イオンがアウトドア用品のPB(プライベートブランド)の本格展開を開始した。アウトドアスポーツやキャンプなどのアクティビティーは、新型コロナウイルス禍で密を避けて楽しめるレジャーとして人気が高まり、関連用品の需要が拡大。大手メーカーが手掛けるブランドをはじめ、安さを売りにした新興メーカーも増え、競争は激化している。その市場になぜイオンは参入したのか。戦略を聞いた。
イオンがアウトドア用品を本格展開
イオンのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」のホームファッションブランド「HOME COORDY(以下、ホームコーディ)」に、アウトドア関連商品が新たに加わった。2022年4月5日の販売開始以降、ゴールデンウイーク前から売り上げを伸ばし、アウトドア商品全体で21年を上回る好調な推移となっており、特にチェアやテーブルは21年比150%の売り上げを記録しているという。その後も「ホームコーディ フルクローズサンシェード」を発売するなど、夏に向けて販売も強化している。
ホームコーディブランドは1985年にスタート。2017年には「暮らしにアクセント。」をコンセプトにブランドを明確化し、ソファやカーテンなどのリビング用品や、寝具、バス、トイレ、キッチン用品、家電製品などを、全国の「イオン」「イオンスタイル」のうちの約500店舗や、EC(電子商取引)サイト「イオンスタイルオンライン」で展開してきた。
これまでアウトドア用品については、花見や運動会など春から夏の行楽に合わせた商品を展開し、夏のバーベキューシーズンが終わると売り場から撤退するというサイクルを繰り返してきたという。それが今回の関連商品追加で、いわば季節商品だったアウトドア用品を通年で販売することになった。
店頭にはチェアやたき火用品、調理用品、寝袋など、キャンプで求められる約300商品が並ぶ。ラインアップにはホームコーディの商品だけでなく、アウトドアメーカー大手のコールマンやロゴス、あるいはリーズナブルなアイリスオーヤマなど、ナショナルブランド(NB)商品も含まれる。これはECサイトでも同様だ。
コロナ禍下で拡大する需要に応える
アウトドア用品を本格的に展開していくことになった経緯について、イオンリテールの山田高政ホームファッション商品部長は「新型コロナウイルス感染症流行以前から、アウトドア市場は徐々に伸びてきていた。それがコロナ禍下でブームになり、通年でアウトドア用品を販売できないかと考えた」と話す。
矢野経済研究所の「スポーツ用品市場に関する調査」(22年5月)によれば、21年のアウトドア用品の国内出荷規模は約2876億円(見込み)で、22年はその106%となる約3059億円に伸長すると予測されている。キャンプなどのアウトドアアクティビティーは、密を避けて楽しみたいというニーズを満たすレジャーとしての需要が増加。スポーツ用品市場のけん引役の1つともなっているという。
一方でこれまでのイオンのアウトドア用品は、必ずしもキャンプ用品が充実していたわけではなかった。それを「これからキャンプを始めるという人や、より本格的にアウトドアを楽しみたい人に向けて、常にキャンプ用品が購入できるように品ぞろえを増やすことにした」(山田氏)という。加えて「アウトドア用品はレジャーに使うだけでなく、防災の観点から購入するユーザーも増加」(山田氏)しており、コロナ禍下で「備える」ことへの意識が高まっている今だからこその参入チャンスともみている。
また「これまでキャンプと言えば、グループなどでキャンプ場に出向くスタイルが主流だったが、コロナ禍下で家のべランダや庭でバーベキューなどを楽しむ『べランディング』や、椅子とコーヒーなどを用意し近くの公園でアウトドア気分を味わう『チェアリング』など、アウトドアを楽しむ新しいスタイルも増えてきている」と山田氏。1人でキャンプを楽しむソロキャンプに加え、ソロキャンパーが少人数で集まってキャンプをする「ソログルキャン」の動きもあるなど、アウトドアスタイルの多様化に応えられる商品が必要とも考えたという。
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スノーピークやコールマン、モンベルなどのアウトドアの専門メーカー各社も、コロナ禍によるニーズ拡大を受け、初心者をターゲットにしたパッケージ商品を販売し業績を伸ばしている。またワークマンやアイリスオーヤマなども参入し、リーズナブルな商品を出してきており、市場競争は激しくなってきている。
こうした中でイオンが強みとするのが、PBを中心とした商品の安さだ。「PB商品の価格は、大手アウトドアメーカー商品の3分の1から5割に抑えた」と山田氏。例えば「ホームコーディ アームチェア」は1408円だが、イオンのPBがこの価格を実現できたのは、独自の副資材ロットや生地ロットがあることが大きい。
しかも、イオンは系列店を含め全国に2万店舗以上あり、PBには顧客から集約した「こういうものが欲しい」という意見を反映して商品を開発している。よって受け入れられる分母も大きいと想定して大量生産し、それが価格の安さにもつながっているという。
PBを組み合わせることで、予算に合わせてコーディネートできることが強みだと山田氏は説明。「初心者が1年間でできるアウトドアレジャーの回数を考えたときに、最初から高額な製品を購入して数回しか使わなかったとなると、かなりもったいない。とりあえずちょっとやってみたいだけだから、価格は抑えたいという人もいるだろう。そういうとき、テントなどPBの取り扱いがないものは他ブランドで用意してもらうにしても、その他をPBでそろえられれば全体の費用は抑えられる。最初に大きな投資をしなくても自分で自由に調整してコーディネートを楽しめるのが、強みと考えている」
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