レノボ・ジャパンのゲーミングPCブランド「Legion(レギオン)」が2021年3月から運営している「Legion Ultimate Support」(以下、アルティメットサポート)は、ゲーミングに特化したサポートサービスだ。技術サポートやサービス期間内の引き取り修理サービス、年に1度のPCヘルスチェックといったパソコン関連のトラブル対応のみならず、ゲーミング用語の解説やゲームの攻略、配信の方法など、ゲーミングPCに関わる様々な相談に、24時間、365日対応している。

レノボ・ジャパンのゲーミングPCブランド「Legion(レギオン)」は2021年3月からゲーミングに特化したサポート「Legion Ultimate Support」を運営している
レノボ・ジャパンのゲーミングPCブランド「Legion(レギオン)」は2021年3月からゲーミングに特化したサポート「Legion Ultimate Support」を運営している

ゲームに詳しくてもPCは初心者

 アルティメットサポートがスタートしたのは北米から。北米ではコアゲーマーに対応したサポートとして19年4月から展開しているが、PCゲームの普及率が低い日本では、初心者向けのサービスと位置づけた。

 レノボ・ジャパン コンシューマ事業本部本部長の柳沼綾氏は、「一部の方々には知られていることだが、レノボ・ジャパンは社長のデビッド・ベネット自身がゲーマーということもあって、ゲーミングPCに注力しており、以前から日本でのアルティメットサポートの展開も視野に入れてきた」と話す。

 日本のゲーム市場では、PlayStationシリーズやNintendo Switchなどのコンシューマー機が主流で、PCでゲームをする人はまだ少ないが、同社では、日本でもPCでゲームをする人は今後増えていくとみている。根拠となるのが、ここ数年のゲーム需要の高まりや、機器の垣根を越えて対戦できるクロスプラットフォームタイトルの増加だ。「その中にはPCゲームも入っており、PCゲームには追い風が吹いている」(柳沼氏)

 一方で、課題になるのが、ユーザーのPCスキル。「ゲームには見識のあるユーザーでも、ことPCになると初心者が多いのが現状。実際、(レギオンの)ゲーミングPCを購入した人の約3割が、PCを購入するのが初めての人だった。初心者への手厚いサポートが必要だと考え、アルティメットサポートを初心者向けに切り替えた」(柳沼氏)

アルティメットサポートは、レノボ・ジャパンのゲーミングPC「Legion」のユーザーに向けたサービスだ
アルティメットサポートは、レノボ・ジャパンのゲーミングPC「Legion」のユーザーに向けたサービスだ

 各種タイトルのハイエンドプレーヤーの中には、コンシューマー機よりもゲーミングPCでプレーする方がいい成績を残せるという“定説”もあり、PCへ移行するプレーヤーは増えている。その中には、PCに初めて触れるユーザーも多く、コンシューマー機とは異なる操作や設定に苦労するケースも少なくない。

 レノボ・ジャパンの狙いは当たり、アルティメットサポートを受けているユーザーのほとんどがPC初心者のゲームプレーヤーだ。質問内容もPCの設定など、初歩的なものがほとんどだという。

 また、アルティメットサポートは、Legionブランドの浸透や既存サービスとの相乗効果も生み出した。レノボ・ジャパンによると、Legionの購入者によるアルティメットサポートの利用率は、同社の他ブランドのPCの有償サポートの5倍近いという。さらに、同社が提供するゲーミングPCや周辺機器のサブスクリプションサービス「スグゲー」のユーザーは、LegionのPC購入者に比べ、アルティメットサポートの利用率が高い。

ゲームの設定から動画配信まで対応

 PCのサポートでありながら、ハード面よりもソフト面での質問が多いのがアルティメットサポートの特徴だ。「ゲームが起動しない」「ゲーム内の設定を子供が変更し、戻せなくなった」などなど。同じゲームタイトルをコンシューマーゲーム機からPCに移行した場合のアカウントの利用についての質問も多い。

 中には、子供がプロゲーマーに憧れていてゲーミングPCを購入したものの、父親も設定が分からなかったというケースもあったという。子供は取扱説明書の漢字が読めなかったため、ゲームのダウンロードやインストールの仕方、アカウントの作り方などを一つ一つ子供にも分かるように説明。アカウントを作るために必要なフリーのメールアドレスの登録手順も指南した。ユーザーの多くが初心者ということで、「1件のサポートにかなり時間をかけるときもある」とアルティメットサポートのエージェント(担当者)は話す。

アルティメットサポートでは、パソコンに関することだけでなく、ゲームの攻略や動画配信に関する質問にも答える
アルティメットサポートでは、パソコンに関することだけでなく、ゲームの攻略や動画配信に関する質問にも答える

 なお、この時にユーザーがプレーしたかったタイトルは『Fortnite』とのこと。『Fortnite』は基本無料だが、アイテム課金があるタイトル。子供が遊ぶゲームで課金は親にとって重要な要素だが、今のところ課金についての質問はない。

 ゲーム以外の質問では、ゲームの動画配信をしたい人からそのやり方について聞かれるケースがあるそうだ。ストリーミング配信のためのフリーソフト「OBS Studio」の使い方といった初歩的なことから、コメントを配信画面上に表示する追加機能の使い方などの応用的なことまで質問は幅広い。

 質問数は、月間で100件程度、多い日で1日20件程度。これらに答えるエージェントは、アルティメットサポート以外に、通常のPCサポートのオペレーターも務めているが、今のところは人手が足りなくなるようなこともなく、うまく運用できているという。

ブランドスコア向上に貢献

 ユーザーから寄せられる幅広い質問に答えるため、アルティメットサポートのセンターでは検証用のPCを用意している。それらには人気タイトルやよく使われる配信ソフトがインストールされており、質問を受けると実際に操作しながら説明する。ゲームタイトルやソフトは数が多いため、1人がすべてに対応することは難しいが、エージェントごとに得意ジャンルを持ち、エージェント同士で情報を共有することで対応している。

サポートセンターには検証用のPCなどを用意
サポートセンターには検証用のPCなどを用意

 現時点では、当初の想定通り中上級者からの質問はなく、質問者は初心者が主だ。ただ、サービス開始から1年が経過し、今後は経験を積んだユーザーからより高度な質問が来ることも想定される。それにどこまで対応できるかで、ユーザーがアルティメットサポートの利用を継続するかが左右されるだろう。

 また、アルティメットサポートは、加入1年目は無償だが、2年目からは有償となる。便利なサービスではあるものの、有償になっても利用を続けるかは未知数だ。レノボ・ジャパンとしても、アルティメットサポートは初心者向けと考えており、スキルを付けたユーザーが有償になってまで継続するとは考えていない。

 「最初の一歩として、ゲーミングPCに慣れ親しんでもらうこと、ハードルを下げることがアルティメットサポートの目的。アルティメットサポートとは別に、『レギナビ』というコミュニティーサイトを展開しており、そこには『レギオン道場』という初心者向けのコーナーがある。アルティメットサポートを利用してPCに慣れてきたら、そちらに移行してもらえればと考えている」と柳沼氏は説明する。

 2年目以降に有償となるアルティメットサポートの利用を促すのではなく、無償のコミュニティーサイトに移行してサポートを受けられるようにしているのは、アルティメットサポートが収益を上げるためではなく、Legionブランドを基としたレノボ・ジャパンのゲーミングPCのブランドイメージやロイヤルティーを向上させることを重視しているからだろう。

 実際、レノボがグローバルで行っている調査でも「ブランドスコアがこの1年で大きく向上した」と柳沼氏。アンケート調査でもサポートの良さを挙げている人は多い。今後、アルティメットサポートに対する認知やそれによるブランドイメージの向上が進めば、PC初心者も多い日本のゲーミング市場において、ゲーミングPCを選ぶ理由に大きな影響を及ぼすことになるのではないだろうか。

(写真提供/レノボ・ジャパン)

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