用途の違う2種類のリュックを合体すると、より容量の大きなリュックに早変わり。そんな新発想のリュックが、「吉田カバン」の吉田(東京・千代田)が発売した「PORTER TWIN PACK」。リモートワークが進んで仕事とプライベートの境界が曖昧になり、用途に応じてリュックを分けることで新生活に対応する。
日本のバッグブランド「吉田カバン」の吉田の2022年春夏コレクションの中でも、一際異彩を放っているのが「PORTER TWIN PACK」だ。一見、マチが大きめのリュックだが、その名前通り、マチの中央辺りにあるファスナーをぐるりと開ければ、2つのリュックに分離するのだ。
リュックを折り畳むとコンパクトなポーチになるといった、変形タイプのバッグはこれまでの吉田カバンにもあったが、2つのリュックに完全に分離するのは初めての試み。サイズは15インチPCに対応するLサイズと、13インチPCに対応するSサイズの2種類。22年5月下旬から、全国の吉田カバン取り扱い店やオンラインストアなどで発売中だ。
例を見ない分離リュックの開発に至ったのはなぜか。吉田広報部の岡田博之氏は「新型コロナウイルス禍で、リモートワークやコアタイムを廃止したフレックス勤務を選択する企業や人が増え、働く時間や場所を自分で決められる柔軟な働き方が生まれた。仕事前後のランニングやジム通い、自転車通勤への切り替えといった新しい生活スタイルに対応するシリーズとして開発した」と明かす。
今回のリュックは、単に2つに分かれるというだけではない。1つはパソコンの収納ポケットなども備えたビジネスリュック、もう1つはカジュアルなシーンに合うデイパックと、表情が全く違うリュックにした。
「ビジネスリュックは、摩擦や引き裂きに強い高強度ポリエステル糸の生地を使い、表面をマットに仕上げてビジネスの現場向きに。デイパックは軽くて防水性に優れたナイロンリップストップ生地を採用して光沢感のある仕上げにし、カジュアルシーンでも使いやすいデザインにした」と岡田氏。
3つの用途が、1つの製品にまとまる
生地や仕上げだけでなく、ファスナーもそれぞれのリュックに合うタイプを使った。ビジネスリュックのフロントポケットのファスナーには止水ファスナーを、デイパックのファスナーにはカジュアルな見た目のものを使うなど、2つに分かれるそれぞれのリュックが、用途の違う別リュックとして、高い完成度で作られているのだ。
2つのリュックの単体の使いやすさも担保しつつ、合体すると出張などに使いやすい大容量のバックパックとして機能する。つまり、3つ分の用途が一つの製品にまとまっているのだ。Lサイズで5万1150円(税込み、以下同)という価格も、リュック1個あたりに換算すれば単純計算で約1万7000円。これは吉田カバンのデイバックとしてはかなり安いといえる。
実際に製品を借りて、大阪への取材旅行に使ってみた。出掛ける時はビジネスリュックにiPad Pro11インチやデジタル一眼カメラなどの仕事用具一式、折り畳み傘などを入れ、デイパックには2日分の着替えやアメニティなどを入れ、合体して1つのリュックとして背負った。
ホテルに着いたら2つに分け、ビジネスリュックだけ持って仕事へ。ホテルでは、基本的にデイパックに入れたものだけで過ごす。チェックアウトの際は、これらを合体させるだけなので、片付けもチェックアウトもスムーズだ。お土産はビジネスリュックに入れ、箱などを潰さずに持ち帰ることができた。長距離移動時と現地での活動時、リュックを2つ用意することなく行えるのは思った以上に快適。2泊くらいならキャリーケースよりも断然楽だと思った。
細かなところでは、2つに分けたどちらのリュックにも、横から出し入れできるポケットが用意されている点が便利。ちょっとした小物を入れておくのに役立った。パソコンなどを入れるビジネスリュックのストラップは、しっかりしたクッション材入りのパッドで、背面がムレを軽減するメッシュ素材になっているなどの配慮もあった。
一方、デイパックのストラップは合体時には収納されるが、きちんと長さ調節が可能で使いやすい仕様。さらに、2つに分けた時、いずれのリュックも合体時より少しマチが広がる構造になっているなどの点もよく考えられている。
「新しいコンセプトの製品で、どういった反応があるのかは予想できませんが、ビジネスバッグの新たな提案になれば」という岡田氏。機能性とデザイン性に長けた製品に強いのも吉田カバンなのだ。