フランス人による日本のポップカルチャーと文化の祭典「Japan Expo(ジャパンエキスポ)」が3年ぶりに開かれた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により2019年の7月以来、2年間、2会期が見送られ、多くのファンが待望した再開だ。場所は変わらずパリ郊外ヴィルパントの広大な見本市会場。動員数は19年は25万人を集めたが、22年も大盛況。正確な数字はまだ発表されていないが、最高クラスの動員数だったことは確かだとジャパンエキスポのプレスからメッセージが届いている。その証拠に2日目の7月15日には、展示面積24万6312平方メートルの広大な会場の収容人数に達してしまったそうだ。
スタートは22年7月14日、パリでは花火も上がるパリ祭(フランス革命記念日)の祝日。既にフランスでは子供や学生たちが夏休みに入っているが、14日は木曜日で、フランスでは木曜日が祝日に当たると金曜も休みにし4日連休にする習慣があるため、仕事を持つ人々も今年は木曜日から日曜日まで丸々4日間ジャパンエキスポを楽しめた。
オープン時間の午前9時ごろには、入り口に200人は下らないだろう人々が入場を待って並ぶ。コスプレ姿の人々、頭のてっぺんから足の爪先まで(仮面も被り)手作りの衣装をつけた人々、浴衣や法被を着た人々……が、30度を超す真夏日にもかかわらず会場にはあふれる。そして午後6時に閉館で会場を出た後も人々は駅へと続くコンコースや庭で、独自のコンサートを続けたり、芝生に座り込んで久しぶりに再会したファン同士でおしゃべりを続けたりする。彼らの中には、数年前からネットでコミュニティーを作り、ジャパンエキスポで年に1回リアルな再会を繰り返してきた若者たちも多く、新しいコスプレに身を包んでの3年ぶりの再会に話は尽きない。相変わらず英国、ベルギー、スペインなどの近隣国から来る人も多い。数年前から親子連れの姿も多く見られる。2世代にわたってのマンガやアニメファンが増えているのだ。
「再開に当たって今までと違うこと、新しいことはしていません。今回はジャパンエキスポのルネサンス(復活)です」と語るのはジャパンエキスポの代表トマ・シルデ氏。「ただロゴを新しくしたのですよ」。以前は赤と黄で光り輝く太陽だったが、新しいロゴは富士山を真ん中に据え、フランス人がここ数年好んで使う言葉「ZEN(=静寂な心)」を感じさせるものになった。
今年も相変わらず圧倒的な人気、いや例年以上だったのは、マンガ、アニメ関連、eスポーツのコーナーだ。「コロナ禍の中でアニメは非常に多くの人に観られ、今まではアニメに興味のなかった人たちをもファンにしました。外出することができず何もすることのない毎日、全世代が色々なアニメを楽しんだのです。マンガの売り上げも上がっています」とシルデ氏。ビデオゲームに至っては言わずもがなだろう。その影響が表れている。
しかしジャパンエキスポの企画運営会社は、コロナ禍の中での2開催の見送りでとても厳しい状況にあった。「会社を保つために小さな出版社をつくったりもしました。Isan mangaという名で“遺産“からとりました。扱うのは手塚治虫、いがらしゆみこ、石ノ森章太郎、永井豪などです」。巨匠ばかりである。ただ「高い人気を保ち続けるポケモンやワンピースに比べたら、売り上げはなかなか厳しく大変でした」(シルデ氏)
会場内では、おにぎり、カレー、唐揚げ、ギョーザ、たこ焼き、たい焼きなどの日本食スタンドもある。日本の3倍ほどの値段だが長い列ができる。おにぎりは日本人が握っているが、他の日本食スタンドは日本人が作っていなかったり、日本人がオーナーでなかったりするものも多い。それは特にこの世情だからというわけでもない。食べ物のみならずどこで作られたのかわからない“日本のものらしきもの”の売店も多い。その風景は日本というよりアジア。日本語とは少し違う日本語らしき文字の羅列もしばしば見られる。外国製の日本がここにはたくさん存在している。それは実際のところ日本での米国やフランスと同じだ。
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