デジタルガレージが主催するグローバルカンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2022」が2022年6月14日に開催された。テーマは「web3 Summer Gathering」。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を基盤とした自律分散型の世界である「web3」において、今、何が起きているのであろうか。元MITでデジタルガレージ共同創業者・取締役である伊藤穰一氏をはじめ、web3に関わるキーパーソンが一堂に会し、web3の未来を熱く議論した。今回は「web3の衝撃ー世界では何が起きているのか―」と題されたセッションを中心に紹介する。
猿をモチーフにしたイラストのNFT(非代替性トークン)コレクション「Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)」はご存じだろうか。今、NFTコレクターたちが最も注目しているコンテンツの一つだ。2022年6月現在、一番安価なものでも、10万ドル以上の価格で取引されている。なぜ、単なるデジタル画像に、これほどまでの高額な値が付くのだろうか。
イベントの基調講演で伊藤氏は、その理由を、次のように分析した。
「もともとプロファイル用の画像としてスタートした。それだけにとどまらず、NFTを持っている人だけが参加できるパーティーを開催したり、NFTを持っていれば安く土地が買えるメタバースをリリースするなど、その事業を大きく拡大している。つまり、ユーザーが求めているのは、画像だけではなく、それに付随するステータスやコミュニティーだ」
web3の基盤技術であるブロックチェーン(分散型台帳)に記録されたすべてのやり取りは、誰でもいつでも見ることができる。そして、この台帳は誰も改ざんできない。この仕組みが、NFTの所有権を証明する技術として応用されている。
伊藤氏はweb3のインパクトの大きさを、メソポタミア時代の会計の始まりに例えながら説明した。「粘土の台帳に個々の資産を記録することから始まったが今や、デジタル技術でこれを代替できる時代になった。web3は資本主義の次の世界をつくるもので、社会構造を大きく変革しようとしている」という。
Bored ApeはDAO(Decentralized Autonomous Organization=分散型自律組織)をつくり、トークンとして「ApeCoin」を発行している。このDAOをベースにコミュニティーが形成されているのが大きな特徴という。「Bored Apeはコンテンツから始まったプロジェクトだ。それが、今やFacebookにも肩を並べるほどの増資を受けるほどに、短期間で成長してきている。Web2.0ではプラットフォーマーが強かったが、web3ではコンテンツがレバレッジを持つようになるだろう。日本のアントレプレナーにも、こういったビジネスに参入してもらいたい」
伊藤氏が所属するデジタルガレージは22年6月14日、web3プロジェクトを推進する「web3戦略設計タスクフォース」を設立すると発表。web3ファンドの設立などを通じて、web3の推進を支援することを表明している。
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