用で、ドリルの裾野を広げて新規層にアプローチ。学校のテストや受験勉強には直結しない内容ながら、親からの支持を獲得したのはなぜか。

2022年4月21日に発売された。「算数と国語の力がつく 天才!!ヒマつぶしドリル ちょっとやさしめ・ふつう」の2冊
2022年4月21日に発売された。「算数と国語の力がつく 天才!!ヒマつぶしドリル ちょっとやさしめ・ふつう」の2冊

ドリルなのに中身は児童書のよう

 20種類以上いる脱力系のキャラクターに、色とりどりに塗られた紙面、手書き感のあるフォント。「天才!!ヒマつぶしドリル」は、ページをめくると児童書のようだ。しかも問題は「ドミノ筆算」「3D白黒めいろ」「ことわざめいろ」などユニークなものが並び、公式やメソッドを使用せずに解けるものが大半。極めつきは科目にすらこだわっていないところだ。紙面では算数と国語の問題が交互にちりばめられ、タイトルには「ヒマつぶし」と、ドリルらしからぬ文言が添えられている。

キャラクターはイラストレーターの伊豆見香苗氏が担当。子供に親近感を持ってもらえるように脱力感を意識した。またキャラには「あと少しだよ」「頑張ろう」と言った、従来のドリルで見られるような親や教育者側からの目線でのコメントは避けた
キャラクターはイラストレーターの伊豆見香苗氏が担当。子供に親近感を持ってもらえるように脱力感を意識した。またキャラには「あと少しだよ」「頑張ろう」と言った、従来のドリルで見られるような親や教育者側からの目線でのコメントは避けた
ドリルの問題は迷路のようなパズル形式のものが多数。試行錯誤しながら考えることで、論理的な思考力が鍛えられ、同時に語彙力や知識も身に付く
ドリルの問題は迷路のようなパズル形式のものが多数。試行錯誤しながら考えることで、論理的な思考力が鍛えられ、同時に語彙力や知識も身に付く
算数の論理的な考え方と、国語の語彙力や漢字の知識が、1つの問題で身に付くのが今までにないユニークなポイントだ
算数の論理的な考え方と、国語の語彙力や漢字の知識が、1つの問題で身に付くのが今までにないユニークなポイントだ

 一般的な参考書とは似つかないこのドリルが、業界で異例のヒットを続けている。1万部で上出来といわれる参考書のジャンルで、2022年4月21日の発売から約3カ月で5万部超えを達成。夏休みシーズンも後押しし、着々と販売部数を伸ばしている。

 「ここまでゆるいコンセプトのドリルは市場でも珍しく、だからこそ本書が受けたのでは。今はYouTubeやゲームに時間を費やす子供が多い中、親はちょっとでも娯楽の時間を勉強や読書に充ててほしいと考えているはず。ただいわゆる一般的なドリルだと、子供の集中力も続かないし、1冊やりきれないことも多々ある。取っ付きやすいイラストや、パズル感覚の問題に触れながら、算数や国語の力をつけてほしいと考えた」

 コンセプトをそう語るのは、本書の仕掛け人である学研プラス 小中学生事業部 シニアプロデューサーの宮崎純氏だ。現在は100円ショップでもドリルが売られ、アプリやタブレットなどデジタル上も学習コンテンツであふれている。宮崎氏は差別化を図るため、紙ならではの見やすさや書き込みやすさといったアイテム感と、親しみやすいイラストやユニークな問題を採用した。

学研プラス 小中学生事業部 シニアプロデューサーの宮崎純氏
学研プラス 小中学生事業部 シニアプロデューサーの宮崎純氏

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