パナソニックグループは2021年から、独自の「デザイン経営」を推進していることを明らかにした。「デザイン経営実践プロジェクト」と呼んでおり、地球や社会、生活者といった視点で30年ごろに向けた新たな価値を議論し、そこから逆算して現状との差異を分析しながら今後の活動などを考えるという方式。すでに一部の事業部門で試行が始まっており、22年4月の組織体制の変更を機に、今後はグループ内各部門に拡大していく。

パナソニック ホールディングス執行役員デザイン担当の臼井重雄氏(写真提供/パナソニック)
パナソニック ホールディングス執行役員デザイン担当の臼井重雄氏(写真提供/パナソニック)

 一般にデザイン経営とは、デザインの考え方やデザイナーの発想法などを経営に取り入れる新たな経営手法を指す。色や形といった狭義のデザインというより、さまざまな課題を解決するなど広義のデザインを活用することで、イノベーションやブランディングに役立つとされている。従来の延長線上にあるやり方ではなく、思考に柔軟性を持たせて新たな成長戦略に結び付けることが狙いだ。このためデザイナーを経営幹部に登用したり、デザイン思考を全社員に学ばせたりする企業の例もある。

 デザイン経営の進め方は企業によってさまざまだが、パナソニックグループの場合はデザインチームがファシリテーターとなって事業部門ごとに未来のビジョンを構想し、現状を踏まえて、今後のあるべき姿への長期戦略を描く。デザイン思考も取り入れ、新たな課題の発掘につなげる。各事業部門長がリーダーとなって推進していくという。

 「未来を起点とし、人間中心のサイクルを回し続けることで、実現したい未来に向けて、事業の本質的な競争力を強化していく」(パナソニック ホールディングス執行役員デザイン担当の臼井重雄氏)

現在の事業・商品軸の抱える課題を示す。既存の事業や商品の延長線上で考える未来ではなく、地球や社会、生活者視点の新たな発想が求められる(画像提供/パナソニック)
現在の事業・商品軸の抱える課題を示す。既存の事業や商品の延長線上で考える未来ではなく、地球や社会、生活者視点の新たな発想が求められる(画像提供/パナソニック)

 未来のビジョンを構想して、そこを起点にするというパナソニックグループの手法は、スペキュラティブデザインやビジョンデザイン、バックキャスト思考などと呼ばれる手法に近い。一部企業でも実行しているが、まだ部門単位の狭い範囲にとどまっており、パナソニックグループのように全社的に推進しようとする事例は珍しい。

未来構想への評価視点を設ける

未来構想の実践プロセス。Step1~4まである(画像提供/パナソニック)
未来構想の実践プロセス。Step1~4まである(画像提供/パナソニック)

 具体的な流れはこうなる。「Step1」として、未来を構想するために、社会や文化、環境といった分野において一定の確度で予測される未来情報をつかむ。そして現状から視座を広げ、空想に近い状態でさまざまな状況を考えて実現したい未来を構想する。そうしたうえで「Step2」として各事業部門の目的や意義を再定義する。「Step3」で具体的な実現手段を考え、「Step4」で実現したい未来を決め、絞り込む。

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