アイリスオーヤマ(仙台市)は2022年5月24日、室内の空間と壁や机など物体の表面の菌やウイルスを抑制する「PlasmaGuard PRO アイリスエディション」を発売。同製品をもってビジネス向けエアソリューション事業に新規参入する。商業施設などの空気清浄化事業を展開し、BtoB(企業間)事業の拡大につなげる。
「PlasmaGuard PRO アイリスエディション」は米プラズマガード社の空気清浄化技術を採用したもので、独自の低温プラズマ放電技術で活性酸素や活性窒素を含む長寿命イオンを発生させて、菌やウイルスを99.9%抑制できるというもの。
機器は建物の空調ダクトに直接取り付けて、空調システムと連動させてイオンを空間に送り込む。1台につき約840立方メートルの空間まで対応可能で、オフィスや大型商業施設で効果を発揮できるとしている。1台につき1時間程度で設置でき、空調設備の入れ替え工事などは不要なため、建物や施設を長期間閉鎖することなく設置できるという。
新型コロナウイルス対策として、オフィスや大型商業施設では扉を常時開けておくなど、外気の取り込み量を増やす対策が行われている。しかしその分だけ空調設備に負荷がかかるため、電力使用量が増えるなどの問題も発生している。
アイリスオーヤマ執行役員 BtoB事業グループ メーカー本部 本所翔平本部長は、「コロナ禍(対策)で、人や生物にとって最も重要なのは空気。そして増大するエネルギー使用量への対策も必要だ。PlasmaGuard PRO アイリスエディションは、国内初のプラズマ除菌技術を採用して空気の清浄化と省エネルギーを両立させた。本機を導入することで外気の取り込み量を抑えることが可能になり、空調設備への負荷が軽減され、省エネにつながる。フィルターを使わないためごみの発生も減らせる」と語る。
採用している低温プラズマ発生技術は、活性窒素を含む長寿命のイオンを多く発生させることができるのが特長だとする。「これまでのイオンを発生させる空気清浄機は、イオンの寿命が短いため、機器の周辺しかイオンが行き渡らなかった。これに対して、長寿命のイオンを発生させて空調ダクトを通じて室内全体に行き渡らせることで、空間はもちろん、床や壁などに付着した菌やウイルスにもアプローチできる」と、本所氏は強みを述べた。
空気の“見える化”で安心感を高める
もう1つの特長は、あらゆるものがネットにつながるIoTを活かした“空気の状態の見える化”だ。製品には、空気中の微粒子濃度を測定するPMセンサーが付属する。センサーで測定したデータはクラウド上に送られ、スマートフォンやタブレット、パソコンで確認できる。微粒子濃度の増減から、目に見えないイオンがどれだけ効果を発揮しているかを確認できる。例えば、オフィスや商業施設などで設置したサイネージにデータを表示すれば、除菌効果を実感でき、利用者の安心感が高まるという。
製品価格の目安は、取り付け費用込みで約100万円。推奨する設置台数は空調設備の能力によって変わってくる。アイリスオーヤマでは、機材の一括販売だけでなく、リースやレンタルも含めた事業展開をしていく。
本所氏は導入先として、今後外国人観光客の増加が見込まれるホテルや商業施設、公共施設、病院、保育施設などを挙げた。またIoTによりLED照明や清掃ロボット、オフィス家具などと連携させ、オフィスや商業施設の空間全体の提案につなげていきたい考えだ。エアソリューション事業で、24年には100億円の売り上げを目指す。
カギになりそうなのは“省エネ”や“環境負荷”の低減だ。「エネルギー消費の削減や脱炭素への取り組みは改善の余地が大きく、空調機器メーカーの盲点になっているのではないか」と本所氏。人流が増えるポストコロナ環境下でのシェア拡大を狙う。
(写真/湯浅英夫)