高島屋が、住信SBIネット銀行の銀行インフラ「NEOBANK」を用いた銀行サービス「高島屋ネオバンク」を、2022年6月8日から新たに提供し始めた。自社ブランドでの銀行サービス参入は、大手百貨店としては初の試み。新規参入の狙いとサービスの特徴を探った。

高島屋ネオバンクのサービスを知らせるWebサイト
高島屋ネオバンクのサービスを知らせるWebサイト

 「高島屋の次世代を担う20~30代の顧客を獲得することが最大の狙い」

 今回の高島屋ネオバンクのプロジェクトを推し進めた高島屋執行役員で金融事業推進プロジェクトリーダーでもある平野泰範氏は、銀行サービス参入の狙いをこう明言する。

記者会見で「高島屋ネオバンク」について発表する高島屋執行役員で金融事業推進プロジェクトリーダーでもある平野泰範氏
記者会見で「高島屋ネオバンク」について発表する高島屋執行役員で金融事業推進プロジェクトリーダーでもある平野泰範氏

 高島屋をはじめとする大手百貨店の多くは、顧客の高齢化が進んでいる。次世代の主要な顧客になるであろう 20~30代の顧客の数を増やし、かつ利用頻度を高めることは喫緊の課題である。

 とはいえ、高島屋の場合、「20代の利用客が一定数はリアル店の店頭に足を運んでくれている」(平野氏)。しかも、投資に加えて住宅ローンや保険など、顧客からの金融相談に応じる店頭に設置したカウンターサービスは盛況だ。投資やローンの経験に乏しい幅広い年代の顧客が利用し、「新型コロナウイルス感染症の拡大が落ちついてきた2022年に入ってから、予約が増えている」(平野氏)状況である。そこで、20~30代にとって魅力的な金融サービスと買い物体験を提供し、会員になってもらった上で顧客データを収集・分析していけば、百貨店事業での短期的な売り上げ増や将来のマーケティングにも生かせると考えた。

自社ブランドの銀行口座を提供する理由

 魅力的な金融サービスを顧客に提供するには、「預金や自動引き落とし、振り込み、ローンなどのサービスを総合的に提供できる銀行口座があったほうがよい」(平野氏)。長期にわたって顧客データを収集・分析し、ライフステージに合ったサービスを提供していく際にも、顧客の銀行口座のデータを把握していたほうが、都合が良い。だからこそ、高島屋ブランドのクレジットカードやポイントカードを既に顧客に提供しているにもかかわらず、今回、改めて高島屋ブランドで銀行サービスに参入することを決めたのだ。

 その際、サービス開発のスピードやコスト、銀行免許取得の手間などを考慮し、自前でゼロから開発するのではなく、住信SBIネット銀行の銀行インフラNEOBANKを活用することにした。カルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ会社Tマネー(東京・渋谷)や、ヤマダ電機を展開するヤマダホールディングスなどが、既にNEOBANKを活用して銀行サービスに参入している実績があることも、後押しした。

高島屋ネオバンクのアプリのトップ画面(出所/高島屋)
高島屋ネオバンクのアプリのトップ画面(出所/高島屋)

 顧客は高島屋ネオバンクのアプリを自分のスマートフォンにインストールし、口座開設手続きをするだけで、預金、振り込み、カードローンといった基本的な銀行サービスをアプリだけで利用できる。標準仕様ではプラスチック製キャッシュカードは発行しない。代わって、電子マネー「iD」対応の端末を備える小売店ではスマホを端末に接触させてキャッシュレス決済(デビットカード決済)もできるし、全国のセブン銀行とローソン銀行のATMを使って現金の入出金もできるようにした。

高島屋ネオバンクのアプリで銀行取引をする際の画面例(出所/高島屋)
高島屋ネオバンクのアプリで銀行取引をする際の画面例(出所/高島屋)

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