出版から約3カ月で5万部超ーー。1万部でヒットといわれるドリル業界で、学研の「天才!!ヒマつぶしドリル」が好調だ。パズル形式の問題やゆるキャラの起用で、ドリルの裾野を広げて新規層にアプローチ。学校のテストや受験勉強には直結しない内容ながら、親からの支持を獲得したのはなぜか。
ドリルなのに中身は児童書のよう
20種類以上いる脱力系のキャラクターに、色とりどりに塗られた紙面、手書き感のあるフォント。「天才!!ヒマつぶしドリル」は、ページをめくると児童書のようだ。しかも問題は「ドミノ筆算」「3D白黒めいろ」「ことわざめいろ」などユニークなものが並び、公式やメソッドを使用せずに解けるものが大半。極めつきは科目にすらこだわっていないところだ。紙面では算数と国語の問題が交互にちりばめられ、タイトルには「ヒマつぶし」と、ドリルらしからぬ文言が添えられている。
一般的な参考書とは似つかないこのドリルが、業界で異例のヒットを続けている。1万部で上出来といわれる参考書のジャンルで、2022年4月21日の発売から約3カ月で5万部超えを達成。夏休みシーズンも後押しし、着々と販売部数を伸ばしている。
「ここまでゆるいコンセプトのドリルは市場でも珍しく、だからこそ本書が受けたのでは。今はYouTubeやゲームに時間を費やす子供が多い中、親はちょっとでも娯楽の時間を勉強や読書に充ててほしいと考えているはず。ただいわゆる一般的なドリルだと、子供の集中力も続かないし、1冊やりきれないことも多々ある。取っ付きやすいイラストや、パズル感覚の問題に触れながら、算数や国語の力をつけてほしいと考えた」
コンセプトをそう語るのは、本書の仕掛け人である学研プラス 小中学生事業部 シニアプロデューサーの宮崎純氏だ。現在は100円ショップでもドリルが売られ、アプリやタブレットなどデジタル上も学習コンテンツであふれている。宮崎氏は差別化を図るため、紙ならではの見やすさや書き込みやすさといったアイテム感と、親しみやすいイラストやユニークな問題を採用した。
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