亀田製菓がプラントベースフード(植物由来食品)、米粉パン、お米由来の乳酸菌の3分野で、コメや植物性素材を扱う食品事業を本格的に始動した。新型コロナウイルス感染症拡大の影響や食物アレルギー患者の増加などを背景に、需要が高まる市場で存在感を示していく。

亀田製菓のプラントベースフードの新ブランド「JOY GREEN」から発売された業務用の「植物生まれのベースミート」。JOY GREENの商品は動物性素材を一切使わないことを重視。肉をまとめるためのつなぎや味付けにも使わない意向だ
亀田製菓のプラントベースフードの新ブランド「JOY GREEN」から発売された業務用の「植物生まれのベースミート」。JOY GREENの商品は動物性素材を一切使わないことを重視。肉をまとめるためのつなぎや味付けにも使わない意向だ

米粉パンなど3ブランドを展開

 亀田製菓が従来の製菓業に加え、食品事業を本格的に始動した。2022年3月7日には健康・環境に配慮したプラントベースフードの新ブランド「JOY GREEN」、国産米粉を使用したアレルギー特定原材料等28品目不使用の米粉パンの新ブランド「Happy Bakery」、世界で唯一のコメ由来の乳酸菌の新ブランド「RiceBIO」を発表。グローバルに展開する計画もあるという。

 同社は19年2月にアレルギー対応食品やプラントベースフードなどの製造・加工・販売を行うマイセン(福井県鯖江市)を、21年7月に青果物卸や米粉パンの製造販売を手掛けるタイナイ(新潟県胎内市)の米粉パン事業を買収・子会社化。さらに21年7月にはフードテックベンチャー企業のグリーンカルチャー(東京・葛飾)と資本提携するなど、多方面から食品事業進出に向けた準備を重ねてきた。亀田製菓食品事業部長の鈴木智子氏によれば、「(18年に策定した)中期経営計画において、『グローバル・フード・カンパニー』として、30年度には『あられ、おせんべいの製菓業』から『Better For You の食品業』へと進化することを掲げている。(買収・子会社化したのは)こうした考え方に合致する企業」だという。

▼関連記事 亀田製菓とオイシックスが植物肉企業と提携 フードテックで共闘

 今回のブランド発表により、1950年代後半から続く同社の研究に基づき、主にコメや植物性素材を商品に落とし込み、展開することとなる。

米菓メーカーとして何ができるか

 商品化では米菓事業で培ってきた「多彩な食感と味つけ技術」を活用している。鈴木氏は「食品事業を始めるに当たり、米菓メーカーとして何ができるかに立ち返った」と話す。

 3ブランド展開にしたのは「分けた、というよりは亀田製菓が手掛けることに意義がありそうな領域が、この3つに集約できたのではないかと思っている」(鈴木氏)。その1つであるコメ由来の乳酸菌は長年チャレンジしてきた領域で、91年に発見して以来、BtoBで展開しており、すでに実績がある。そんな中、「今回は世界初のお米由来の乳酸菌という点を大々的に打ち出していくことにした」(鈴木氏)と言う。

 米粉パンについてはコメにこだわる同社のイメージに最も近いともいえ、「米粉100%のパンという点も、アレルギー特定原材料等28品目に対応する点も、(消費者に)ストレートに伝わりやすいのではないか」(鈴木氏)。

 難しいのが、プラントベースフードだ。「なぜ亀田製菓がやるのかが問われるとは思う。しかし米菓を作る製法と、プラントベースフードを作る製法は似ており、これまでの経験が生かしやすいと考えた。現状では価格の関係で植物性たんぱく質は大豆が中心だが、ゆくゆくはコメを原材料にした植物性代替肉を作ることも考えている」(鈴木氏)。すでに同社ではコメからたんぱく質を取り出す技術は確立しているが、そこから植物性代替肉を作るとなると原材料費が高すぎるため、今後の課題としている。

肉らしい弾力性のある食感に自信

 22年4月1日にはJOY GREENブランドから業務用(外食・総菜向け商品)のプラントベースフード「植物生まれのベースミート」を新発売。「マイセンファインフードで販売してきた商品は、使用時に水で戻して使うドライタイプ。一方、ベースミートは亀田製菓の米菓の製造技術を生かして開発したウェットタイプ(冷凍)。解凍するだけで使えるのが特徴で、強みは米菓で培ってきた技術を応用した肉らしい弾力性のある食感だ」(鈴木氏)。今後も積極的に開発を続けるといい、今年度中にさらに商品を追加したい考えだ。また「BtoCも考えてはいる」(鈴木氏)と言う。

 販路も確保している。業務用は外食が中心になる見込みだが、プラントベースフードを扱う環境意識が高い外食チェーンや、得意先であるスーパーマーケットなどは、導入の意向が高いという。「亀田製菓の企業イメージをヒアリングした際、安心・安全、品質が確かという認識が得られていることが分かった。一方で、安くておいしいというイメージもあるため、その点をクリアしていくのが課題だ」(鈴木氏)

22年3月14日からは金沢カレーの元祖というチャンピオンカレー(石川県野々市市)の直営店・フランチャイズ店計19店舗にて、マイセンファインフードが21年10月に発売した業務用商品「プラントベースパティ」を使用した、「低糖質チャンカレ~大豆ミートカツのせ~」を期間限定で発売した(現在は販売終了)
22年3月14日からは金沢カレーの元祖というチャンピオンカレー(石川県野々市市)の直営店・フランチャイズ店計19店舗にて、マイセンファインフードが21年10月に発売した業務用商品「プラントベースパティ」を使用した、「低糖質チャンカレ~大豆ミートカツのせ~」を期間限定で発売した(現在は販売終了)

 一般販売用についても健康志向・低糖質商品をそろえるスーパーマーケットや、プラントベースフードを扱う販売店などから声がかかっており、同社としても積極的にアプローチしていくという。

一般用として扱ってきたマイセンファインフードの「大豆と玄米のべジミンチ」「大豆と玄米のべジフィレ」も4月1日にリニューアル発売。さらに新たに「大豆と玄米のべジスライス」を発売している。各346円(税込み)
一般用として扱ってきたマイセンファインフードの「大豆と玄米のべジミンチ」「大豆と玄米のべジフィレ」も4月1日にリニューアル発売。さらに新たに「大豆と玄米のべジスライス」を発売している。各346円(税込み)

米粉パンのラインをタイナイに一本化

 米粉パンのHappy Bakeryブランドでは、22年3月7日にタイナイから新ラインアップとして「おこめ丸パン」など9商品を発売。タイナイではアレルギー特定原材料等28品目不使用の米粉製品を製造販売してきており、食物アレルギー対応、グルテンフリー対応製品としては、すでに一定の支持を得ている。

 実はこれまでマイセンファインフードでも米粉パンを扱ってきたが、今後は「アレルギー特定原材料等28品目不使用のタイナイの工場に一本化していく」(鈴木氏)。これは、マイセンファインフードではプラントベースフードを製造する関係で大豆を使うことから、コンタミネーション(混入)が起きることを避ける意味が大きい。

常温保存かつ食感にこだわり

 Happy Bakeryの米粉のパンは常温で保存できる点が特徴だ。米粉パンは他社も手掛けているが、現状は冷凍保存の商品が多数を占める。店舗や家庭で常温保存するためには水分値を低くする必要があり、それがぼそぼそとした食感になる傾向が強い。タイナイは以前から常温保存の「おこめ食パン」などを出してきているが、「ユーザーアンケートでも、よりしっとり感やもっちり感を高めてほしいという要望が高かった。そこでベーシックな米粉パンとなる『おこめ丸パン』は、特に食感にこだわった」(鈴木氏)。

 一方で課題は、一度温める必要があること。「常温保存で硬くなった米粉パンも、温めればふんわりもちもちの食感になるが、加熱しない状態のままではおいしいとはいえないだろう。防災の観点からも、加熱せずに食べられることが重要になる。今後、常温でそのままおいしく食べられる(保存の利く)米粉パンを出せれば」と鈴木氏は目標を語った。

 なおHappy BakeryはBtoCがメインだが、より広く周知していくため、体験の場として飲食店などでも提供されるようにしていきたいという。

 またコメ由来の乳酸菌の新ブランドRiceBIOについては、これまでBtoBに特化してきたが、今年度中にBtoCの新商品も出す計画だ。「BtoCではすでに乳幼児向けの米菓『ハイハイン』や『白い風船』に採用されている。今後はサプリメントなども含め、どのような商品として出せるか、検討し、商品化していく」(鈴木氏)と言う。

3月7日には9商品がリニューアル発売された。写真左から「おこめ丸パン(3個入り)」(345円)、「玄米丸パン(3個入り)」(355円)、「おこめ食パン」(475円)
3月7日には9商品がリニューアル発売された。写真左から「おこめ丸パン(3個入り)」(345円)、「玄米丸パン(3個入り)」(355円)、「おこめ食パン」(475円)

拡大傾向の各市場で認知度向上目指す

 展開するブランドをこの3つに定めたのは、それぞれの市場で成長が見込まれることも大きいだろう。

 まずプラントベースフード、その中でも植物肉市場は拡大傾向にあると見られている。世界の市場調査リポートの販売などを行うグローバルインフォメーション(川崎市)が扱う、植物肉市場に関する市場調査リポート(※1)によれば、世界のプラントベースミート市場は、20年に124億米ドル(約1兆5890億円)規模に達し、21年から27年までは約17.3%の年平均成長率(CAGR)で成長すると予想されている。日本市場の予測は消費量に関して日本植物蛋白食品協会の持つ「粒状大豆蛋白の生産、出荷・自社使用量の統計数値」(粒状大豆たんぱくは大豆ミートの原材料に使用)が活用されているが、これによれば10年から21年までの間で約53%成長したという(※2)

 米粉パンについては、食物アレルギーの患者数が年々増加傾向にあることから、需要が高まっている。日本アレルギー学会によれば、日本の食物アレルギー患者数は乳幼児期では自己申告で約80万人、医師の診断で約30万~50万人、学齢期では自己申告で約60万人、医師の診断で約35万人と推計されている(※3)。成人に関しては国全体の正確な疫学調査が存在しないため推計が出ていないが、増加傾向にあるという。

 コメ由来の乳酸菌がターゲットとする健康食品市場も拡大を続けている。調査会社の矢野経済研究所の推計によれば、健康食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで、20年度が8659億9000万円(前年度比0.4%増)。21年度は8880億3000万円(同2.5%増)を見込む(※4)。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、健康・免疫の低下、運動不足、ストレスの増加などが問題視される中、機能性表示食品を中心とした需要が高まっていると考えられる。

 亀田製菓の田中通泰会長は21年7月のグリーンカルチャーとの資本提携に際し、「日本の人口減少、健康志向の高まりから、米菓市場は7~8年後に現状から10%減少することもあり得る」とし、食品事業への意欲を示していた。今後は各ブランドの認知度向上も課題となる。鈴木氏は「SNSなども活用し、アプローチしていく」とした。

※1:グローバルインフォメーションが2022年2月28日に販売を開始した「プラントベースミートの世界市場:現状分析・予測(2021-2027年)」(UnivDatos Market Insights Pvt Ltd)
※2:植物性たんぱく(大豆たんぱく、小麦たんぱく)の製造・販売に関係する事業者団体である日本植物蛋白食品協会調べによる2010(平成22)年上半期~2021年下半期「植物性たん白の生産出荷統計」(大豆たんぱく質の国内生産とは、海外から原材料となる大豆を輸入し、国内生産したものを含む)、日本能率協会による「令和元年度 新たな種類のJAS規格調査委託事業 調査報告書」
※3:日本アレルギー学会の「アレルギー」2018(平成30)年67号(「日本における食物アレルギー患者数の推計:疫学調査の現状と課題」)
※4:矢野経済研究所「健康食品市場に関する調査を実施(2022年)」

(画像提供/亀田製菓)

7
この記事をいいね!する