2022年5月13日の改正道路交通法の施行前日に、電動車いすを手掛けるWHILL(ウィル、東京・品川)がPRイベントを実施。道交法改正により高齢ドライバーの運転免許証の自主返納が進むことを見込み、返納後の移動手段として同社の電動車いす型近距離モビリティーのシェア拡大を狙う。
道路交通法の改正、3つのポイント
電動車いす開発スタートアップのWHILLが、2022年5月12日にPRイベントを都内で開催した。5月13日の道路交通法の改正を視野に、同社の電動車いす型近距離モビリティーの認知とシェア拡大を狙ったもので、イベントには親子での共演も多いタレントの関根勤と麻里親子らが出席。WHILLのデモンストレーション走行に加え、高齢ドライバーの免許返納のタイミングや返納後の移動手段などについて、トークを繰り広げた。
このイベントのきっかけとなった道路交通法の改正。その大きな変更点は、増加する高齢運転者による交通事故を踏まえた、高齢運転者対策の充実・強化が図られたことだ。イベントに登壇した交通コメンテーターの西村直人氏によれば「ポイントは3つあり、1つ目が認知機能検査の方法の変更。2つ目が高齢者講習の一元化。3つ目が運転技能検査の新設」だと言う。1998年から70歳以上の運転免許取得者に対し、免許証を更新する前に「高齢者講習」を受講することが義務化された。その後、高齢運転者の増加に伴い、2017年には高齢者講習制度が改正され、75歳以上のドライバーの認知機能検査が強化されていたが、それが今回さらに強化されている。
改正で運転免許証返納者増加を見込む
1つ目の認知機能検査の検査項目は、これまでの「時間の見当識・手がかり再生・時計描画」の3項目から「手がかり再生・時間の見当識」の2項目に削減。検査結果もこれまでの「認知機能検査の低下しているおそれがない・認知機能が低下しているおそれがある・認知症のおそれあり」の3区分から2区分に変更。そして認知機能検査の検査結果に基づき、「2時間講習」「3時間講習」に分かれていた高齢者講習は、2時間の講習に一元化された。
インパクトが強いのが、3つ目の運転技能検査の新設だろう。75歳以上の一定の違反歴のある高齢運転者に対し、実車試験となる運転技能検査を行い、一定の基準に達しない場合は免許更新ができなくなった。具体的にはコースなどで普通自動車を運転し、一時停止などの課題をこなすもので、採点は運転行為の危険性に応じて、100点満点から減点方式で採点。第一種免許では70点以上、第二種免許が80点以上で合格となる。一見、点数に余裕があるように思えるが、1回の減点が10点以上となるため、正しい運転ができない場合は、間違いなく不合格となる。それだけに更新できない高齢運転者だけでなく、合格したものの自身の運転に不安を感じ、運転免許証の返納を考える人が増えることが予想される。ただ違反歴のない高齢運転者の免許更新は、従来同様に高齢者講習が義務となる。こちらにも実車による講習が含まれているが、これは検査ではなく、運転の指導を目的としているので、免許更新の判断は本人に委ねられている。
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