2022年5月16日、リアルゴールドの新製品が2種同時発売された。10~20代を中心に伸長しているエナジードリンクの分野に本格的に参入する。最大の特徴はYOSHIKIをビジネスパートナーに迎えたことだ。単なる宣伝大使ではなく、製品のプロデューサーとして起用した日本コカ・コーラの狙いとは?

新発売の「リアルゴールドX/Y」。赤色のパッケージ「X」ではスパイス成分を、青色のパッケージ「Y」でハーブ成分を配合した
新発売の「リアルゴールドX/Y」。赤色のパッケージ「X」ではスパイス成分を、青色のパッケージ「Y」でハーブ成分を配合した

エナジードリンク市場が伸長する理由

 日本コカ・コーラによれば、エナジードリンクの市場はここ10年右肩上がりを続けている。これまでエナジードリンクは、栄養ドリンクに近い飲料としてここぞというときにしか手に取られなかった。それが近年、製品種類の増加と飲料カテゴリーの多様化が後押しし、エナジードリンクがリフレッシュを求めるときに飲む気軽な飲料として認識されるようになった。市場全体では主に10~20代の若年層を対象に、炭酸飲料やコーヒーに近い感覚で間口が広がっている。気分転換や集中力を高めたいときなど、飲用目的を広げて製品を訴求してきた。

 拡大するこの市場に目をつけ、日本コカ・コーラも2022年5月16日に「リアルゴールドX/Y」を発売した。従来のリアルゴールドに比べ、X/Yではエナジードリンクの要素を色濃く出した。

 日本コカ・コーラ マーケティング本部 スパークリングフレイバーズカテゴリー事業本部長の島岡芳和氏は「エナジードリンクの飲用シーンは大きく2つある。1つはここぞというときに頑張るなど集中してシャキッとしたいとき。もう1つは気分を上げたいときや気合を入れたいとき。リアルゴールドX/Yも、この2つの購買意欲を満たせるように製品開発を進めた」と開発経緯を語る。

Xでは500、350、250ミリリットル、Yでは500ミリリットルのサイズを発売。飲用シーンが拡大したため、従来のリアルゴールドに比べて容量を増やした。価格は税抜きで、500ミリサイズが175円、350ミリが139円、250ミリが139円
Xでは500、350、250ミリリットル、Yでは500ミリリットルのサイズを発売。飲用シーンが拡大したため、従来のリアルゴールドに比べて容量を増やした。価格は税抜きで、500ミリサイズが175円、350ミリが139円、250ミリが139円

 ユーザーのニーズを満たすため、X/Yでは原材料にもこだわった。従来のリアルゴールドはローヤルゼリーやはちみつ、高麗人参エキスを配合しているのに対して、Xは原材料にカフェイン、アルギニン、ガラナに加え独自のスパイスミックスを、Yはカフェイン、アルギニン、テアニンに加え独自のハーブミックスを配合。Xは仕事で気合を入れたいときや趣味や遊びでエネルギーが気になるとき、Yはデスクワークや勉強に励みたいときに適した味に設計した。

日本コカ・コーラによれば、Xはベリー系、Yはシトラス系と味の表現をしている
日本コカ・コーラによれば、Xはベリー系、Yはシトラス系と味の表現をしている

 それぞれ飲んでみると、従来のリアルゴールドは甘さが前面に出ているが、Xは強炭酸の刺激に辛口のジンジャーを想起させ、Yはスポーツドリンクのようなかすかな苦味や酸味がある。どちらも甘さの中に深みがあり、味わいの複雑さも感じる。

 パッケージデザインからも製品コンセプトが感じられるよう工夫を施した。Xには高揚感を連想させる赤の背景色に「ROCK ENERGY」という文字を、Yには集中力を連想させる青の背景色に「Classical Energy」の文字を記載。従来のリアルゴールドに比べて両方とも高級感やスタイリッシュさを前面に出した。

 そんな中パッケージの下部には、「おやっ」と思うポイントが……。両方ともX JAPANのリーダーとして活躍するYOSHIKIの顔がデザインされているのだ。実はこのYOSHIKIの存在が「リアルゴールドX/Yの最大の特徴であり、競合製品との差別化を図れるポイントでもある」と島岡氏は胸を張る。

パッケージの下部には、X JAPANのリーダーYOSHIKIの顔が描かれている
パッケージの下部には、X JAPANのリーダーYOSHIKIの顔が描かれている

 一般的に、アンバサダーとして芸能人を起用しても、飲料の製品パッケージにまで“広告大使”を載せているパターンは珍しい。

 「当社は今回、YOSHIKIさんを単なるアンバサダーではなく、ビジネスパートナーとして迎えた。YOSHIKIさんは音楽の分野のカリスマであると同時に、ご自身でもビジネスを展開し、インフルエンサーとしての側面も強い。YOSHIKIさんの多面的なタレントや魅力を生かし、製品のブランド価値の引き上げやファン獲得を狙う」(島岡氏)

ビジネスパートナーとして、リアルゴールドX/Yを全面的にプロデュースしたYOSHIKI
ビジネスパートナーとして、リアルゴールドX/Yを全面的にプロデュースしたYOSHIKI

 リアルゴールドX/Yは、YOSHIKIと日本コカ・コーラが共同で製品化したといっても過言ではない。味、パッケージデザイン、製品コンセプト、ウェブ動画など、全面的にYOSHIKIの思いや意見を反映させている。協業のきっかけは、YOSHIKIと日本コカ・コーラの社長が知り合いという縁から生まれたものだが、ただ単に仲が良いから協業したわけではない、と日本コカ・コーラは断言する。

YOSHIKIと協業した2つの理由

 今回、日本コカ・コーラがYOSHIKIと協業した理由は大きく2つある。

 1つは「若年層を中心とした音楽ファンの取り込みが期待できる」ことだ。

 「音楽を聴いて気分を高めたい、もしくは没頭したいユーザーにとって、リアルゴールドX/Yの製品コンセプトがマッチすると感じた。音楽好きなユーザーに『音楽を聴くときは、リアルゴールドX/Yが定番のドリンク』という形でもイメージが浸透していけば、飲用機会が拡大していく」と島岡氏。

 現在はサブスクリプション(定額課金)型の音楽配信サービスなどの普及もあって、音楽の楽しみ方や選び方が多様化し、日常のより多くのシーンに音楽が入り込むようになった。「音楽といえばリアルゴールドX/Y」というイメージが定着すれば、購買のきっかけや頻度が増えると見て、日本の音楽シーンを長年けん引してきたYOSHIKIの力を借りた。

 もう1つは「リアルゴールドX/YとYOSHIKIのキャラクターが似ている」ことだ。島岡氏は「音楽畑の人であれば、誰でもビジネスパートナーにしていいというわけではない」と語る。

 「YOSHIKIさんは作曲時、とても繊細で洗練したこだわりや上品さを持ち合わせ、クオリティーを引き上げるためにモチベーションを高めて集中している。それでいて演奏時はとても激しく情熱的で体内のエネルギーを一気に放出しているようなイメージ。このYOSHIKIさんの二面的な特徴と、X/Yの製品コンセプトはリンクすると思った」

YOSHIKIは「情熱的でありながら、繊細で洗練された人」と日本コカ・コーラの島岡氏
YOSHIKIは「情熱的でありながら、繊細で洗練された人」と日本コカ・コーラの島岡氏

 缶のデザインコンセプトを、赤い「ROCK ENERGY」と青い「Classical Energy」にしたのも、日本コカ・コーラが感じたX/YとYOSHIKIの共通点をより強く打ち出すためだ。それぞれの缶には、YOSHIKIの二面性でもある「ロックの高揚感」と「クラシックの集中力」というコンセプトを込めているという。

ウェブ動画が300万弱の再生回数に

 それぞれの製品イメージを訴求するウェブ動画も制作した。ウェブ動画ではYOSHIKIの代名詞であるドラムとクラシックピアノの演奏を通じて、XとYの世界観を訴求。ロックの高揚感をイメージしたXでは、背景が炎に包まれて熱気を感じるなかYOSHIKIが情熱的に激しくドラムをたたく様子を、クラシックの集中力をイメージしたYでは、シトシトと雨が降り注ぐなかYOSHIKIがバラード調の音楽をクラシックピアノを弾く様子を描いた。

 さらにXとYのウェブ動画を掛け合わせた動画も制作。こちらは公式YouTubeチャンネルで288万回再生と反響を集めている(5月31日時点)。

ロックの高揚感をイメージしたX
クラシックの集中力をイメージしたY

 動画内の楽曲提供と演奏を手がけ、映像や画面上の表現まで携わったYOSHIKIは、制作過程とその仕上がりをこう述べる。

 「製品をイメージしたりテイスティングしたりして楽曲を書くのは初めて。Yの音楽はショパンのオマージュのようにし、Xではドラムソロをどうすればいいのかなと考え、それぞれ10曲ずつ書いて徐々に完成のものに近づけた。自分で言うのもなんですが、ドラムとピアノという両極端なものを、ここまでのレベルで表現するアーティストって世界で1人だけかもしれないと思いながらやっていた」

 一連の協業を通して、島岡氏はYOSHIKIのイメージをこう総括する。

 「YOSHIKIさんは、製品を購入する方のことをとても考えている。それまで音楽や芸術の分野の方は、ご自身のやりたいことを貫くイメージだったが、YOSHIKIさんは『なぜこれが売れているのか、この製品はどんなイメージなのか、ユーザーは何を期待しているのか』を突き詰めている。消費者目線を持ちつつ、自身のパッションを製品に注ぎ込んでくれる、とてもビジネスにたけた人」

YOSHIKI(右)と島岡氏(左)。YOSHIKIは「米国ではここ最近、アーティストとハイブランドがパートナーを組むパターンが散見される。今回あえてビジネスパートナーという関係をお互いに選んだことで、日本での今後の新たな道標になる」と語る
YOSHIKI(右)と島岡氏(左)。YOSHIKIは「米国ではここ最近、アーティストとハイブランドがパートナーを組むパターンが散見される。今回あえてビジネスパートナーという関係をお互いに選んだことで、日本での今後の新たな道標になる」と語る

 YOSHIKIをビジネスパートナーに起用し、成長するエナジードリンク市場に新製品を投入する日本コカ・コーラ。アーティストとしてのタレント性やカリスマ性を製品コンセプトと結びつけ、販促強化や話題作りを試みる。

(写真提供/日本コカ・コーラ)

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