監査法人やコンサルティング会社などを傘下に持つデロイトトーマツグループは2022年8月1日、日本およびグローバルにおけるZ世代、ミレニアル世代の意識調査の結果を発表した。調査からは、旧世代とは異なるZ・ミレニアル世代の就業観が見えてきた。

調査から見えてきたZ・ミレニアル世代の就業観とは?(画像提供/Shutterstock.com)
調査から見えてきたZ世代、ミレニアル世代の就業観とは?(画像提供/Shutterstock.com)

コロナ禍で離職意向を強めるZ世代

 2年以内に離職しようと考えているZ世代が、新型コロナウイルス感染症拡大前と比べて増加していることが、デロイトトーマツグループの調査から分かった。同グループが発表した「Z・ミレニアル世代年次調査2022」によれば、2年以内に離職したいと考えているZ世代は、2020年の29%から11ポイント増となる40%。グローバルを含めたZ・ミレニアル世代全体での離職意向が低下しているなか、日本のZ世代の離職意向だけが反動的に上昇している形だ。

 Z・ミレニアル世代年次調査2022は、世界各国のZ・ミレニアル世代2万3220人(うち日本801人)を対象に、2021年11月から2022年1月にかけて実施したインターネット調査の結果をまとめたもの。調査対象のうちZ世代は1万4808人(うち日本501人)、ミレニアル世代は8412人(うち日本300人)となっている。なお同調査では1995~2003年生まれをZ世代、1983~1994年生まれをミレニアル世代と定義している。

●勤務先企業の2年以内離職意向
●勤務先企業の2年以内離職意向
2年以内離職意向は、日本のZ世代だけが上昇している

 離職・勤続意向の要因は「2年以内離職意向群」と「5年以上勤続意向群」の「職場満足度」を比較すると分かる。日本のZ世代では「従業員ファースト」「サステナビリティー」「上長の指導・成長機会」への満足度で、2年以内離職意向群と5年以上勤続意向群に大きな乖離(かいり)が見られた。これらの項目に対する満足度が離職・勤続の判断ポイントとなっているようだ。

●2年以内離職意向群・5年以上勤続意向群の職場満足度(日本)
●2年以内離職意向群・5年以上勤続意向群の職場満足度(日本)
「2年以内離職意向群」と「5年以上勤続意向群」には「従業員ファースト」などの項目で満足度に大きな差が出た

 また、グローバルおよび日本のZ・ミレニアル世代で、組織の変革推進への関与を実感している従業員は長期勤続意向が強いことも分かった。2年以内離職意向群と5年以上勤続意向群を「変革推進への関与実感」で比較すると、全体では2年以内離職意向群では「実感なし」が「実感あり」を上回り、5年以上勤続意向群では逆の結果に。特にZ世代はグローバル・日本ともに変革推進への関与を実感している人が少なく、「実感なし」はグローバルで52%、日本では57%に上る。

●変革推進への関与実感
●変革推進への関与実感と帰属意識
組織の変革推進への関与実感は帰属意識に大きく影響する

 気になるのは、グローバルに比べて日本のZ・ミレニアル世代が変革推進に対して無力感を覚えていることだ。「自分には組織の中で変化を推進する力があると思いますか?」との問いに「あると思う」と答えた日本のZ世代は22%、ミレニアル世代は34%。グローバルでは両世代とも52%となっており、日本はグローバルを20~30ポイントも下回っている。デロイトトーマツグループは、関与実感の有無は離職・勤続を左右し得る要因だと指摘する。

●変革推進への認識
●変革推進への認識
日本では、組織を変革推進できると考えるZ・ミレニアル世代は少ない

リモートワークは離職意向を強くする?

 この数年はリモートワークを導入する企業が急増しているが、基本的に出社しない「100%リモート」での就業を希望しているZ・ミレニアル世代はグローバル・日本ともに10%台の前半。オフィスワーク(出社)とリモートワークを併用する「ハイブリッドワーク」については、グローバルで62~63%、日本では約半数が支持している。

 グローバルのZ世代ではオフィスワークよりもハイブリッドワーク、ハイブリッドワークよりも100%リモートと、働き方の自由度が上がるほどの2年以内離職意向の比率が下がる。一方で、日本のZ世代に関しては100%リモートのほうが、ハイブリッドワークよりも離職意向の比率が高いことも分かった。

●勤務形態別:2年以内離職意向(Z世代)
●勤務形態別:2年以内離職意向(Z世代)
日本のZ世代だけは100%リモートの離職意向が強い

 なぜ、100%リモートで就業する日本のZ世代は離職意向が強いのか。それについては「新入社員のハイブリッド・100%リモートワークへの適応を懸念するビジネスリーダーの割合」の調査結果がヒントになりそうだ。同調査によれば、ハイブリッドおよび100%リモートワークに適応するに当たって新入社員が十分なサポートを得られていないことを懸念するビジネスリーダーの割合が、グローバル平均62%に対し、日本は50%を割り込んでいる。

 これは、100%リモートワークで就業している新入社員に対して、過半数のビジネスリーダーが十分なサポートをしていないということでもある。新入社員の場合、コロナ禍以前のオフィスワークで人間関係が築けていないのは想像に難くない。それが会社への帰属意識の低さ、離職意向につながっている可能性はあるだろう。

●新入社員のハイブリッド・リモートワークへの適応を懸念するビジネスリーダーの割合
●新入社員のハイブリッド・リモートワークへの適応を懸念するビジネスリーダーの割合

 今回の調査では、Z・ミレニアル世代が企業への帰属意識に特有の考え方を持っていることが浮き彫りになった。Z・ミレニアル世代に対しては、彼らが支持するハイブリッドワークを提供しつつ、帰属意識に留意することが従業員の離職意向の改善につながると言えそうだ。

(写真提供/デロイトトーマツグループ)

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