販売個数が約24万個に到達した、エースのビジネスリュックシリーズ「ガジェタブル」。2022年5月下旬に発売する新作は、夏場におけるストラップや背面部分の蒸れを軽減する新機能を搭載する。定番モデルを、新しい時代に対応するために進化させた。
日本のバッグメーカーであるエース(東京・渋谷)の「ガジェタブル」は、機能性を重視したビジネスリュックのシリーズとして2018年から全国販売を開始。現在まで限定品やコラボも含め19シリーズを展開し、販売個数は24万個(22年3月時点)に届く勢いだ。
「エース社内では、1年に3万個売れればヒットとしているので、ガジェタブルは大ヒット商品といえる」と、同社マーケティング部の森川泉氏。電車内でリュックが邪魔になるという問題にいち早く対応したスリムでスクエアなデザインと、豊富なポケットを絶妙に配置した収納力で、エースで最も売れているビジネスバッグだ。
22年5月下旬に全国の直営店やオンラインストアなどで発売予定の新作「ガジェタブルEF」は、従来の特長を引き継ぎつつ、今の日本のビジネスパーソンに寄り添うモデルとして開発した。「夏場に合わせて、高温多湿に対応する機能『ベンチレーションハーネス』と背面の風通しを良くした構造を採用。ベンチレーションハーネスは、今回のモデルで初めて搭載した」(森川氏)
ベンチレーションハーネスは、肩から胸にかけてのストラップ(背負うためのひも)が当たる部分が暑いという声を受けた機能。「ストラップ全体をメッシュ生地にすると、耐久性やクッション性が損なわれるため、中央部分だけをメッシュにして通気性と耐久性を両立させた」と森川氏は話す。
リュックの背中部分にシークレットポケットやパッドで凹凸を作って風を通す仕組みと合わせ、実際に背負っていても、蒸れる感じがなく快適な背負い心地だ。しかも、ストラップが頼りない感じもない。
さらに今回、ナイロン素材の製造過程で出る廃材を収集・仕分け・クリーニングしてチップにしたものから糸を作り、切り裂きに強いリップストップ織りで織った「マイパン リジェン」という生地を採用した。100%リサイクルのナイロンを使って環境に配慮しつつ、裂けやほつれに強い織り方で耐久性も保持することで、毎日使うビジネスリュックとしての完成度を高めている。
つりポケットなどをうまく使ってデッドスペースを減らすことで実現するコンパクトながらたっぷりの収納力や、抗菌・抗ウイルス生地を使ったバーテクトポケットなど、好評だった機能ももちろん受け継いでいる。
マチ幅が変わる新機能も搭載
ガジェタブルEFは、大・中・小の3サイズ展開。一番大きなモデル(15.6インチPC対応)には、ガジェタブル初の「エキスパンド」機能を搭載する。ファスナーを開くことで、マチ幅が通常時の12センチから16センチまで広がる機能。もともとガジェタブルはスリムなビジネスリュックとして開発され、マチ幅は10センチ以下と決められていた。
「そのコンパクトさが支持を集める一方で、もう少し大きかったらとか、出張に使いたいといったユーザーの声もあった。そこで1モデルだけマチ幅を12センチと大きくして、エキスパンド機能も搭載した」という森川氏。その言葉通り、3泊程度の出張にも十分堪える容量になっている。
一番小さなサイズでも15インチPCに対応。女性が背負っても十分コンパクトに見え、好評だという。ビジネスリュックの定番モデルが、新しい時代に対応するために進化したという感じだ。
一番大きなモデルを使ってみたが、大容量の割に軽く感じるのは、ストラップのクッションがきちんとしているのと、豊富なポケットで荷物が1カ所にたまらない構造のおかげだろう。「ガジェタブルシリーズの最初のデザイナーは前職が文具メーカーで、子供向けの筆箱を作っていた。それで、決められたスペースの中にさまざまなギミックを仕込むのが得意だった」と森川氏。
前面の上段と中段に浅めのポケットが2つ、その下に横から手を差し込めるポケットがあって、下部に荷物がたまりやすいリュックのデッドスペースをうまく使えるようになっている。このようなスペースに無駄のない構造や、横から前面ポケットに手を差し込むと、その奥にファスナーポケットがあったり、ボトルホルダーやPC収納部が縦横の2方向から取り出せるようになっていたりするギミックも、子供用筆箱の発想からきているとすれば納得だ。