白スニーカーのD2Cブランド「GO WITH WHITE」。2021年5月の立ち上げ以来、ECをメインに展開してきたが、初のポップアップショップを期間限定で出店した。「当初はリアルで販売する必要はない」と考えていた同ブランドが、リアル店舗設置を選んだ狙いとその成果を聞いた。

「GO WITH WHITE」のポップアップショップの外観
「GO WITH WHITE」のポップアップショップの外観

 「GO WITH WHITE」(以下、GOWW)は、白スニーカーに特化したD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)ブランドだ。D2C支援事業のSUPER STUDIO(東京・目黒)の子会社Studio betaが展開する。SUPER STUDIO の林紘祐CEOは、「『履けば履くほど劣化が目立っていく白スニーカーならではの悩みを解消し、気兼ねなく毎日履いてほしい』という思いから立ち上げた」と説明する。

 そのGOWWが22年4月29日から5月7日の期間で、ブランド初となるポップアップショップをRAYARD MIYASHITA PARK「&BASE」(東京・渋谷)に開いた。9日間で約2000人が来店し、目標販売数の2倍以上を売り上げたという。

 GOWWがポップアップショップを展開したのには理由がある。林氏は次のように説明する。「EC(電子商取引)で買い物をする顧客と、店頭などリアルで買い物をする顧客とでは層が異なるのではないか。リアルで買い物をする顧客にも、GOWWのプロダクトやサービスの良さを知ってもらって、そこからECでのつながりが持てるような動線をつくりたかった」

白スニーカーをECで販売する難しさに直面

HPキャプチャ
GOWWはEC(電子商取引)での直販を主軸としてきた。スニーカーの販売だけでなく、カスタムやリペアといったサービスを含めたサブスクリプション(定額課金)プランも用意している

 D2Cを標榜するように、GOWWはECでの直販を主軸としてきた。「当初はリアルで販売する必要はないと考えていた」と林氏。だが、ベータ版からブランドを展開し検証を重ねていく中で、スニーカーをECで販売することの難しさに気付き始めた。「一度履いてもらえれば見た目以上に軽くて履き心地がいいことを分かってもらえると思っていたが、やはりECのみだとユーザーにそれが伝わりづらかった」(林氏)

 試着も受け付けているが、ECサイトを通じて試着会に申し込む必要があり、商品を手に取って即試着ができる店頭販売と比べるとハードルが高い。一度ユーザーに商品を送って試着してもらうにしても、「一度履いてみてから再び送り直すのは、自身の経験から考えてみても煩わしい」(林氏)。

 しかも、扱っている商品は白スニーカー。ファッションへのこだわりが強い20代後半~40代をターゲットとしており、白くきれいな状態で履き続けられることがユーザーへのアピールポイントだ。それを実現するため、スニーカーの傷や汚れをメンテナンスするリペアや、靴ひもを自身の好みのものにカスタマイズするカスタムなどを含めたサブスクリプション(定額課金)プランも展開している。

 こうしたブランドの特徴をユーザーに体感してもらうため、ポップアップショップへの挑戦を決めた。

店内設置の自販機でポップアップ来店客を判別

 ユーザーの体感に加え、もう一つ掲げた狙いが購買層の分析だ。「今回の取り組み(ポップアップショップの展開)には、リアルで得られるデータを、どのようにECで活用しユーザーにアプローチしていくかを模索することも、裏テーマとしてあった」と、林氏は語る。

 その言葉通り、店舗には入り口付近の天井やスニーカーの陳列棚付近などにAI(人工知能)カメラを設置した。店内のカメラは来店客の性別、年齢、視線の動きを計測し、来店する顧客がどのような動きをするかを分析。店外にもカメラを設置し、人流データも計測した。

GWWの陳列棚
スニーカーがずらりと並んだ陳列棚。商品を手に取って、気軽に試着できる
陳列棚付近にはAIカメラを設置した
陳列棚付近にはAIカメラを設置し、来店客の動きを分析する

 中でもユニークなのは、店内に自販機を設置し、ノベルティーを配布したことだ。来店客は、自販機のパネルに記載された2次元コード(QRコード)を読み取り、GOWWのLINE公式アカウントを友だち登録すると、店頭スタッフから自販機専用コインを渡される。これを自販機に入れると、GOWWのステッカーやシューケアグッズなど全6種類のグッズから選んで好きなものを1つもらえる。ランダムボタンを押すと、自身のサイズに合ったGOWWが当たるチャンスもある。一見すると、来店客を楽しませる企画のようだが、役割はそれだけではない。

店内には自販機を設置した
店内には、ノベルティーを配布する自販機も設置。これによって、ポップアップショップ経由の新規顧客を判別する

 真の狙いは、ポップアップショップ経由の新規顧客の把握だ。自販機に記載した2次元コードはポップアップショップ専用のもの。そのため、それが読み込まれ友だち登録された数が、ポップアップショップで得られた新規顧客と判断できる。「自販機の2次元コードからどれだけLINEの友だちが増えたかが分かるので、今回のポップアップショップでどれほどつながりがつくれたかがデータとして得られる。(普段展開している)ECと店舗の効果をしっかり分けて分析できる仕組み」と林氏は説明する。

 ポップアップショップでのスニーカー購入を、ECにひもづけられるようにしたのも工夫点だ。活用したのは、SUPER STUDIOが提供するECツール「ecforce」。接客するスタッフが待機しているレジがあるものの、通常の店舗とは違って、商品の会計はGOWWのサービスへの会員登録を前提としている。

 顧客がスニーカーの陳列棚付近に設置された2次元コードを読み込み、商品やサイズを選択する。それに加えて、名前や住所などの個人情報も入力し、会員登録をしたうえで商品を購入する仕組みだ。商品は顧客の都合によって、当日持ち帰ることも自宅に配送することもできる。

 つまり、店舗にいながらも、購入ステップはECと同じというわけだ。こうすることで、ポップアップショップ来店客とも継続的なつながりをつくり、必要に応じてリペアやカスタムなどのサービスを含むサブスクリプションプランを案内することもできる。

ポップアップでの購入者9割がサブスクに加入

 先述のように、ポップアップショップには約2000人が来店し、目標購入数の2倍以上を売り上げた。来店客からは「気になっていた商品を試着して、気持ちが高まったところで決済することができ、購入体験として良かった」という声も寄せられたという。LINEの友だちも、イベント開始前と比較して約4倍に増えた。

 さらに、期待を上回る成果も見えてきた。購入者の9割以上がサブスクリプションプランにも加入したという。「ウェブで見て興味を持ちつつもサービス内容を理解するには至らなかった顧客が、ポップアップショップに来店し、スタッフから直接説明を受け、試着する中で購入につなげることができた。サービスへの納得感もあり、加入につながったのではないか」と、林氏は分析する。

 商品やサービスをユーザーに体験してもらう場として、今後は常設店の開設も視野に入れる。「(リアルで販売する際は)商品をただ販売するだけでなく、OMO(オンラインとオフラインの融合)ならではの良さを生かしていきたい。コンセプト決めの段階から、ユーザー体験の向上を見据えてショップを設計していくことが今後の課題だ」(林氏)とした。

 ポップアップショップへの挑戦はGOWWにとって、ECとリアルを組み合わせたマーケティングの可能性を広げていく第一歩になったのかもしれない。

(写真提供/SUPER STUDIO)

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