江崎グリコは、糖質を調整した商品をそろえるブランド「SUNAO(スナオ)」乾麺「SUNAO もっちりパスタ」と、それに合わせたソース3種を発売し、40~50代女性を中心に好評を得ている。主食として食べられる商品を充実させることで、「糖質制限」ではなく習慣的な「適正糖質」の考えと関連商品を浸透させる狙いがある。
現購買層は40~50代の女性中心
江崎グリコが「おいしさと適正糖質を両立」するとうたい、展開するブランド「SUNAO(スナオ)」。2022年2月15日に発売した新商品は、80グラム(1食)当たりの糖質を21.1グラムに調整した「SUNAO もっちりパスタ」と、1食あたり糖質を5グラム以下に調整した3種のソース「SUNAO <ボロネーゼ>」「同<ポモドーロ>」「同<きのこ入りチーズクリーム>」。従来商品よりも主食に寄せた商品の展開だ。
新商品の追加による狙いは、これまで以上に習慣的な「適正糖質」の食生活を提唱し、関連商品を広く浸透させること。パスタおよびソースの現時点での取り扱いは「グリコダイレクトショップ」のみだが、それでも発売から4カ月の間、顧客とコミュニケーションを取りながら、好評を得てきている。現時点での購買層は40~50代女性が中心で、「感動した」「普通のパスタと変わらないぐらいおいしい」といった声が寄せられているという。
打ち出すのは「糖質のコントロール」
SUNAOブランドは、03年に発売した「カロリーコントロールアイス」をリブランディングする形でスタート。第1弾として、糖質・カロリーを調整したアイスを17年2月に発売した。従来のカロリーコントロールアイスは「1個当たり80キロカロリー」以下と明記しており、カロリーを気にする層に支持されていた。一方SUNAOは「おいしさと健康」という同社の企業理念を具現化する商品で、素材へのこだわりとともに「糖質をコントロール」していることを前面に打ち出す。
18年には通常商品に比べて糖質を50%カットしたビスケット(「日本食品標準成分表」2015年版「ソフトビスケット」との比較)を、20年には1食あたりの糖質量を28グラム以下に抑えたリゾットをラインアップに加えてきた。
糖質制限ではなく適正糖質の浸透へ
SUNAOブランドが掲げるのは、「糖質制限」ではなく「適正糖質」だ。その背景には、10年ほど前から広がり始めた「糖質(炭水化物)制限」ダイエットがあるといえる。
生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研と日清オイリオグループの共同調査(18年)によれば、糖質制限ダイエットが注目され始めたのは、12~13年ごろ。当初は糖尿病治療やダイエット目的の観点からで、ご飯やパンなどの主食を控える糖質制限食が広がり始めたが、ブームになるにつれ、極端な糖質制限によるエネルギー不足や、タンパク質、脂質の摂取量の増加などによる影響も指摘されるようになった。
一方、江崎グリコが加盟する「食・楽・健康協会」では、「緩やかな糖質制限=適正糖質摂取」を提唱。1食20~40グラム、間食10グラム(1日で合計70~130グラム)にするという指標を打ち出している。
同社マーケティング本部健康事業・マーケティング部の難波真一郎氏は、「糖質を極端に減らす生活は続きにくかったり、食の質が下がってしまったりすることもあり得る」と指摘する。そこでSUNAOブランドでは糖質を10グラム以下に抑えた間食商品だけでなく、1食あたりの糖質を40グラム以下に抑えた主食商品も展開することにした。
「適正糖質を実現するためには、間食商品だけでは限界がある。主食・食事の部分でも要望に応えられるような商品を出し、アプローチしていくべきだと考えていた」と難波氏。「もちろんSUNAOブランドのスタート時から主食商品も視野に入れてはいたが、生活者からも要望があった」(難波氏)といい、時流の変化を反映したこともうかがえる。
幅広い世代の普段の食事代わりに
とはいえ適正糖質の浸透は現時点では十分とはいえない。同社が行った、適正糖質摂取を示す「ロカボ」についての調査(※1)では、「言葉の意味・内容も知っている」「言葉だけ聞いたことがあるが、意味・内容は知らない」と回答した人は合わせて52.2%と、2人に1人は言葉を認知しているものの、「言葉の意味・内容も知っている」と回答した人は認知者全体の3割弱。また「ロカボ=適正な糖質量を意識した食事を行うこと」という正しい理解をしている人はさらに少なく、認知者の14.8%だったという。
正しい理解を得るのは簡単なことではないことからも、セミナーやイベントを実施したり、公式サイトに解説ページを設けたりするなど、啓発活動も行っている。
一方で、SUNAOブランド自体は5年で認知度を上げていると言い、アイスやビスケットについてはスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストア、EC(電子商取引)サイトなど様々なチャネルで購入可能になっている。ただ、「生活に根差すために高い目標値を設定しており、まだまだ浸透させないといけないと思っている」と難波氏は言う。
「SUNAO商品のターゲット層は糖質を気にする方々。現在、Web広告などのオンライン、b8taへの出展や糖質を気にされる方が見るような媒体を含むオフラインという、両方からのアプローチが、認知のきっかけとなり、購入につながっている。高い評価がある一方で、一部のお客様からは風味についての改善提案を頂いている。今後はお客様からのご指摘点を改良しつつ、愛される商品に育成していきたい」(難波氏)
調査会社の富士経済によれば、糖質オフ(オフ・ゼロ要素)の市場規模(主食)は、20年が238億円で前年比107.2%、21年見込みは309億円で前年比129.8%と拡大が続いているという。
拡大市場だからこそ、商品を売るだけでなく、適正糖質の考えを浸透させたいという同社では、SNSも活用しコミュニケーション面を充実させ、より若い層にアプローチしていくことも考えている。「幅広い世代が普段の食事代わりとして、適正糖質摂取を習慣化することで、消費者の健康につなげていくことができれば」(難波氏)
(画像提供/江崎グリコ)