「『ヤマキ割烹白だし』 500ml」が、2014年から売り上げベースで前年比2桁成長を続けている。家庭内需要が高まった新型コロナウイルス禍以前から伸長を続ける要因には、唐揚げや乾麺をはじめとしたアレンジメニューを増やしたことがあった。新規層とリピーター層、両方へのアプローチに成功した施策とは?

画像左は「割烹白だし お塩ひかえめ 500ml」、右が「割烹白だし 500ml」
画像左は「割烹白だし お塩ひかえめ 500ml」、右が「割烹白だし 500ml」

 かつお節、魚介エキス、砂糖、淡口しょうゆ、塩などがブレンドされ、1本で簡単に料理の味が決まる「ヤマキ割烹白だし 500ml」。2021年度は白だし・白つゆメーカーの最大手として、市場全体の購買金額シェアで3割強を占めた(21年4月~22年3月に、インテージが沖縄をのぞく地域の15〜79歳を対象に行った調査結果)。1994年の発売以来のロングセラー商品で、食卓を中心に活躍する万能な調味料として重宝されている。

 そんな割烹白だし 500mlの販売金額推移をみると、8年連続2桁成長を続けている。20年からの新型コロナウイルス禍による家庭内需要拡大も後押しし、過去最高売り上げを毎年塗り替えている。

左の棒グラフが販売金額の前年比を、右の円グラフは2021年4月~22年3月の市場全体におけるヤマキのシェアを表している
左の棒グラフが販売金額の前年比を、右の円グラフは2021年4月~22年3月の市場全体におけるヤマキのシェアを表している

 ヤマキ家庭用事業部 液体グループ係長の野口昌満氏は「コロナ禍に突入した20年は、食品業界のあらゆるジャンルで軒並み売り上げが伸びたが、21年にはその反動で数字が下がった商品も多い。そんな中で白だしカテゴリーは売り上げが伸び続け、新規層とリピーターがともに伸びている数少ない商品となっている」と語る。

ヤマキ家庭用事業部 液体グループ係長の野口昌満氏
ヤマキ家庭用事業部 液体グループ係長の野口昌満氏

乾麺、鍋つゆ用途で使用量増加へ

 割烹白だし 500mlの需要が高まっている背景には、アレンジメニューを増やしたことが挙げられる。これまで料理初心者向けには、だし巻き卵や白だしを水で割って作る煮物を提案。こうしたスタンダードなメニューに加え、近年は唐揚げやきゅうりの浅漬け、そうめんや鍋料理など、多種多様なレシピで、ユーザーの使用頻度の向上に成功した。

 「春夏はソーメンなど乾麺のつゆとして、秋冬は鍋つゆとして白だしを訴求している。各季節ごとに白だしのメニューを発信することで、スーパーでは鍋や乾麺のコーナーなど、これまで陳列されてこなかった棚にも白だしが置かれるようになり、ユーザーの目に留まりやすくなった」

 しかも鍋メニューやおでん等は1回の使用量が多い。メニューの幅を増やすことで、ユーザーからすれば幅広い料理を手軽に作れ、ヤマキとしては自然と使用頻度と使用量も増えていく。

「春夏はソーメンなど乾麺のつゆとして、秋冬は鍋つゆとして白だしを訴求している」と野口氏
「春夏はソーメンなど乾麺のつゆとして、秋冬は鍋つゆとして白だしを訴求している」と野口氏

 「今までは煮物や卵焼きなどを作る際、しょうゆに代わる調味料に近い役割として利用されることが多かったが、ユーザーからは『白だしって何に使うのか分からない』という声も散見された。そこでメニューを増やして間口を広げつつ、量を使用してもらうメニューも提案した」と野口氏。

 ただ肝心なのは、定番から風変わりなものまで、様々なメニューをどのように認知してもらうかだ。

山崎育三郎を起用したCMがヒット

 そこでヤマキが注力したのが、CMとレシピサイトでのPRだ。まずCMでは社内で推している調理法で、新規層を獲得する。そこからレシピサイトで豊富なアレンジメニューに触れてもらい、リピーターを増やしていく流れを取った。

 ヤマキが白だしのCMを初めて放映したのは14年。ちょうど2桁成長が始まった年だ。

 14年に放映されたCMでは笑福亭鶴瓶とその長男の駿河太郎が共演。スーパーの試食販売員にふんした二人が、割烹白だしを薄めて作る「白だしスープ」を紹介した。18年には岡田将生を起用。フライパン1つで簡単に作れる「白だしさっと煮」を調理する内容だった。そして22年の新シリーズでは山崎育三郎を抜てき。卵焼きと唐揚げを作り、さらなる新規ユーザーの獲得を狙う。

 野口氏は「鶴瓶さんバージョンでは『アレンジメニューの豊富さ』を、岡田さんでは『料理の簡単さ』を、山崎さんの時は『料理の見栄えのきれいさ』をアピール。割烹白だしが持つ特徴を徐々に認知してもらえるようになった」と語る。

22年は山崎育三郎を起用。YouTubeのヤマキ公式チャンネルでは、唐揚げ編が24万回、卵焼き編が15万回再生されている(6月15日時点)
22年は山崎育三郎を起用。YouTubeのヤマキ公式チャンネルでは、唐揚げ編が24万回、卵焼き編が15万回再生されている(6月15日時点)

 レシピサイトのPRでは、「白だし」と検索するとヤマキのバナーが出てくるように設定。バナーを押すと、ヤマキがお勧めするメニューやコラムなどが掲載される特設ページに飛ぶ。22年にヤマキがプッシュしている唐揚げは、ユーザーが実際に調理した投稿が1000件を超えた。

クックパッドでの特設ページ
クックパッドでの特設ページ

 豊富なメニューをそろえ、CMやレシピサイトでユーザーに使用例を明確に伝えることで、割烹白だし 500mlは長期的な伸長を見せた。ヤマキによれば、白だしを使用する層も広がったそうだ。これまでは30~70代の主婦層がメインのユーザー層だったが、直近ではこれまで分母が少なかった20代の女性や、30~50代の男性の使用率が高まっている。

 今後の展開を尋ねると、野口氏は「まだまだ白だしの市場は伸びていく。市場全体の調査では4割近くのユーザーがまだ白だしを使ったことがなく、年間の使用量もめんつゆの4割強と少ない。今後も引き続き季節ごとのメニューをはじめとしたアレンジメニューをプッシュして、白だしのカテゴリーを盛り上げていきたい」と結んだ。

(写真提供/ヤマキ)

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