有機野菜やミールキットのサブスクリプションサービス事業を手がけるオイシックス・ラ・大地は、6月の「環境月間」に合わせて新施策を発表した。併せて食品宅配サービス「Oisix」内の、「Oisixサステナブルマーケット」で扱う未利用食材を活用した「Kit Oisix」や、アップサイクル食品ブランド「Upcycle by Oisix」、規格外品を活用する「ふぞろい Radish」など、サステナブルプロダクトの新商品の発表や試食も実施。サステナブルな社会実現に向けた取り組みも進行中で、代替魚の開発や採用にも積極的だ。

見た目は普通のマグロにだいぶ近い印象の、植物性マグロ。米国のスタートアップ企業Impact Food Inc.が開発した
見た目は普通のマグロにだいぶ近い印象の、植物性マグロ。米国のスタートアップ企業Impact Food Inc.が開発した

サバの端材をアップサイクルで商品化

 オイシックス・ラ・大地は長期戦略として、ビジネスモデルとテクノロジーの力で地球にも人にも良い食を提供する「サステナブルリテール(持続可能型小売業)」を掲げ、フードロス削減に寄与する商品の開発に注力している。約1年前にはアップサイクル商品(これまで捨てられていたものに付加価値を付け、アップグレードした商品)を開発・販売するフードロス解決型ブランド「Upcycle by Oisix」を開始。発売した各商品は入荷後即売り切れとなるほどの人気で、同社執行役員グリーンプロジェクト責任者の東海林園子氏によれば「Upcycle by Oisix」や他施策含め、「1年間で約310トンの畑のフードロス削減に寄与している」と言う。

 2022年4月には、規格外品や未利用食材を積極的にメニューへ取り入れたミールキット「Kit Oisix」などを取り扱う「Oisixサステナブルマーケット」も開始した。ふぞろい・アップサイクル商品である「ふぞろいキャロットのプチボール」376円(税込み、以下同)や「バナナの皮ジャム入りクリームどらやき」289円、プラントベース(植物性食品)の「NEXTツナ」421円、未利用食材を生かした「Kit Oisix サメ肉竜田揚げ 生姜(しょうが)入り出汁仕立て」1717円など、新たに発売した商品を含め34品でスタート。1年後には100品程度まで拡大する予定だという。

 「『サメ肉竜田揚げ 生姜入り出汁仕立て』は、今までサメを食べたことがない方にも、骨がなく食べやすいと好評。すぐに完売してしまい、再発売を希望する声が非常に多いため再販を計画している」(オイシックス・ラ・大地Oisix EC事業本部サブスクリプション進化室 神田聡美氏)。Upcycle by Oisix同様、これまで捨てられていた食材を人気商品に生まれ変わらせることに成功している。

「サメ肉竜田揚げ 生姜入り出汁仕立て」は、ヒレ肉やカジキマグロのようなしっかりした食感
「サメ肉竜田揚げ 生姜入り出汁仕立て」は、ヒレ肉やカジキマグロのようなしっかりした食感

 こうした中、22年6月16日に発売されたのがディズニーシリーズのミールキット「Kit Oisix<アリエル>冷製トマトパスタ」だ。切り身を作る工程で出た、サバの端材(はざい)「さばっぱ」を活用しているのが特徴。ディズニーシリーズのKit Oisixは親子で料理することを前提にしており、食育の面でも役割を果たせそうだ。

「Kit Oisix<アリエル>冷製トマトパスタ」2人前2041円、3人前2840円。アリエルの髪をイメージした赤いトマトソースと、切り身を作る工程で出たサバの端材「さばっぱ」を組み合わせた海中の世界を表現した冷製パスタ。さばっぱは通常のサバの身よりも食感が軟らかくふんわりした食感で、クセも少ない。味は甘めのトマト味
「Kit Oisix<アリエル>冷製トマトパスタ」2人前2041円、3人前2840円。アリエルの髪をイメージした赤いトマトソースと、切り身を作る工程で出たサバの端材「さばっぱ」を組み合わせた海中の世界を表現した冷製パスタ。さばっぱは通常のサバの身よりも食感が軟らかくふんわりした食感で、クセも少ない。味は甘めのトマト味
「Kit Oisix<アリエル>冷製トマトパスタ」を持つオイシックス・ラ・大地 執行役員 グリーンプロジェクト責任者の東海林園子氏(写真左)と、「サメ肉竜田揚げ 生姜入り出汁仕立て」を持つオイシックス・ラ・大地Oisix EC事業本部サブスクリプション進化室の神田聡美氏(同右)
「Kit Oisix<アリエル>冷製トマトパスタ」を持つオイシックス・ラ・大地 執行役員 グリーンプロジェクト責任者の東海林園子氏(写真左)と、「サメ肉竜田揚げ 生姜入り出汁仕立て」を持つオイシックス・ラ・大地Oisix EC事業本部サブスクリプション進化室の神田聡美氏(同右)

「植物性マグロ」、本格実現はまだ

 フードロス解消は、こうしたアップサイクル商品などのみに頼るわけではない。世界的に魚介類の消費量は増加傾向にあり、FAO(国連食糧農業機関)によると、1人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約2倍に増加(※1)。その理由として挙げられているのが、輸送技術の発達や都市人口の増加、健康志向の高まりなど。特に経済発展が進む新興国や発展途上国での、食生活の変化による影響が大きいと見られている。

 こうした中、実効的な施策として養殖のDX(デジタルトランスフォーメーション)化と、プラントベースの魚介代替食品の開発が進んでおり、オイシックス・ラ・大地も参入、採用に積極的だ。

 同社が今回試食を行ったのが、米国のスタートアップ企業Impact Food Inc.(カリフォルニア州)が開発した植物性マグロだ。詳しい情報は公開されていないが、豆類をベースに野菜ジュース、香料などを加えているという。またオイシックス・ラ・大地は22年3月1日に投資子会社であるFuture Food Fundを通じて、Impact Food Inc.への新規投資を発表している。

※1:「漁業・養殖業の国内生産の動向」(水産庁)
米国のスタートアップ企業Impact Food Inc.が開発した植物性マグロ。うまみはマグロにかなり近づけているが、食感は硬めで、グミに近い
米国のスタートアップ企業Impact Food Inc.が開発した植物性マグロ。うまみはマグロにかなり近づけているが、食感は硬めで、グミに近い

「植物性ツナ」から代替魚が本格化

 本物のマグロに近い植物性マグロよりも一足早く広まりそうなのが、「植物性ツナ」だ。

 「焼肉ライク」など多くの外食店に植物性焼き肉を提供しているネクストミーツ(東京・新宿)は、大豆を主原料とするツナ代替食品「NEXTツナ1.0」を開発。世界最大手のツナ缶企業タイ・ユニオンは食品メーカーなどに提供する代替シーフードのOEMを手掛けているが、21年には「OMGミート」ブランドを立ち上げ、オリジナル商品の販売を開始している。

ネクストミーツが販売している植物性原料100%の「NEXTツナ1.0」5缶セット1950円。味は言われなければ本物のツナと違いが分からないレベル
ネクストミーツが販売している植物性原料100%の「NEXTツナ1.0」5缶セット1950円。味は言われなければ本物のツナと違いが分からないレベル

 日本では輸入・卸売会社のアリサン(埼玉県日高市)が、独自の大豆ブレンドでツナの味や食感を忠実に再現したという「OMNIツナ(オムニツナ)」を22年6月4日に発売。この商品はカナダに研究開発チームを持つフードテック企業OmniFoodsが開発したもので、アリサンが輸入し販売している。

2022年6月4日に発売された「OMNIツナ(100グラム)」(350円)(画像提供/アリサン)
2022年6月4日に発売された「OMNIツナ(100グラム)」350円(画像提供/アリサン)

 オイシックス・ラ・大地によれば、米国の人口の3分の2は代替肉を食べたことがあり、そのうち22%の人が毎日食べていると回答。肉だけでなくプラントベースのシーフード商品も売り上げを伸ばしており、21年から31年の期間に28%の市場成長が予測されているという。

 タイ・ユニオンだけでなく、米国に本部を置く世界最大手の食品企業タイソン・フーズも19年にプラントベースエビのスタートアップに投資しているが、スタートアップの参入も盛んだ。Good Food Instituteの調査では、代替シーフードのスタートアップ企業の件数は、17年時点では29社だったが、21年には87件と3倍に増加しているという。

 一方で、22年にマルコメが行った調査によれば、「大豆のお肉」を購入したことがあるという人は36.1%にとどまっている(※2)。10人に1人が毎日代替肉を食べているという米国とは大きな差があるが、それだけに今後、日本で代替シーフードが大きく注目される可能性も高い。

Impact Food Inc.が開発した植物性ツナのフリップを持つオイシックス・ラ・大地 経営企画部、Future Food Fundキャピタリストのジェニファー・ペレス氏(写真右)と、DXを活用した陸上養殖のエビをPRする関西電力 経営企画室 イノベーションラボ 山崎美緒氏(同左)
Impact Food Inc.が開発した植物性ツナのフリップを持つオイシックス・ラ・大地 経営企画部、Future Food Fundキャピタリストのジェニファー・ペレス氏(写真右)と、DXを活用した陸上養殖のエビをPRする関西電力 経営企画室 イノベーションラボ 山崎美緒氏(同左)
※2:マルコメ「未来の肉を考える大豆ミート調査報告」参照

世界で魚介の需要増でも国内漁業低迷

 農林水産省の推計では、50年の世界の食料需要量は10年比1.7倍にまで膨らむと予測され、深刻な食糧危機と、肉食の負荷による環境破壊が懸念されている(※3)。しかも国内の漁業・養殖業生産量は、1984年をピーク(1282万トン)に、95年ごろにかけて急速に減少(※4)。その後も減少傾向が続き、2019年の漁業・養殖業生産量は、前年から22万トン減の420万トン。同年の漁業・養殖業の生産額は、18年から733億円減の1兆4918億円となっている(※5)

 すでに実効性の高い解決方法として植物性の代替肉製品は急成長を遂げているが、魚に関してはまだ発展途上段階だ。サステナブルリテールを掲げるオイシックス・ラ・大地が、代替魚をどの段階で商品化していくのか、注目度が上がってきそうだ。

※3:「2050年における世界の食料需給見通しのポイント」(農林水産省)
※4:「漁業・養殖業の国内生産の動向」(水産庁)
※5:「令和2年度水産の動向 令和3年度水産施策 概要」の「第2章 我が国の水産物産業をめぐる動き」(水産庁)

(撮影/桑原恵美子)

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