B.LEAGUEの年間優勝クラブを決める「チャンピオンシップ」に初めて駒を進めた島根スサノオマジック。惜しくも決勝進出はかなわなかったが、2019年にバンダイナムコエンターテインメントが経営権を獲得、進めてきたチーム強化が実を結んだ形だ。観客動員数、ファンクラブ会員数も右肩上がりだという。経営権獲得から2年、地方のバスケットボールチームとバンダイナムコエンターテインメントという掛け合わせで取り組んできた施策について、バンダイナムコエンターテインメントの執行役員で、バンダイナムコ島根スサノオマジックのCEOを務める田中快氏に話を聞いた。

島根スサノオマジックは初のB.LEAGUEチャンピオンシップ出場を果たし、大躍進した。ユニフォームにもパックマンがあしらわれている
島根スサノオマジックは初のB.LEAGUEチャンピオンシップ出場を果たし、大躍進した。ユニフォームにもパックマンがあしらわれている

 B.LEAGUEの島根スサノオマジックは、2010年に創設されたプロバスケットボールクラブだ。島根を拠点に活動。試合日には、ホームアリーナである松江市総合体育館に、チームのTシャツを着た地元ファンが集まる。中には祖父母、父母、子の3世代と思われる家族の姿もあり、まさに地元に根付いたクラブという印象だ。

ホームアリーナの松江市総合体育館。2022年4月29、30日に開催された2021-22シーズンホーム最終戦には2日間で5288人が来場した
ホームアリーナの松江市総合体育館。2022年4月29、30日に開催された2021-22シーズンホーム最終戦には2日間で5288人が来場した

 一方で、クラブは長年「強豪」とはほど遠い道を歩んできた。15年のB.LEAGUE発足と同時に同リーグに加入したものの、20年までは1部リーグである「B1」と2部リーグの「B2」を行ったり来たり。優勝争いに絡んだことはなかった。

 その島根スサノオマジックが、21-22年のシーズンで初めてチャンピオンシップへの出場を決めた。セミファイナルで敗れたものの、TwitterなどのSNSでは、クラブのファンはもちろん、B.LEAGUEのファンからも活躍を称えるコメントが多数みられた。

 躍進の要因の1つは、19年にバンダイナムコエンターテインメントがチームの経営権を獲得したことにある。同社は島根スサノオマジックの経営基盤を整備し、日本代表経験もある金丸晃輔や安藤誓哉、オーストラリア代表のニック・ケイといった有力選手を獲得。「アイドルマスター」シリーズなどのゲーム関連イベントで培ってきたノウハウを生かし、ホームゲームの演出にも工夫を凝らす。今回のチャンピオンシップ出場は、そうした取り組みによるチーム強化策、ファン拡大策が実を結んだ結果と言えるだろう。

スサマジ運営は新規事業

 そもそも、東京のゲーム会社であるバンダイナムコエンターテインメントが島根スサノオマジックの経営に参画した理由は何か。バンダイナムコエンターテインメントの執行役員で、バンダイナムコ島根スサノオマジックのCEOも務める田中快氏は、「スサノオマジックは、バンダイナムコエンターテインメントのエンタメ事業を拡大する新規事業の1つ」と説明する。

 同社は、15年に社名をバンダイナムコゲームスから現在のバンダイナムコエンターテインメントに変更した。そこには、ゲームに限らず幅広いエンタメ分野に事業を広げていこうという思いがある。

 数あるエンターテインメントの中でも、スポーツは老若男女問わずファンの多いジャンルだ。「スポーツはプレーしている人だけでなく、見ている人の心も動かす。バンダイナムコエンターテインメントは、これまでゲームを中心にフィクションの世界でエンタメに取り組んできたが、これからはスポーツのようなノンフィクションの分野でもその面白さを盛り上げていきたい」(田中氏)

試合前のオープニングセレモニーや選手紹介ではレーザー光線と炎を使った演出で会場を盛り上げる
試合前のオープニングセレモニーや選手紹介ではレーザー光線と炎を使った演出で会場を盛り上げる

 参入を検討したスポーツは他にもあったが、バスケを選んだのは「島根スサノオマジックと波長が合ったこと。加えて、自社が持つ強みをより発揮できると考えたから」(田中氏)。室内でプレーするバスケは観客との距離が近く、同社が手掛けてきたライブイベントなどとも共通点は多いという。ライブイベントで得たノウハウを生かし、経営参画以来、試合の演出面を強化してきた。

 具体的には、アリーナの天井に、観客席のどこからでも見える4面ディスプレーを設置。試合前には、レーザー光線や炎を使った演出で会場を盛り上げる。

 「ファンの一番の目的は試合だが、楽しみはそれだけではない。チケットを買い、会場に足を運ぶ。会場ではグッズを買ったり、試合前の演出を見たり、そうした試合に入っていくまでのストーリーも重要な演出ポイントだと思っている」(田中氏)

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