コーセーは2022年6月16日、新型コロナウイルス禍の外出規制緩和、および猛暑の到来が予想される中、報道関係者向けにメークのトレンド予測に関する発表会を行った。マスクの着脱機会増加に伴いベースメーク用品、ポイントメーク用品、ヘアケア用品にも変化が求められそうだ。

メークトレンドを実演で解説したコーセー 美容開発部ビューティクリエーションユニット ヘア&メイクアップアーティストの土橋脩氏(左)
メークトレンドを実演で解説したコーセー 美容開発部ビューティクリエーションユニット ヘア&メイクアップアーティストの土橋脩氏(左)

崩れにくく血色感と透明感あるメーク

 「マスク緩和と梅雨・猛暑でビューティはどう変わる~メイクのトレンド予測と、崩れない&すっきりテクニック~」と銘打った発表会は2部構成。第1部では22年夏を前にしたメークトレンドを解説した。

 コーセー 美容開発部ビューティクリエーションユニット ヘア&メイクアップアーティストの土橋脩氏は、「生き生きとした血色感があること」がポイントになると説明。土橋氏によれば、新型コロナウイルス感染症流行以前は、リップにダークトーンの赤や紫のリップを取り入れたメークが人気だったが、マスクをすることで色や血色を楽しんでいたリップやチークが物理的に見えなくなり、アイメークや眉メークでカラーを楽しむようになっていた。しかし今後、マスクの着脱機会が増えると、マスクと肌の摩擦によるメーク崩れが起きやすくなるため、こすれに強く、崩れにくい、血色感と透明感のあるメークがトレンドの一つになるのではないかという。

「見せたい」欲求でベースメーク変化

 その上で、土橋氏は個別のパーツやアイテムのトレンドに言及した。まずはベースメークについて、マスク着用時間が長い間、選ばれてきたのは「メーク下地とファンデーションの間くらいの、手軽にできるベースメーク」商品だったと土橋氏。例えばメークのノリや持ちをよくする化粧下地、カバー力に優れたBBクリーム、肌の色や質感を整えるのに優れたCCクリームなどが手軽なベースメークアイテムとして挙げられる。これらが支持を得たのは、マスク着用による蒸れ対策として、薄くナチュラルな仕上がりが求められたことが関係していると考えられる。

 しかしマスクの着脱機会が増えると、外したときに「見せたい」欲求が高まり、ベースメークは今より厚くなるのではないかと土橋氏は言う。「比較的つや感があるものが選ばれてきたメーククリームなどのファンデーションの下地は、今後、マット感が増し、さらにコンシーラなどを合わせることになるのではないか」(土橋氏)と分析する。

 一方で、マスク着用時に起きたニキビなどの肌トラブルにより、マスクを外したくない人も出てきていると土橋氏は指摘。同社には傘下のドクターフィル コスメティクスの「アクネオ 薬用 スキンケアパウダー」など、ニキビを抑えられるようなスキンケア用品があるが、マスク着脱機会の増加に伴い、肌トラブルを感じさせない仕上がりになるような製品も今後は求められることになりそうだ。

当日使用したアイテム。手前左の淡いピンクのコンパクトが「アクネオ 薬用 スキンケアパウダー」(画像提供/コーセー)
当日使用したアイテム。手前左の淡いピンクのコンパクトが「アクネオ 薬用 スキンケアパウダー」(画像提供/コーセー)

“ちょい足し”で血色感を出せる1本

 ポイントメークについて土橋氏は「コロナ禍でのマスク生活が始まる前は、リップが主体で、深めのカラーが流行していた。マスク生活により(ほおから下が見えない分)血色カラーが眉や目元などに上がり、眉にピンクやバーガンディ(濃い赤紫がかった色)、オレンジなどをカラーアイブロウなどで乗せるようになっていた」とコロナ禍下でのトレンドを分析。今後は「マスクを外すと全体で見せるため、眉はカラーアイブロウなどで明るくしてから輪郭をはっきり見せるように、目元は下まぶたにもボリュームを出すようになるのではないかと予測している」(土橋氏)という。

 マスク着用時のメークから急激に変えるのではなく、下まぶたにアイシャドーを乗せるだけで取り入れやすいのもポイント。「今のメークに少し足すだけで、目の印象が変わる。下まぶたにカラーを乗せる分、下まつげにもマスカラを足すなど、目元で縦幅を見せるメークにシフトするのではないか」(土橋氏)とした。

今のメークに少し足すだけで目の印象が変わる、下まぶたのカラーアイテムは取り入れやすいという
今のメークに少し足すだけで目の印象が変わる、下まぶたのカラーアイテムは取り入れやすいという

 最も大きく変わるのがチークとリップだ。土橋氏は「コロナ禍が広がる前のダークなカラーにすぐに戻ると、見慣れずに違和感が起きる可能性もあるため、いきなりシフトはしないと考えている」として、今使っているものから遠くないカラーで血色を補色できる、リップに合わせたチークの需要を予測した。リップは「マスクにつきにくいルージュで、少し明るめのカラーがトレンドになると考えている。(リップの)輪郭はマスクを外したときの色写りなども考えて、はっきりさせるより、ぼかすのがトレンドになるのではないか」(土橋氏)

 また「マスク生活でメークがミニマムになってきたため、一気に本格メークをすることが、気持ち的にも時間的にもハードルが高く感じる人がいる」と土橋氏。時間的にもカラー的にも“ちょい足し”で血色感を出せるような商品が求められるとして、「ファシオ(ブランド)の『マルチフェイス スティック』は1本でほお、目元、唇すべてに色を足せる。またイエベ(イエローベース)、ブルべ(ブルーベース)などで肌に合う条件からメーク用品を選ぶ人も多かったが、それよりも自分が好きな色を楽しんでほしい」(土橋氏)とアピールした。マスクを外すことでの解放感を生かした商品が増えていきそうだ。

右端のスティック状のアイテムがファシオ(ブランド)の「マルチフェイス スティック」(画像提供/コーセー)
右端のスティック状のアイテムがファシオ(ブランド)の「マルチフェイス スティック」(画像提供/コーセー)

コロナ禍で若年層にも頭皮の悩み

 第2部では、「Sea & Spa」をコンセプトとし、化粧品専門店を中心に展開するブランド「プレディア」から22年8月21日に発売される「プレディア ファンゴ ヘッドクレンズ SPA+」 を紹介し、合わせて頭皮ケア・スキンケアテクニックを解説した。

 コーセー セレクティブブランド事業部 商品企画課の田坂響子氏は富士経済の調査を紹介し、女性用スカルプケア市場は年々拡大傾向にあり、コロナ禍下でも市場は2桁増となったことを説明。「Web会議などで自分の姿を目の当たりにする機会が増え、20代を含む比較的若い年齢層においても、抜け毛、細毛、白髪などに悩む人が増えている。また生え際に関する当社のアンケートでは、20代、30代でも半数で年齢を感じていると回答している。頭皮ケアのニーズの増加の背景には社会状況の変化もあるが、スキンケアは土台から整える、根本から解決する必要があるという考えが広がってきたこともあるのではないか。頭皮ケアについてもスキンケアと同様に、トラブルが起きる前の『未然ケア』意識が高まってきている。こうした背景から、毛穴の汚れまで落として毛先までトリートメントするプレディア ファンゴ ヘッドクレンズ SPA+を開発した」(田坂氏)と言う。

 田坂氏によると、ファンゴ ヘッドクレンズ SPA+はシャンプー、頭皮ケア、トリートメントの機能を持つ「3 in 1」商品。「1品で3つの機能を備え、健やかな頭皮と美しい髪を育む」(田坂氏)という。同商品には、プレディアブランドが化粧品を通じて培ってきたノウハウも生かした。「プレディアの洗顔料・クレンジングアイテム『スパ・エ・メール ファンゴ W クレンズ』は02年の発売から20年10月末時点までで累計販売個数250万個を突破している。この商品はメークを落とすだけでなく、黒ずみや角栓などのあらゆる『毛穴悩み』までもケアできるクレンジングとして、幅広い世代から好評を博してきた。この商品同様、『天然泥』をファンゴ ヘッドクレンズ SPA+にも配合している」(田坂氏)

コーセー セレクティブブランド事業部 商品企画課の田坂響子氏
コーセー セレクティブブランド事業部 商品企画課の田坂響子氏

新規顧客獲得と既存顧客の育成に意欲

 商品紹介に続き、コーセー 美容開発部ビューティクリエーションユニット インターナショナル エステティシャンの戸塚みくり氏は、コーセー独自の頭皮マッサージおよび21年4月から展開している、コーセー独自のスキンケア商品の塗布方法「おもいやりメソッド」を実演した。

 おもいやりメソッドは同社の公式サイトで動画を公開。22年6月13日には、実施前後で肌への効果だけでなく、心理的な変化が起こることを脳波とオキシトシンの測定結果から実証したことを発表した(※1)。「進化するデジタル社会において、性差を問わず、健康的な美しい髪や肌を育むために頭皮マッサージが役立つ」(戸塚氏)と言い、商品展開と併せて、こうしたテクニック動画の公開も、顧客獲得につなげていく考えだ。

コーセー 美容開発部ビューティクリエーションユニット インターナショナル エステティシャンの戸塚みくり氏は頭皮マッサージおよびコーセー独自のスキンケア商品の塗布方法「おもいやりメソッド」を実演した(画像提供/コーセー)
コーセー 美容開発部ビューティクリエーションユニット インターナショナル エステティシャンの戸塚みくり氏は頭皮マッサージおよびコーセー独自のスキンケア商品の塗布方法「おもいやりメソッド」を実演した(画像提供/コーセー)
※1:共同研究を開始した慶応義塾大学理工学部 システムデザイン工学科兼大学院医学研究科委員の教授との取り組みによるもの
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