メルカリは2022年5月16日、フリマアプリ「メルカリ」で取引される商品の価格や流通量の変動を指数で可視化した「メルカリ物価・数量指数」の提供を始めた。二次流通市場からの視点として、メルカリにおける個人間の商取引の動向を分析することで、消費トレンドの把握や、マーケティング研究に役立てるのが狙いだ。
メルカリが22年5月16日に発表したのが、「メルカリ物価・数量指数」だ。フリマアプリ「メルカリ」における商品の平均価格や取引量を基に、商品カテゴリーごとの価格や流通量の変動を物価指数、数量指数として月単位で算出する。物価指数はメルカリ内で取引されている商品の価格を、数量指数は商品の流通量を表す。メルカリ総合研究所と東京大学エコノミックコンサルティング(東京・文京)が共同で開発した。
指数を開発した背景には、二次流通市場の拡大がある。業界紙「リサイクル通信」の「リユース業界の市場規模推計2021」によれば、リユース市場は09年以来11年連続で拡大しており、20年には2兆4000億円を超える市場規模となっている。「メルカリ単体で見ても、GMV(流通取引総額、Gross Merchandise Value)が4半期単位で2000億を超える」と、メルカリ執行役員の吉川徳明氏は説明する。
メルカリが行った調査では、新品を購入する際にリセールバリューを考慮する人の割合が増えていることも分かっている。「今後、消費活動において、二次流通市場のプレゼンス(存在感)が大きくなっていくのは一時的でなく、不可逆的なトレンドだろう」と吉川氏は付け加える。
その一方で、一次流通市場と比べて、二次流通市場は消費の動向を示すデータや統計がほとんど整備されていないのが課題だ。「一次流通市場は家計調査、消費者物価指数など公的な統計も整備されているが、二次流通市場は中古住宅や中古車などの分野で数字が出ているくらいで、消費の全体像を示すものはなかなかない」(吉川氏)
そこで開発したのが、「メルカリ物価・数量指数」だ。共同開発した東京大学エコノミックコンサルティング取締役で、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の渡辺安虎氏は「より敏感に消費者の価値観や消費動向を確認することができるのが大きな特徴」と語る。昨今はウクライナ情勢を受けて、物価上昇が頻繁に取り沙汰されているが、一次流通市場では急激な値段の上げ下げが起こるわけではない。一方、二次流通市場は「出品者と購入者の需給を反映し、常にアップデートされる」(渡辺教授)からだ。
メルカリ物価・数量指数で消費トレンドを可視化
メルカリ物価・数量指数を利用すれば、メルカリ内取引における需給バランスを観測し、物価変動を把握することができる。例えば、取引数が多く、価格も上がっていれば、需要が増えていることが見て取れるという具合だ。
消費トレンドを可視化することにもつながるという。メルカリ物価・数量指数は、商品カテゴリーごとに算出しているものだ。メルカリの商品は、大カテゴリー(例:レディース)、中カテゴリー(例:レディース→靴)、小カテゴリー(例:レディース→靴→モカシン)といった形で分類されている。このうち「小カテゴリーについては、質・構成比などの調整が現時点では難しい」(渡辺教授)として、指数算出は中カテゴリー、大カテゴリーのみを対象とするが、それでもそうしたカテゴリーごとの変動は見えてくる。
例えば、「レディース・ルームウェア/パジャマ」カテゴリーでは、新型コロナウイルス禍による最初の緊急事態宣言発出の時期に、数量指数が急激に伸び、物価指数も高まった。一方、「レディース・スーツ/フォーマル/ドレス」は同時期に数量指数が急落し、物価指数も一時的に落ち込んだ。「これはコロナ禍で、家で過ごす時間が増えたことを端的に示している」と渡辺教授は説明する。
メルカリ物価・数量指数は22年5月16日から提供を開始し、以降、毎月19日を含む週の金曜日に公開する予定だという。消費動向の変動を可視化できることから、大学やシンクタンクによるマーケティング研究への活用や、消費動向を報道するメディアからの利用などをまずは視野に入れる。それと同時に、「二次流通から得られるデータを活用するのにオープンでありたい。メルカリ側が目的を絞るよりもそれぞれの立場に応じて(データの)生かし方を考えてもらうのが何よりも大事」と吉川氏は強調する。
月間利用者数が2000万人を超えるメルカリ。その利用方法は、フリマアプリという個人間の商取引にとどまらず、消費トレンドの理解を深めるものへと広がっていくのかもしれない。
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