美容家電を手掛けるヤーマンは、男性用の電動(電気)シェーバー「HOT SHAVE(ホットシェイブ)」を発売。物を温める性質がある「ラジオ波」という電磁波を使い、肌を温めながらひげをそれるようにしたという。これまで主要顧客としていた女性だけでなく、美容意識の高い男性の需要を開拓する。

ヤーマン初の電動(電気)シェーバー「HOT SHAVE(ホットシェイブ)」。販売価格は4万4000円(税込み)
ヤーマン初の電動(電気)シェーバー「HOT SHAVE(ホットシェイブ)」。販売価格は4万4000円(税込み)
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既存電動シェーバーと異なる市場形成

 美容家電を手掛けるヤーマンが2022年6月7日に「HOT SHAVE(ホットシェイブ)」を発売し、電動(電気)シェーバー市場に参入した。販売価格は4万4000円(税込み)。HOT SHAVEの特徴はRF(ラジオ波)を使用し、ひげと肌を温めながらシェービングができる、日本初(※1)の温ぞりシェーバーであること。美顔器テクノロジーを取り入れたシェーバーとして、既存の電動シェーバー市場とは異なる新市場を切り開く狙いがある。

 現在は公式オンラインショップなどEC(電子商取引)サイトをメインに販売しており、22年秋から実店舗での取り扱いを拡大していく予定だ。発売から2カ月で着実に認知を高めており、「新感覚のコンセプトと実際の使用感に多くの法人から期待が寄せられ、取り扱い希望をいただいている。予定よりも展開店舗数は増えそうだ」(同社ブランド戦略本部の⼾⽥正太本部⻑)と言う。

※注1:日本マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:2022年4月期_日本初であることの証明・検証調査

肌を温めてそる「温ぞり」を新習慣化

 同社は美容機器メーカーとして様々な商品を開発。美顔器はもちろん、自社でスキンケアブランドも展開している。近年は1回10分のハンズフリーのウエアラブルEMS美顔器「メディリフト」シリーズ、髪を乾かしながらリフトケアもかなえる美顔器機能を搭載した「リフトドライヤー」、美顔器と連携して美顔器体験を提供するアプリ「YA-MAN App(ヤーマンアプリ)」 など、続々と新製品を発売。特に4年前に発売したメディリフトは、これまでになかった美顔器として消費者に受け入れられ、「マスク型美顔器という新しい市場の形成につながった」(⼾⽥本部⻑)。

 また、新製品の積極的な展開により今まで美顔器を使っていなかった人たちにも美顔器のある生活を広げ、「4年連続で美顔器シェアNo.1(※2)という実績が出せた」と⼾⽥本部⻑は胸を張る。

 元来、「美顔器は女性のもの」というイメージが強い中、ここ数年は男性も美顔器、特にひげやVIO(陰部の脱毛の通称。V=恥骨周辺、I=股の内側、O=肛門まわり)ケアのための光美容器や、顔のもたつきを抑える美顔器の需要が増えている。その背景には身だしなみとして整えたいという、男性の美容意識の高まりがある。

 そうした追い風を受け投入した今回のHOT SHAVEは、肌ケアとムダ毛ケアの両方の知見を生かした「肌を温めてそる『温ぞり』という全く新しい第三のシェーバー」(⼾⽥本部⻑)という位置づけだ。

 戸田本部長によれば、「ひげ関連商品は過去にあるが、男性のシェーバーは当社初。メンズエステが伸びる中、一番親しみがある商材はメンズシェーバーだが、技術革新がほとんどない。身だしなみや清潔感を求めていかに深くそるか、あるいは肌への負担軽減を考えていかに優しくそれるか、いずれかを追求するにとどまっていた。そこに美容テクノロジーを取り入れたら、全く新しい発想の習慣がつくれるのではないか」と考えての参入だ。もちろん、シェーバーの市場規模が大きいことも判断材料の1つとなった。

HOT SHAVEは「肌を温めてそる『温ぞり』という全く新しい第三のシェーバー」だと言う
HOT SHAVEは「肌を温めてそる『温ぞり』という全く新しい第三のシェーバー」だと言う
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※注2:富士経済「美容家電&健康家電マーケティングトレンドデータ2020」(2018~2019年実績)、「“おうち美容”で注目度の高まる美顔器・美顔ケア家電トレンドデータ」(2020~2021年実績)

温ぞり、回転式、風呂ぞりにこだわり

 HOT SHAVEの開発ポイントは「温ぞり」技術、「回転式」の刃、「風呂ぞり」に向けた防水性の3つ。

 温ぞり技術ではラジオ波を利用した。「美顔器によく搭載されるラジオ波は、電子レンジなどと同じ加熱原理で、肌ではなく水分に反応する。エステでは美肌やエイジングケア効果が期待される技術で、これを電動シェーバーに応用することで、肌が水分を吸収しやすく軟らかい状態になり、シェーバーの刃に吸い付くように密着する。その結果、根元からのひげのカットが可能になる。ひげも温まり、水分を吸収して軟らかくなるため、カットの力は最小限になる」(開発本部 開発設計三部の前田一憲氏)。潤いやハリを引き出せるという、エステケアの役割も果たす。

 回転式の刃を採用したのは、「ラジオ波の電極をシェーバーに応用しているが、この電極に適していたのがリング状の回転式シェービング刃だった」(前田氏)ため。滑らかに肌にフィットする6軸稼働の高密着ヘッドによって、「ラジオ波の熱をまんべんなく肌に届けられる」(前田氏)。また「ひげが生える方向はバラバラだが、360度あらゆる角度からそれるため、肌にかかる余計なストレスを最小限できる」(前田氏)と言う。

 風呂ぞりができるようにと、防水仕様にもこだわった。「風呂ぞりのメリットは温度や湿度がある中では肌やひげが水分を含みやすくなり、よりひげがそりやすくなる点。しかも水分に触れて温まるラジオ波の性質も生かせるため、温ぞりという新しいシェーバーの可能性を感じてもらいやすい」(前田氏)。

風呂ぞりなら毎日の習慣化がしやすいと考え、防水仕様にこだわった
風呂ぞりなら毎日の習慣化がしやすいと考え、防水仕様にこだわった
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ひげそりでエステケアかなえ市場拡大

 市場調査リポートの販売を手掛けるグローバルインフォメーションによれば、グローバルでの電気シェーバーの市場規模は約3%のCAGR(年平均成長率)で拡大する見通しで、21年から25年の間に21億8000万ドル(約2940億円)に達すると予測されている。成長要因としては、男性のグルーミングへの関心の高まりと、インドや中国など新興国における大規模な新顧客層が挙げられている。また日本電機工業会(JEMA)によると、21年度の電気シェーバーの国内出荷額は455億9000万円で、前年度比4.9%増と成長傾向にある。

 男性向けの美容家電商品はさらに成長が見込まれている。富士経済(東京・中央)によれば、体毛処理トリマーや頭皮をマッサージする電動ブラシなどが好調で、中国や北米、欧州での巣ごもり需要により、毛穴ケアのスチーマーといったスタンダードな製品が受け入れられたという。

 戸田本部長は「『そる』だけの電動シェーバーでは市場の急拡大は考えられないが、『そる』習慣にエステ機能を付けることで、エステサロンには通えなくてもケアはしたいという客層を獲得でき、市場拡大につながると考えた」と話す。

エステサロンに通うのはハードルが高いと感じる男性も、ひげそり時のエステケアには関心があると考え開発した
エステサロンに通うのはハードルが高いと感じる男性も、ひげそり時のエステケアには関心があると考え開発した
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ついで美顔で需要促進

 電動シェーバーにしても美容機器にしても、新型コロナウイルス禍でタッチ&トライができない状況では、購入につながりにくい可能性がある。この点に関しては「行動制限がどうなるかを予測していたわけではなく、今後も流動的に捉えているが、タッチ&トライがすべてとは考えていない」と戸田本部長。「そもそも男性美容機器はまだまだ新しいジャンルであり、『男性の美顔器を開発した』と商品を提示しても、浸透しづらいだろうと考えた。だからこそ、今ある習慣、ひげそりに美顔機能を搭載した」(戸田本部長)。

 また「ついで美顔」の需要の高さも指摘する。ヤーマンとしては美顔器を広めていきたいが、美容への意識が高いとされる女性でも、美顔器を使うことを面倒だと感じる人は少なくない。こうした中、同社ではリフトドライヤーなどの「ついで美顔」商品を開発し、支持されてきている。HOT SHAVEでも同様で、「ひげそり用の刃と美顔器用のヘッドが別では、付け外しが面倒。だから美顔器テクノロジーを刃とワンセットにしてほしいと、開発チームにオーダーし続けた」(戸田本部長)。

 メンズ電気シェーバーはプレーヤーが多く、海外メーカーも強いが、主な顧客層をどう考えているのか。

 「全世代に訴求していきたいが、最初は美容感度の高い若い人を中心にマーケティング戦略を進めたいと考えている。その上で、深ぞりか優しいそり味かという選択肢ではなく、両方プラスエステという新習慣を提案できる、第三のカテゴリーをつくりたい」と、戸田本部長は新市場形成に意欲を見せる。

 他社の追随について⼾⽥本部⻑はメディリフトを例に挙げ、「数年後に同様の製品が出てくる可能性は考えているが、そのときにはヤーマンが『次』に進んでいると思う。ある意味、新市場をつくる、つまり市場がなければつくっていくのがヤーマンのカルチャー」とした。

今は他社にHOT SHAVE同様の製品はないと言う
今は他社にHOT SHAVE同様の製品はないと言う
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ライブコマースなどライブ配信活用

 具体的な目標販売数は明言しなかったが、まずは認知度を上げ、電気シェーバー市場における競合他社との違いを明確に感じてもらうことに加え、継続的使用につながるアピールをしていきたいという。このため、顧客とのコミュニケーションを重視している。

 「店舗で体験してもらい、販売スタッフが説明をするだけでなく、直接ライブコマース、インスタライブなどで発信しながら、周知していく。特にライブについては、当社では新型コロナの感染拡大で1度目の緊急事態宣言が出た数カ月後から着手し、美顔器、化粧品などあらゆる商品を扱ってきている。意識しているのは、できるだけお客様に直接、声を届けること。HOT SHAVEも、家電量販店で大規模展開するというよりは、丁寧なコミュニケーションでお客様の理解を得ていくことが大事と考えている」(⼾⽥本部⻑)

 発売直後の22年6月8日~21日には「伊勢丹新宿店 メンズ館1階 コスメティクス」で、「<YA-MAN/ヤーマン>プロモーション」を、翌7月20日~31日までは二子玉川の蔦屋(つたや)家電でタッチ&トライイベントを開催した。「伊勢丹新宿店 メンズ館は美容に関心が高く、所有するものにこだわりがある層が集まる。一方、蔦屋家電は20~50代の美容に限らず、新しいものに関心の高い層とのタッチポイントとなり得る。秋の本格展開に向けて、どんな人が手に取ってくださるか試していく時期と捉え、展開している」(戸田本部長)とし、8月にはb8ta Koshigaya Laketownでもタッチ&トライイベントを開催する予定だ。

 CMキャラクターには俳優の柳楽優弥さんを起用した。現在はデジタル配信のみだが、同世代だけでなく幅広い世代から反響を得ているとのこと。温ぞりというコンセプトが「バーバーでのシェービングのように理にかなっている、あるいは早く試したいなど、製品コンセプトとロジックに興味を持ってもらえている」(戸田本部長)と手応えを感じている。

CMには俳優の柳楽優弥を起用
CMには俳優の柳楽優弥を起用
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(画像提供/ヤーマン)