楽天グループが2022年6月22日に「楽天グループ 2022夏トレンド予測」を発表した。同予測では「楽天市場」「楽天ブックス」「楽天トラベル」「Rakuten Music」「楽天ママ割」における流通額やユーザーの利用状況のデータをもとに、物販、旅行・レジャー、エンタメ、ファミリーの4つに分け、各3つのトレンドキーワードを選出。「復調消費」や「リベンジ旅行」などのほか、男の子の知育人形、女の子向けDIYトイといった「ジェンダーフリーキッズアイテム」商品の拡大も予測した。

「楽天グループ 2022夏トレンド予測」では4カテゴリーで各3つのキーワードが発表された
「楽天グループ 2022夏トレンド予測」では4カテゴリーで各3つのキーワードが発表された

 楽天グループでは現在、70以上のサービスと「楽天ポイント」を軸に、「楽天経済圏」を拡大しているという。全サービス利用者数における2サービス以上の利用者数(2022年3月末時点での過去12カ月間で、楽天ポイントが獲得可能なサービスの利用に限る)の割合は74.8%で、「楽天グループの複数サービスを利用するクロスユース率は堅調に拡大している」(楽天グループ 広報部の二村舞氏)という。

 発表されたトレンドキーワードは4カテゴリー、全12ワードだ。

トレンドキーワードとして4カテゴリー、全12ワードが発表された
トレンドキーワードとして4カテゴリー、全12ワードが発表された

復調、値上げ対策、防災の消費

 物販編のキーワードは「復調消費」「値上げ対策消費」「防災消費」だ。これらはEC(電子商取引)サイトである楽天市場、楽天ブックスの購買分析データをもとに、この夏の消費トレンドとして予想した。

 復調消費については「新型コロナウイルス感染症流行以来、3年ぶりに行動制限のない夏を迎えることで、外向き商品の需要が回復した」と楽天市場マーケティング部の本間萌氏。楽天市場では特に夏の旅行や外出関連商品の需要が急拡大しており、22年3~5月の流通額は前年同期比で水着が約1.6倍、浴衣が約1.3倍、浮輪が約1.6倍、旅行用バッグが約2.1倍になったという。「楽天市場のユーザーは30~40代女性が多く、洋服のように着ることができ、体形カバーや紫外線対策もできる服のような水着が伸びている」(本間氏)ほか、旅行バッグなどレジャーに直接関係するアイテムの売れ行きが拡大しているとした。

浴衣や水着の売り上げが伸びている
浴衣や水着の売り上げが伸びている

 また旅行やレジャーに限らず、外出増加に伴う紫外線や熱中症対策商品の売れ行きも好調。楽天市場では、ネッククーラーをはじめとした「冷却グッズ・暑さ対策用品」の22年3~5月の流通額が、前年同期比で約6.7倍になった。このほかUVカット効果をうたうファッションアイテムが売れ行きを伸ばし、コスメに関しても日焼け止めやUVケア、ヘアスタイリングなど、外出に関連した商材の需要が好調に推移しているという。

楽天市場マーケティング部の本間萌氏
楽天市場マーケティング部の本間萌氏

 値上げ対策消費としては、節約への意識の高まりがあり、食品ジャンルでは特に、比較的安価に購入できる「訳アリ」品の需要が拡大。「一時より価格高騰が落ち着いてきている。しかし好調状態は続いている」(本間氏)という。

 防災消費では、豪雨への懸念や、行政による大地震発生時の被害想定の見直しなどを受けて、楽天市場における「防災関連グッズ」「発電機・ポータブル電源」「携帯用浄水器」ジャンルが伸びている。22年3~5月の流通額は、いずれも前年同期比でプラスとなっており、「防災関連全般は約1.2倍、ポータブル電源は約1.6倍になった」と本間氏。

 注目は電力がひっ迫するといわれる暑い夏への備え。蓄電池や携帯用浄水器などの需要が高まっているという。なおかつ「コロナ禍でアウトドアアクティビティーの人気が高まり、防災時だけでなく、アウトドア用品として、さらにインテリアになじむランタンや、コンパクトにたためるアウトドアテーブル、椅子としても使える簡易トイレといった、普段使いもしやすい(使い道の広い)商品が人気となっている」(本間氏)。

 なお楽天市場における物価上昇の影響について、本間氏は円安の加速やロシアによるウクライナ侵攻、上海のロックダウンによる物価上昇の影響があることに言及。そんな中で、「大容量品や訳あり品の購入は、ECならではの賢い買い方」(本間氏)とした。

値上げ対策消費では「訳あり玉ねぎ」が人気になった。防災消費では発電機やポータブル電源など、夏の災害に備える商品が売れている
値上げ対策消費では「訳あり玉ねぎ」が人気になった。防災消費では発電機やポータブル電源など、夏の災害に備える商品が売れている

旅行に見えるリベンジ欲

 旅行・レジャー編は、楽天トラベルの宿泊予約状況などから、トレンドキーワードとして「リベンジ」「非日常」「宿満喫型ステイ」を選んだ。楽天トラベルは国内海外の宿泊予約、高級宿やリゾートの宿泊予約、国内・海外ツアー(航空券+宿)・海外航空券、高速バスやバスツアー、レンタカーなど幅広く取り扱う。

 楽天トラベルPR推進室の樋口詩織氏によると、夏の旅行予約は22年7月から8月の宿泊予約状況が大幅に伸び、同6月上旬の時点で前年同期比約1.7倍増に伸長。3人以上ならびに子連れのファミリーによる予約は、いずれも前年同期比約2.3倍で、グループ旅行の回復が目立つという。中でも20代の若年層による予約が最も多く、前年同期比約2倍、続いて60代以上のシニア層が約1.8倍だった(以上は22年5月31日から6月17日のいずれか1日に予約をした人を調査)。「コロナ禍で移動自粛や人との接触を控える期間が続いたことへのリベンジとして、旅行予約の大幅な回復と、グループ旅行の増加が進んだと考えている」(樋口氏)

 非日常というキーワードも、リベンジ同様にようやく「自宅から物理的な距離を旅行し、非日常を楽しんでいる」(樋口氏)ことが表れたもの。普段とは違う雰囲気を感じられる祭りを行うエリアや、過去に訪れたことがない旅先を選ぶのもポイントだという。

 宿満喫型ステイは、高級宿カテゴリーの予約が19年比で約1.3倍に伸長したことを受けたもの。宿泊プランでは夕食付きが選ばれる傾向にあるという。

楽天トラベルのPR推進室 樋口詩織氏
楽天トラベルのPR推進室 樋口詩織氏

エンタメは夏イベント後の伸長に期待

 エンタメ編では、定額制聴き放題の音楽アプリのRakuten Musicで配信する9000万曲、視聴できるアーティスト数約400万アーティスト(22年3月時点)の中から、上半期に再生回数や再生者数が伸びた、3組のネクストブレークアーティストを紹介した。

 19年結成の3人組のバンド「Chilli Beans.」は、22年4月リリース曲「マイボーイ」が深夜帯のドラマ「モトカレ←リトライ」の主題歌となり再生回数が伸長した。夏の大型フェスティバルにも出演予定だ。YouTuberとしての認知度が高い“歌い手”「めいちゃん」は、22年8月3日にニューアルバム『Humor』を発売予定で、同月13日には武道館ライブが決定。「BE:FIRST」はSKY-HI(日高光啓さん)率いるBMSG所属の7人組ダンス&ボーカルユニットで、22年3月リリースの「Bye-Good-Bye」が朝の情報番組内のドラマ主題歌になり、Rakuten Musicのウイークリーランキングで5週連続1位を獲得した。同年9月からは初の全国17都市25公演のホールツアーが決定している。

 いずれのアーティストも、今後のブレーク要因になるのは、イベントの開催制限が緩和され、「音楽フェスティバルやライブ、イベント、ツアーなど、ライブやコンサートの盛り上がりが戻ってきている」(Rakuten Music マーケティング担当の服部恒氏)中で、直接観客の目に触れる機会があるということ。各イベント後にさらなる伸びを示すのではと期待を寄せた。

Rakuten Music マーケティング担当の服部恒氏
Rakuten Music マーケティング担当の服部恒氏

ジェンダーフリーなおもちゃも増加

 ファミリー編は16年にスタートした無料プログラム、楽天ママ割登録者における流通額や利用状況などからキーワードを選出している。

 同サービスは妊娠中や子育て中の家族を対象に、楽天市場、楽天ブックスなどのサービスから、実用的な情報や各種特典を提供する無料プログラム。楽天会員であれば誰でも登録できる。同社によれば、21年10月時点での楽天ママ割登録者の子供の年齢の割合は、マタニティー期3%、0歳期10%、1~3歳期32%、4~6歳期22%、7~12歳期22%、13歳以上11%。最も多い幼児期は、おでかけなど家族単位での行動が多い時期だろう。

 そんな中、選ばれたキーワードは、「家族のおでかけ需要回復」「おうち時間アップデート」「ジェンダーフリーキッズアイテム」。楽天ママ割メンバーシップ部の安斉利恵氏は、「家族のおでかけ需要回復は、トラベル同様の結果となった」と言及。楽天ママ割メンバーを対象にした同社のインターネット調査によれば、約5割が21年と比べておでかけの回数が「増えた」という。また約8割が「今年の夏に家族旅行をしたい」と回答。「おでかけ関連アイテムの売り上げは前年より伸びている」(安斉氏)とした。

 暑さ対策系アイテムも伸びが大きい分野。特に「アイスリング」が注目を集めている。楽天市場における検索数を21年と22年の6月2週目で比較すると約44倍だったという。

「子どもが乗れるタイプのキャリーケースが注目」(楽天ママ割のメンバーシップ部 安斉利恵氏)されており、そのほか「子ども用ドレス」「ビーチバッグ」「ベビーサンダル」などの、おでかけに関連したアイテムも前年より売り上げが伸びているという
「子どもが乗れるタイプのキャリーケースが注目」(楽天ママ割のメンバーシップ部 安斉利恵氏)されており、そのほか「子ども用ドレス」「ビーチバッグ」「ベビーサンダル」などの、おでかけに関連したアイテムも前年より売り上げが伸びているという

 おでかけ需要が伸びる一方で、子ども向けの「プレイマット」や「プール・水遊びグッズ」、物価高騰で需要が高まる「セカンド冷凍庫」などの、「おうち時間アップデート」に役立つアイテムも前年比に比べて伸びを見せた。

 また、「ジェンダーフリーキッズアイテム」に関しては、男女関係なく着られる「ラッシュガード」や、男の子の知育人形、女の子向けDIYトイなど、どちらかの性別向けだったおもちゃのラインアップがもう一方の性別へと拡大してきているという。こうした商品の増加も予測した。

楽天ママ割のメンバーシップ部の安⻫⽒
楽天ママ割のメンバーシップ部の安⻫⽒
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